介護保険におけるご高齢者の「リハビリテーション」とは

「リハビリテーション(リハビリ)」は日常的によく使われている言葉ですが、本来どのような意味があるのでしょうか。今回は、リハビリテーションの基礎知識と、介護保険におけるご高齢者のリハビリテーションについて解説します。

リハビリテーションとは

リハビリテーションとは

リハビリテーション(Rehabilitation)の語源はラテン語で、re(再び)habilis(適する・ふさわしい)という意味があります。
リハビリテーションというと、病院などで行われる「機能回復訓練」をイメージする方が多いかと思いますが、実はそれだけではありません。
「再び適した状態になる」「本来あるべき姿に回復する」「その人らしい暮らしを再び構築する」などの広い意味があります。

リハビリテーションの定義

1982年(昭和57年)「国連・障害者に関する世界行動計画」においては、以下のように定義されています。 「リハビリテーションとは、身体的、精神的、かつまた社会的に最も適した機能水準の達成を可能とすることによって、各個人が自らの人生を変革していくための手段を提供していくことをめざし、かつ、時間を限定したプロセスである。」


リハビリテーションの主要分野

リハビリテーションには、①医学的リハビリテーション、②社会的リハビリテーション、③教育的リハビリテーション、④職業的リハビリテーションの4分野があります。

①医学的リハビリテーション

心身機能の回復を目的として、病院や診療所などの医療機関で行われる作業療法や理学療法などのことです。医学的リハビリテーションは、医師の指示のもと、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの医療専門職によって行われます。
日常生活で使われる「リハビリ」という言葉は、この医学的リハビリテーションを指すことが一般的です。

②社会的リハビリテーション

「社会生活力」を高めることを目的として行われます。
社会生活力とは「さまざまな社会的状況の中で、自分のニーズを満たし、一人ひとりに可能な最も豊かな社会参加を実現する権利を行使する力」を意味します。

③教育的リハビリテーション

障がいのある方や児童の能力を向上させ、潜在能力を開発し、自己実現を図れるよう支援することを目的としています。
「特別支援教育」とよばれることもありますが、教育リハビリテーションは、社会人を対象とした社会教育や生涯教育なども含む教育活動です。

④職業的リハビリテーション

障がいのある方が適切な職業に就き、それを維持することができるように支援する職業的なサービスのことです。
「障害者総合支援法」の訓練等給付における「就労移行支援」や「就労継続支援」も職業的リハビリテーションのひとつです。

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リハビリテーションの職種

リハビリテーションの職種

医師の指示のもと、医学的リハビリテーションを提供する専門職としては、「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」などがあります。


理学療法士(PT)

日常生活で必要な基本動作の回復や維持、悪化の予防などを目的として、運動機能の回復をサポートします。 理学療法士は「PT(Physical Therapist)」とも呼ばれます。


作業療法士(OT)

手芸、工作などの作業活動を通して、日常生活を送る上で必要な応用動作の回復を目的としたリハビリテーションを行う専門職です。
作業療法士は「OT (Occupational Therapist)」とも呼ばれます。


言語聴覚士 (ST)

言語(言葉)や摂食・嚥下(食べる・飲み込む)に障がいのある方に対し、言語コミュニケーションや食べる機能の回復等を目的として、発話練習、食べ物の安全な飲み込み方の指導・訓練などを行います。
言語聴覚士は「ST(Speech-Language-Hearing Therapist)」とも呼ばれます。



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ご高齢者のリハビリテーション

ご高齢者のリハビリテーション

リハビリテーションは、内容やご本人の状態に応じ医療保険または、介護保険を利用することができます。

医療保険によるリハビリテーションは、疾患(病気)別に受けることができますが、病気やケガの程度によって日数制限があります。
介護保険によるリハビリテーションは、介護認定を受けている方が利用できるサービスです。「通い」や「訪問」で、心身機能の維持回復や日常生活の自立に向けた訓練が行われます。
疾患(病気)や日数の制限はありませんので、必要性があればリハビリテーションを継続して受けることができます。


介護保険によるリハビリテーション

通所リハビリテーション(デイケア)
ご自宅から医療機関や介護老人保健施設(老健)、介護医療院に通い、リハビリテーションを受ける介護保険サービスです。
歩行訓練などの機能訓練のほかに、食事や入浴、レクリエーションなどのサービスも提供しています。

短時間通所リハビリテーション
短時間(1~2時間)の通所リハビリテーション(デイケア)です。身体機能の維持・改善に特化した個別リハビリテーションなどが提供されます。 長時間の(通所リハビリテーション)デイケアとは異なり、食事や入浴などのサービスはありません。

訪問リハビリテーション
理学療法士などが利用者のご自宅を訪問し、リハビリテーションを行う介護保険サービスです。ご家族へのアドバイスや相談も行いますが、機能訓練以外のサービス提供(食事など)はありません。

そのほか、通所介護(デイサービス)や短期入所生活介護(ショートステイ)などでも、「個別機能訓練」としてサービスを受けることが可能です。



介護におけるリハビリテーション

ご高齢者が通所リハビリテーションを継続する理由をみると、身体機能の改善に関する希望が多いですが、「排泄などの動作ができるようになりたい」「社会的活動をできるようになりたい」など生活機能の向上社会参加に関する希望も少なくありません。
【平成24年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成26年度調査)「リハビリテーションにおける医療と介護の連携に係る調査研究事業」報告書】

そのため、「介護」におけるリハビリテーションでは「心身機能」だけでなく、「活動」や「参加」などの要素にも働きかけることが重要です。
QOL(生活の質)向上を目指すために、「心身機能」「活動」「参加」のそれぞれの要素にバランスよく働きかける効果的なリハビリテーションの推進が求められています。

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「介護」は、ご家族や地域の方々、地域での生活などに関わっているものです。ご高齢者がご高齢者を介護する「老老介護」などの問題も深刻化する中、介護する方の負担を軽減するためにもリハビリテーションは欠かせません。 「リハビリ=機能訓練」と誤解されがちですが、これからはリハビリテーションの理念を一人ひとりが理解していくことが大切でしょう。


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ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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