介護保険制度では、要介護(常に介護を必要とする状態)や要支援(日常生活支援が必要な状態)になった場合に介護サービスを受けることができます。要介護(要支援を含む)認定とは、この介護サービスの必要度を判断するものです。
今回は、要介護認定の流れや認定調査を受ける際のポイントをお伝えしていきます。
要介護認定の流れ
1,申請
要介護認定を受けるためには、お住まいの市区町村への申請が必要です。市区町村の介護保険を担当する窓口や地域包括支援センター等に、ご本人かご家族が申請します。(地域包括支援センターや居宅介護支援事業所などによる代行も可能です。)
要介護認定にかかわる費用の負担はありません。
2,認定調査
要介護認定の申請後に行われるのが、訪問による認定調査です。調査員がご自宅や入院先などを訪問し、ご本人の心身の状況などを調査します。
調査員は、市区町村の職員や市区町村が委託したケアマネジャーです。認定調査には認定調査票(全国共通)が用いられ、ご本人やご家族からの聞き取りや動作確認を行います。
また、調査員が重要と考えたことや調査項目では表せない状況(具体的な介護の頻度・回数等)、選択した根拠などは、特記事項に記入されます。
認定調査と並行して市区町村は主治医へ意見書の提出を求め、主治医はご本人の心身の状況や介護の原因となる病気などについて、主治医意見書を作成します。
聞き取り調査の項目(74項目)
1 身体機能・ 起居動作 | 2 生活機能 | 3 認知機能 |
1-1 麻痺(5) | 2-1 移乗 | 3-1 意思の伝達 |
1-2 拘縮(4) | 2-2 移動 | 3-2 毎日の日課を理解 |
1-3 寝返り | 2-3 えん下 | 3-3 生年月日をいう |
1-4 起き上がり | 2-4 食事摂取 | 3-4 短期記憶 |
1-5 座位保持 | 2-5 排尿 | 3-5 自分の名前をいう |
1-6 両足での立位 | 2-6 排便 | 3-6 今の季節を理解 |
1-7 歩行 | 2-7 口腔清潔 | 3-7 場所の理解 |
1-8 立ち上がり | 2-8 洗顔 | 3-8 徘徊 |
1-9 片足での立位 | 2-9 整髪 | 3-9 外出して戻れない |
1-10 洗身 | 2-10 上衣の着脱 | |
1-11 つめ切り | 2-11 ズボン等の着脱 | |
1-12 視力 | 2-12 外出頻度 | |
1-13 聴力 |
4 精神・行動 障害 | 5 社会生活 への適応 | 6 その他 |
4-1 被害的 | 5-1 薬の内服 | 特別な医療について(12) |
4-2 作話 | 5-2 金銭の管理 | |
4-3 感情が不安定 | 5-3 日常の意思決定 | |
4-4 昼夜逆転 | 5-4 集団への不適応 | |
4-5 同じ話をする | 5-5 買い物 | |
4-6 大声を出す | 5-6 簡単な調理 | |
4-7 介護に抵抗 | ||
4-8 落ち着きなし | ||
4-9 一人で出たがる | ||
4-10 収集癖 | ||
4-11 物や衣類を壊す | ||
4-12 ひどい物忘れ | ||
4-13 独り言・独り笑い | ||
4-14 自分勝手に行動する | ||
4-15 話がまとまらない |
質問例
・「生年月日はいつですか」
・「お名前を教えていただけますか」など
認定調査票(概況調査・基本調査)サンプル
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000126242.pdf
要介護認定のテキスト
介護認定審査会委員テキスト2009改訂版(平成28年4月改訂)(PDF:5,607KB)
3,コンピュータ判定(一次判定)
認定調査の内容と主治医意見書をもとに、コンピュータによって要介護度を一次判定します。
4,介護認定審査会による審査(二次判定)
保健・医療・福祉の学識経験者(5人程度)からなる介護認定審査会で、一次判定の結果・主治医意見書・特記事項の記載内容をもとに二次判定を行います。
5,認定結果の通知
二次判定をもとに、市区町村が要介護状態区分(要支援2段階・要介護5段階)を認定します。認定結果は、申請日から概ね30日以内に通知されます。
認定調査を受ける際のポイント
こまめにメモをとっておきましょう
・普段の介護の内容
・病気やけがの既往歴
・日頃から困っていること
・日によって変動があること
・認知症の方の普段の行動 など
要介護度は、病気の重さではなく介護に要する手間で判定されます。普段の介護で気づいたことや認知症の方の困った行動などがあったときには「いつ、どのようなことがあったのか」をメモしておき、言い忘れのないようにします。
「ご本人が困っていること」と「ご家族が困っていること」を分けて整理しておくと、短時間で正確な情報を伝えやすくなります。
ご家族も同席しましょう
認定調査の日程は調整してもらうことができます。ご本人だけではなくご家族も立ち会えるよう、事前に希望日時を伝えておきましょう。当日はご家族が行っている援助・介護についても伝え、ご家族の気持ちや体調なども話しておくことが大切です。
ご高齢者のなかには「困りごとを他人に知られたくない」「(認知症などで)認めたくない」という方も多く、ご家族が調査員に話すことでご本人のプライドが傷ついてしまうことがあります。ご本人の前で言いにくいことがある場合は、事前に伝えておくか、メモにして後で渡すなどの配慮をしましょう。
できるかぎり具体的に伝えましょう
返答するときは「はい」「いいえ」だけではなく、「どんなときに、どのような状況なのか」を具体的に伝えます。具体的な介護の内容・頻度・回数など調査項目にない内容も調査員に伝え、特記事項に書いてもらうようにしましょう。
普段のご本人の様子や介護内容を、日頃から主治医に伝えておくことも大切です。
ありのままの状況を伝えましょう
認定調査は、普段の状況を総合的に考慮して判断します。そのため、可能なかぎりご本人の生活の場で、いつも通りの状態を伝えることが重要です。「お客さま(調査員)が来るから」と特別に掃除をしたり、よそ行きの服を着たりしないようにしましょう。
遠慮をしたり、無理して元気にふるまったり、できないことをつい「できる」と言ってしまったりすることもありがちです。ありのままの状況を正確に伝えるようにしましょう。
逆に実際よりも大げさに伝えてしまうと、主治医の意見書と合わずに再調査になることもあるため注意が必要です。
何を聞かれるか分からないまま認定調査の当日を迎えると、日頃の状況や思っていることを正確に伝えられないかもしれません。質問される内容をあらかじめ把握して、心の準備をしておくと安心です。
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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