「小規模多機能型居宅介護」は、ご利用する方の様態や希望に応じて、一つの事業所で、「通い」「訪問」「泊まり」の3つのサービスを柔軟に組み合わせ提供する居宅介護サービスの一つです。今回は、在宅で介護を受ける方やそのご家族にとってメリットの多い「小規模多機能型居宅介護」について解説します。
「小規模多機能型居宅介護」とは
「小規模多機能型居宅介護」は、2006年(平成18年)4月の介護保険法改正によって創設された地域密着型サービスのひとつです。認知症や中重度となっても、住み慣れたご自宅や地域で生活を続けられるよう支援することを目的としています。
小規模多機能型居宅介護事業所では、施設への「通い(通所)」を中心として、ご自宅への「訪問」や短期間の「泊まり(宿泊)」などを組み合わせて、以下のようなサービスを一体的に提供します。
「小規模多機能型居宅介護」のサービス内容
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・食事や入浴、排せつなどの介護
・調理や洗濯、掃除などの家事
・生活等に関する相談や助言
・機能訓練(リハビリテーション) など
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「小規模多機能型居宅介護」の対象者
以下のいずれにも該当する方が対象となります。
※ 要支援1・2の方は「介護予防小規模多機能型居宅介護」が利用できます。
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・事業者が所在する市区町村に居住する方
・要介護1~5の認定を受けた方
「小規模多機能型居宅介護」の基準等
利用定員
本体事業所 | サテライト型事業所 | |
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登録定員 | 29名 | 18名 |
通いの定員 | 登録定員の1/2 ~ 15名 (一定要件を満たす場合は最大18名) |
登録定員の1/2 ~ 12名 |
泊まりの定員 | 通い定員の1/3 ~ 9名 | 通い定員の1/3 ~ 6名 |
人員基準
代表者 | 認知症対応型サービス事業開設者研修を修了した者 |
管理者 | 認知症対応型サービス事業管理者研修を修了した常勤・専従の者 |
ケアマネジャー (介護支援専門員) |
小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修を修了した 介護支援専門員 1名以上 |
日中の従業者 | 通いの利用者3名に1名以上+訪問対応1名以上 |
夜間の従業者 | 泊まりと訪問対応で2名以上(1名は宿直可) |
看護職員 | 小規模多機能型居宅介護従業者のうち1名以上 |
設備
・居間と食堂は機能を十分に発揮しうる適当な広さ
・泊まりは4.5畳程度でプライバシーが確保できるしつらえ
自己負担額(1割)の目安(1月につき)
要介護1 | 10,364円 |
要介護2 | 15,232円 |
要介護3 | 22,157円 |
要介護4 | 24,454円 |
要介護5 | 26,964円 |
※ 一定の所得がある場合は2割または3割負担となります。
※ 事業所と同一建物に居住している場合は自己負担額が異なります。
※ お住まいの地域や利用する事業所によって自己負担額が異なる場合があります。
※ 日常生活費(食費・宿泊費・おむつ代など)が別途必要になります。
詳しくは担当ケアマネジャーや市区町村の窓口、地域包括支援センターにお問い合わせください。
「小規模多機能型居宅介護」のメリット
一つの事業所による一体的なサービス提供
一つの事業所で、さまざまなサービスを一体的に提供することができます。
以前はこれらのサービスが別々の事業所で提供されており、スタッフもそれぞれ異なっていました。ご高齢の方にとって生活環境の変化は大きな負担となる可能性が高く、認知症の方は症状の悪化につながってしまうこともあります。
小規模多機能型居宅介護では、同じ事業所で顔なじみのスタッフが対応するため、よりきめ細やかなサービスの提供が可能です。ケアマネジメントについても、その小規模多機能型居宅介護に所属しているケアマネジャー(介護支援専門員)が担当します。
小規模でアットホームな環境
地域密着型サービスのひとつであるため、身近な場所でご家族やご近所の方との交流を保ちながら暮らし続けることができます。
施設の規模は小さく少人数制なので、ご利用者さま同士もなじみの関係を築きやすく、ご本人やご家族のニーズに合った柔軟な対応ができることもメリットです。
24時間365日対応が可能
小規模多機能型居宅介護の「通い」「訪問」「泊まり」は、通常の「デイサービス」「訪問介護」「ショートステイ」とは少し異なり、回数や時間、内容などに細かい制限がないことが利点です。
「通い」は早朝や夕刻など時間帯の融通が利くことが特長で、「入浴だけ」「昼食だけ」等の利用も可能です。365日営業しているため、日曜や祝日も利用できます。
「訪問」は24時間対応で、通常の「訪問介護」のように「30分未満」「1時間」などの時間制限や回数制限がありません。安否確認、体位変換、緊急時対応など、必要なときに必要なだけサービスを受けることができます。
「泊まり」は、事前の予約や手続きをしなくても臨機応変な対応が可能です。ご家族に急用ができたときなどは、「通い」からそのまま「泊まり」を利用することもできます。
「通い」と同じ場所で、なじみのスタッフやご利用者さまと一緒に夜を過ごせますので、ご本人もご家族も安心できるでしょう。
「看護小規模多機能型居宅介護」との違い
「小規模多機能型居宅介護」と名前が似ているサービスに「看護小規模多機能型居宅介護」があります。
「看護小規模多機能型居宅介護」は、「小規模多機能型居宅介護」に「訪問看護」を組み合わせて提供するサービスです。
以下のような医療ニーズの高い方々を支援するために、2012年(平成24年)に地域密着型サービスに追加されました。(創設当初の名称は「複合型サービス」)
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・退院直後の在宅生活へのスムーズな移行
・がん末期等の看取り期、病状不安定期における在宅生活の継続
・家族に対するレスパイトケア、相談対応による負担軽減
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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