「介護予防サービス」とは?対象となる方・種類・サービス内容などを分かりやすく解説

高齢になると生活機能が低下しますが、「もう年だから...」とあきらめてしまうと、さらに体力や気力が衰えていきます。そして介護が必要な状態になるリスクが高まり、QOL(生活の質)も低下してしまいます。
いつまでも自分らしい生活を続けるためには、お元気なうちから積極的に介護予防に取り組むことが大切です。今回は、心身機能の改善などを通じてQOL(生活の質)の向上を目指す「介護予防サービス」について詳しく解説します。

1 介護予防とは

介護予防とは

「介護予防」とは、できるかぎり介護が必要な状態にならないようにすることまた介護が必要な状態であっても悪化の防止を図り、軽減を目指すことです。
心身機能の維持や改善だけでなく、ご高齢者が暮らしやすい環境をつくり、社会参加を促して、自分らしい生活を送れるようにすることも目的としています。

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介護予防のための生活機能チェック

65歳以上で生活機能の低下がないか不安な方は、基本チェックリスト(25項目の質問票)でご自身の状態を確認してみましょう。
公益財団法人長寿科学振興財団(健康長寿ネット)ホームページでチェックすることもできます。
「基本チェックリスト」で生活機能の低下がみられたら、地域包括支援センターに相談してみましょう。


基本チェックリスト 厚生労働省「表4 基本チェックリスト」

出典:厚生労働省「表4 基本チェックリスト」

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2 介護予防サービスとは

介護が必要になったときに介護保険の「介護サービス」を利用できることは知っていても、要介護状態の発生や悪化を防ぐための「介護予防サービス」があることをご存じの方は少ないかもしれません。

介護保険で利用できるサービスには、要介護1~5の方が利用できる「介護サービス」のほかに、要支援1・2の方などが利用できる「介護予防サービス」があります。
「介護予防サービス」は、生活機能の維持・改善やQOL(生活の質)の向上などを目指し、ご高齢者が住み慣れた地域で自分らしい生活を続けられるよう支援するサービスです。

介護予防サービスの対象者

・「要支援1」または「要支援2」の認定を受けた方
・総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の対象となる方


介護予防の取り組み

・運動機能の向上

運動器の機能向上を通じて生活機能の改善を図るための支援です。
理学療法士等を中心に看護職員や介護職員等が協働し、有酸素運動、ストレッチ、簡単な器具を用いた運動などを行います。

・栄養状態の改善

食事の内容などを見直し、低栄養を予防・改善するための支援です。
管理栄養士が看護職員や介護職員等と連携して栄養状態を改善するための個別サービス計画を作成し、個別的な栄養相談や集団的な栄養教育などを行います。

・口腔機能の向上

お口の機能を向上し、おいしく・楽しく・安全な食生活を営めるよう支援します。
歯科衛生士等が看護職員や介護職員と協働し、摂食(食べること)・嚥下(飲み込むこと)の機能訓練、口腔清掃の自立支援などを行います。

・閉じこもり予防

閉じこもり(外出頻度が少なく、生活の活動空間がほぼ家の中のみへと狭小化する状態)を防ぎ、より活動的な生活になるよう支援します。

・認知症の予防

認知機能の低下を予防するために、運動や知的活動を取り入れた生活を継続できるよう支援します。

・「うつ」の予防

ご高齢者のうつ予防、早期発見・早期治療、地域の環境づくりなどによって心の健康の向上を図ります。

介護予防サービス利用までの流れ

①申請
介護保険サービスの利用を希望する場合は、要介護(要支援)認定の申請を行います。

②要介護認定
調査員による訪問調査一次判定(コンピュータ判定)、二次判定(介護認定審査会による審査)が行われ、認定結果が通知されます。

③介護予防ケアプラン(介護予防サービス計画)の作成
「要支援1」または「要支援2」と認定された場合は、「介護予防サービス」を利用することができます。
「介護予防ケアプラン(介護予防サービス計画)」を作成し、サービス事業所と契約します。

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総合事業の介護予防サービス

すべての市区町村で実施されている総合事業には、「介護予防・生活支援サービス事業」「一般介護予防事業」とがあります。

介護予防・生活支援サービス事業は、「生活機能の低下がみられ要支援状態となるおそれがある」と認定された方と、介護保険の要介護認定で「要支援1・2」と認定された方が利用できます。

一般介護予防事業は、65歳以上のすべての方が利用できます。

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3 介護予防サービスの種類

介護予防サービスにはどのような種類があるのでしょうか。
「要支援1」または「要支援2」と認定された方が利用できる「介護予防サービス」は次の16種類です。
(※ 介護予防認知症対応型共同生活介護は「要支援1」の方は利用できません。)

居宅で受けられる介護予防サービス
訪問型サービス(ホームヘルプ)
介護予防訪問入浴介護
介護予防訪問看護
介護予防訪問リハビリテーション
介護予防居宅療養管理指導

施設などで受けられる介護予防サービス
通所型サービス(デイサービス)
介護予防通所リハビリテーション(デイケア)
介護予防短期入所生活介護(福祉施設のショートステイ)
介護予防短期入所療養介護(医療施設のショートステイ)
介護予防特定施設入所者生活介護

地域密着型の介護予防サービス
介護予防小規模多機能型居宅介護
介護予防認知症対応型通所介護
介護予防認知症対応型共同生活介護(※要支援2の方のみ)

その他の介護予防サービス
介護予防福祉用具貸与
特定介護予防福祉用具販売
介護予防住宅改修費の支給

このほかに、「生活機能の低下がみられ要支援状態となるおそれがある」と認定された方も利用できる総合事業の「介護予防・生活支援サービス事業」や、65歳以上のすべての方が利用できる総合事業の「一般介護予防事業」があります。

4 居宅で受けられる介護予防サービス

ここでは、在宅で利用できる5種類の介護予防サービスの内容をお伝えします。

居宅で受けられる介護予防サービス

訪問型サービス(ホームヘルプ)

訪問型サービスは、総合事業の「介護予防・生活支援サービス事業」のひとつです。
さまざまなサービス提供者(ホームヘルパー、ボランティア、保健・医療の専門職など)が居宅を訪問し、ご高齢者が自立した生活を送ることができるよう、生活援助や相談・指導、移動支援などを行います。
「要支援1・2」と認定された方のほか、総合事業の対象者と認定された方も「訪問型サービス」の利用が可能です。
※ 総合事業は市区町村が運営しているため、基準や費用、サービス内容は市区町村によって異なります。

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介護予防訪問入浴介護

看護職員と介護職員が浴槽を持って居宅を訪問し、入浴の介護を行うサービスです。
「要支援1・2」の方が利用できますが、居宅に浴室がない場合や、感染症等の理由からその他の施設での入浴が困難な場合などに限ります。

主なサービス内容
・全身浴、部分浴、清拭(せいしき)
・体温、血圧、脈拍などの測定
・更衣の介護

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介護予防訪問看護

医師の指示に基づいて看護師等が居宅を訪問し、介護予防を目的とした療養上の世話や診療の補助を行うサービスです。
「要支援1・2」と認定された方が利用できます。

主なサービス内容
・病状や障がいの観察と判断、健康管理
・食事、排せつなどのケア
・医療的なケア
・薬の飲み方と管理
・日常生活動作の訓練やリハビリテーション
・療養生活、看護方法、介護方法に関する相談や助言

介護予防訪問リハビリテーション

理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などが居宅を訪問し、心身機能の維持・回復や日常生活の自立を目指してリハビリテーションを行うサービスです。
「要支援1・2」と認定された方が利用できます。

主なサービス内容
・食事、入浴、トイレ動作、更衣など、BADL(基本的日常生活動作)の訓練
・家事や外出など、IADL(手段的日常生活動作)の訓練
・福祉用具や自助具の提案
・住宅改修等に関する助言
・ご家族へ支援(介助方法の指導など)

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介護予防居宅療養管理指導

医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士等が居宅を訪問し、介護予防を目的とした療養上の管理や指導、助言などを行うサービスです。
「要支援1・2」と認定された方が利用できます。

主なサービス内容
・療養上の管理
・介護方法などの指導や助言
・ケアマネジャー等に対する情報提供
・薬剤の服薬指導
・摂食(せっしょく)や嚥下(えんげ)等に配慮した「栄養ケア計画」の作成
・食事相談、食事メニューや調理法の指導
・口腔内の清掃、入れ歯のお手入れ
・摂食・嚥下機能に関する実地指導

5 施設などで受けられる介護予防サービス

ここからは、福祉施設や医療施設などで受けられる介護予防サービスについて詳しくお伝えします。

通所型サービス(デイサービス)

通所型サービスは、総合事業の「介護予防・生活支援サービス事業」のひとつです。
デイサービスセンター等に日帰りで通い、生活機能向上のための機能訓練レクリエーション通いの場などに参加できます。
「要支援1・2」と認定された方のほか、総合事業の対象者と認定された方も「通所型サービス」の利用が可能です。
※ 総合事業は市区町村が運営しているため、基準や費用、サービス内容は市区町村によって異なります。

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介護予防通所リハビリテーション(デイケア)

介護老人保健施設(老健)、介護医療院、病院または診療所に日帰りで通い、日常生活上の支援や生活行為向上のための支援、リハビリテーションなどを受けることができます。また、ご本人の目標に合わせた「選択的サービス」も提供されます。
「要支援1・2」と認定された方が対象です。

主なサービス内容
・日常生活動作の訓練
・理学療法、作業療法、その他の必要なリハビリテーション
・選択的サービス(運動器の機能向上・栄養改善・口腔機能の向上)

介護予防短期入所生活介護(福祉施設のショートステイ)

特別養護老人ホーム等の福祉施設に短期間だけ滞在し、介護予防を目的とした日常生活上の支援や機能訓練などを受けることができます。
ご本人の心身機能の維持・改善、QOL(生活の質)向上のほか、ご家族の負担軽減を目的としています。ご家族の病気や急用で介護できなくなった時だけでなく、旅行、休息などのために利用することもできます。
「要支援1・2」と認定された方が対象です。

主なサービス内容
・食事、入浴、排せつなどの日常生活上の支援
・機能訓練

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介護予防短期入所療養介護(医療施設のショートステイ)

介護老人保健施設(老健)などの医療施設に短期間だけ滞在し、介護予防を目的とした医療的ケア、日常生活上の支援、機能訓練などを受けることができます。
ご本人の療養生活の質の向上のほか、ご家族の身体的・精神的負担の軽減も目的としています。
医療的ケアが必要な「要支援1・2」の方が対象です。

主なサービス内容
・医療や看護
・理学療法士等による機能訓練
・日常生活上の支援

介護予防特定施設入所者生活介護

介護保険の指定を受けた有料老人ホーム等に入居している方に、介護予防を目的とした日常生活上の支援や機能訓練などを提供するサービスです。
「要支援1・2」と認定された方が利用できます。

主なサービス内容
・食事、入浴、排せつなどの介助
・日常生活上の支援
・機能訓練

6 地域密着型の介護予防サービス

地域密着型サービスは、介護が必要になっても住み慣れたご自宅や地域で生活を続けられるよう支援するサービスです。「要支援1・2」の方が利用できる「地域密着型介護予防サービス」と、「要介護1〜5」の方が利用できる「地域密着型介護サービス」があります。
地域密着型の介護予防サービスは、「介護予防小規模多機能型居宅介護」「介護予防認知症対応型通所介護」「介護予防認知症対応型共同生活介護」の3つです。 利用できるのは原則として事業者が所在する市区町村に居住する方のみで、サービスの種類や内容がお住まいの市区町村によって異なるという特徴があります。

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介護予防小規模多機能型居宅介護

ご本人の希望などに応じ、施設への「通い(通所)」、ご自宅への「訪問」、短期間の「泊まり(宿泊)」を組み合わせて提供するサービスです。
「要支援1・2」と認定された方が利用できます。

主なサービス内容
・食事、入浴、排せつなどの介護
・調理、洗濯、掃除などの家事
・生活等に関する相談や助言
・機能訓練

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介護予防認知症対応型通所介護

老人デイサービスセンターなどで、認知症の方を対象にした専門的なケアを日帰りで受けることができます。
認知症の症状がある「要支援1・2」の方が対象です。
(※ 認知症の原因となる疾患が急性の状態にある場合は対象となりません。)

主なサービス内容
・食事、入浴、排せつなどの介護
・血圧測定などの健康チェック
・機能訓練
・生活等に関する相談や助言

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介護予防認知症対応型共同生活介護

介護スタッフのサポートを受けながら共同生活を送る認知症の方を支援するサービスです。
少人数(5人〜9人)の家庭的な雰囲気のなかで症状の進行を遅らせ、できるかぎり自立した生活を続けることを目的としています。

認知症の症状がある「要支援2」の方が利用できます。 (※ 「要支援1」の方は利用できません。 認知症の原因となる疾患が急性の状態にある場合は対象となりません。)

主なサービス内容
・食事、入浴、排せつなどの介護
・機能訓練

7 その他の介護予防サービス

その他の介護予防サービス

介護予防福祉用具貸与

福祉用具を利用することで、ご本人の日常生活における自立支援や介護する方の身体的な負担軽減を図るためのサービスです。福祉用具のうち介護予防に役立つものが貸与(レンタル)の対象となります。
「要支援1・2」と認定された方が利用できます。

レンタルできるもの

・手すり(工事を伴わないもの)
・スロープ(工事を伴わないもの)
・歩行器
・歩行補助杖
・自動排泄処理装置(尿のみをを自動的に吸引するもの)

※ 上記以外の福祉用具(車いすや特殊寝台など)は原則として保険給付の対象外となりますが、一定条件に該当する方は例外的に利用が認められます。

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特定介護予防福祉用具販売

指定を受けた事業者が販売する福祉用具を利用することで、ご本人の日常生活における自立支援や介護する方の負担軽減を図るためのサービスです。入浴や排せつに用いる貸与になじまない福祉用具の購入費が10万円(同一年度)を上限に支給されます。
(10万円を超える福祉用具を購入した場合、10万円を超えた分は全額自己負担になります。)
「要支援1・2」と認定された方が利用できます。

対象となる福祉用具

・腰掛便座
・自動排泄処理装置の交換可能部品
・入浴補助用具
・簡易浴槽
・移動用リフトのつり具の部分

※ 都道府県等の指定を受けた特定福祉用具販売事業者から購入したもののみが給付対象となりますのでご注意ください。

介護予防住宅改修費の支給

在宅のご高齢者が住み慣れたご自宅で暮らし続けられるよう、住宅の改修を行うサービスです。
支給対象となる住宅改修を行った場合、20万円を上限に改修費用が支給されます。
(※ 改修工事前に市区町村に申請し、必要と認められた部分のみ支給対象となります。)
「要支援1・2」と認定された方が利用できます。

対象となる住宅改修

・手すりの取り付け
・段差の解消
・滑りの防止および移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更
・引き戸等への扉の取り替え
・洋式便器等への便器の取り替え
・上記の住宅改修に付帯する工事

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8 総合事業の「一般介護予防事業」

総合事業の「一般介護予防事業」

要介護(要支援)認定で「非該当(自立)」と認定された方も利用できる介護予防サービスがあります。 総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の「一般介護予防事業」は、65歳以上のすべての方とその支援を行う方が対象です。

「一般介護予防事業」には、次の5つの事業があります。

・介護予防把握事業
・介護予防普及啓発事業
・地域介護予防活動支援事業
・一般介護予防事業評価事業
・地域リハビリテーション活動支援事業

市区町村は地域の実情に応じて、介護予防教室や相談会、認知症予防セミナー、地域の仲間と楽しめる趣味の活動など、さまざまな介護予防の取り組みを支援しています。
総合事業のサービス内容は市区町村によって異なりますので、お住いの市区町村のホームページなどで確認してみましょう。

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ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

「介護予防サービス」とは?対象となる方・種類・サービス内容などを分かりやすく解説

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