夫婦で老人ホームに入ることはできる?施設の種類と特徴・費用・注意点などを解説

老後の過ごし方は多種多様ですが、ご夫婦で老人ホームに入居するという選択肢もあります。今回は「夫婦で一緒に老人ホームに入りたい」という方に向けて、ご夫婦で入れる施設の種類やメリット・デメリット、費用の目安、選ぶときのポイントなどを解説します。

夫婦で同じ老人ホームに入ることはできるの?

夫婦で同じ老人ホームに入ることはできるの?

老後の生活について考え始めたとき、「夫婦で老人ホームに入りたい」と望む方もいらっしゃるのではないでしょうか。その理由は、「今まで通り一緒に暮らしたい」「介護が必要になったから」「子どもに負担をかけたくない」など人それぞれだと思います。

「夫婦で同じ老人ホームに入るのは難しいのでは...」と心配される方もいらっしゃいますが、ご夫婦で入居できるところはいくつかあります。2人部屋(夫婦部屋)がある施設なら同じ居室で過ごすことができますし、同じ施設の1人部屋(個室)におひとりずつ入居することも可能です。

ただし老人ホームは1人部屋が多く、2人部屋があっても倍率が高くて入居が難しい場合があります。また、身体状況や要介護度によって入居できない施設もあります。

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夫婦で入居できる老人ホームとは?

夫婦で入居できる老人ホームとは?

ご夫婦で入居できるのはどのような施設なのでしょうか。「夫婦で一緒に老人ホームに入るなら同じ部屋がいい」という方も多いかと思います。

老人ホームにはさまざまな種類があり、入居条件がそれぞれ異なります。
公的施設の特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は費用負担が少ないというメリットがありますが、2人部屋はありません。さらに原則として「要介護3以上」の方が対象となっており、入居を希望する待機者も多いため、ご夫婦で同時に入居するのは難しいといえるでしょう。

2人部屋が用意されているのは、主に有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの民間施設です。すべての施設に2人部屋があるわけではありませんが、ご夫婦でそれぞれ個室に入居できる場合もあります。

ここからは、ご夫婦での入居が可能な「住宅型有料老人ホーム」「介護付き有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」「軽費老人ホーム」「グループホーム」についてそれぞれ解説します。お身体の状況やご希望に合った施設をお探しの方は参考にしてみてください。


住宅型有料老人ホーム

生活支援などのサービスが付いたご高齢者向けの居住施設です。
介護が必要となった場合は、ご自身で介護サービス事業者(デイサービスや訪問介護など)を選択して利用することができます。

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介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)

介護などのサービスが付いたご高齢者向けの居住施設です。
一般型(一般型特定施設入居者生活介護)」と「外部サービス利用型(外部サービス利用型特定施設入居者生活介護)の2種類があります。
「一般型」は、ホームのスタッフが介護サービスを提供します。
「外部サービス利用型」は、ホームのケアマネジャーやスタッフがケアプランの作成、生活相談、安否確認(緊急時対応)などを行い、介護サービスは委託された外部の介護サービス事業者が提供します。


健康型有料老人ホーム

自立して生活できる方を対象としたご高齢者向けの居住施設です。
食事などのサービスは付いていますが、介護が必要となった場合は退去しなければならないため注意が必要です。


サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

安否確認サービスや生活相談サービスなどが提供されるバリアフリー構造の住まいです。
介護保険サービスを利用する場合は、ご自身で介護サービス事業者を選択することができます。
(入居しているサービス付き高齢者向け住宅が、介護保険法に基づく「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている場合は、その施設から介護保険サービスが提供されます。)

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軽費老人ホーム(ケアハウス)

自立した日常生活を営むことが難しい低所得のご高齢者が、無料または低額な料金で入居できる施設です。
「軽費老人ホームA型」「軽費老人ホームB型」「ケアハウス」「都市型軽費老人ホーム」の4種類がありますが、現在はその大半が「ケアハウス」です。
介護が必要になった場合は、介護サービス事業者と個別に契約して必要なサービスを受けることができます。また、包括的な介護サービスを提供する「特定施設入居者生活介護」の指定を受けたケアハウスもあります。
居室は原則すべて個室ですが、2人部屋がある施設ではご夫婦での入居も可能です。

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グループホーム(認知症対応型共同生活介護)

認知症の方を対象とした共同生活住居です。少人数(5人〜9人)の認知症のご高齢者が、介護スタッフの専門的なケアを受けながら共同生活を送ります。
グループホームに入居できるのは、要支援2または要介護1以上の認知症の方、原則として施設が所在する市町村に居住する方です。
居室は基本的に個室ですが、夫婦で入居できる2人部屋がある施設もあります。

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夫婦で老人ホームに入居するメリット

ご夫婦で同じ老人ホームに入る場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。


今まで通り一緒に暮らせる

長年連れ添ってきたおふたりで一緒に暮らせるのは大きなメリットのひとつでしょう。
生活環境の変化はストレスの原因になりますので、できるだけ今まで通りの生活を続けることがストレス軽減につながる場合もあります。


設備が充実しているところが多い

2人部屋の場合は、ベッドが2つ置ける広めの空間で、ミニキッチンや浴室などの設備も充実している傾向があります。さらに、ご自宅のように過ごせる間取りの居室を用意しているところもあります。




夫婦で老人ホームに入居するデメリット

ご夫婦で同じ老人ホームに入居するとき、メリットもある一方で残念ながらデメリットもあります。


選択肢が少ない

2人部屋を希望される場合は、望み通りの施設が見つかりにくいというデメリットがあります。
2人部屋のある老人ホームでもその数は多くないため、立地や間取り、費用、サービスなどの面でどうしても選択肢が限られるからです。また、希望に合うところが見つかっても空きがなくてすぐに入れないこともあります。

また、多くの老人ホームでは外出や外泊ができますが、施設によっては自由に外出・外泊することが難しいところもあります。事前申請が必要だったり、門限があったりすると、お元気な方は窮屈に感じることもあるようです。

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夫婦で老人ホームに入居した場合にかかる費用は?

夫婦で老人ホームに入居した場合にかかる費用は?

ご夫婦で老人ホームに入居すると、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。
ここでは、ご参考までに埼玉県草加市にある介護付有料老人ホーム「あずみ苑グランデ草加」の1人部屋と2人部屋に入居した場合の費用をそれぞれご紹介します。居室は60室あり、そのうち4室が2人部屋です。


【1人部屋の料金表】※2022年10月1日現在の料金です

プランS 前払金 / 480万円
月額利用料 / 122,700円~127,900円
月額利用料内訳
家賃相当額 / 12,000円~17,200円
食費 / 65,700円 管理費 / 45,000円
プランA 前払金 / 360万円
月額利用料 / 147,700円~152,900円
月額利用料内訳
家賃相当額 / 37,000円~42,200円
食費 / 65,700円 管理費 / 45,000円
プランB 前払金 / 240万円
月額利用料 / 172,700円~177,900円
月額利用料内訳
家賃相当額 / 62,000円~67,200円
食費 / 65,700円 管理費 / 45,000円
プランC 前払金 / 120万円
月額利用料 / 197,700円~202,900円
月額利用料内訳
家賃相当額 / 87,000円~92,200円
食費 / 65,700円 管理費 / 45,000円
プランD 前払金 / 0円
月額利用料 / 222,700円~227,900円
月額利用料内訳
家賃相当額 / 112,000円~117,200円
食費 / 65,700円 管理費 / 45,000円


【2人部屋の料金表】

プランS 前払金 / 960万円
月額利用料 / 252,400円~253,400円
月額利用料内訳
家賃相当額 / 31,000円~32,000円
食費 / 131,400円 管理費 / 90,000円
プランA 前払金 / 720万円
月額利用料 / 302,400円~303,400円
月額利用料内訳
家賃相当額 / 81,000円~82,000円
食費 / 131,400円 管理費 / 90,000円
プランB 前払金 / 400万円
月額利用料 / 352,400円~353,400円
月額利用料内訳
家賃相当額 / 131,000円~132,000円
食費 / 131,400円 管理費 / 90,000円
プランC 前払金 / 240万円
月額利用料 / 402,400円~403,400円
月額利用料内訳
家賃相当額 / 181,000円~182,000円
食費 / 131,400円 管理費 / 90,000円
プランD 前払金 / 0円
月額利用料 / 452,400円~453,400円
月額利用料内訳
家賃相当額 / 231,000円~232,000円
食費 / 131,400円 管理費 / 90,000円

別途、介護保険給付費等があります。

有料老人ホーム「あずみ苑 グランデ草加」について詳しくはこちらをご覧ください。




夫婦で老人ホームに入るタイミングは?

「夫婦で老人ホームへ入りたいけれど、いつから探し始めればよいのか分からない」「1人部屋と2人部屋のどちらを選ぶか迷っている」という方もいらっしゃるでしょう。

まず、老人ホームには何歳から入れるのでしょうか。入居条件は施設によってさまざまですが、入居可能な年齢は60歳以上または65歳以上が一般的です。

ご夫婦そろって老人ホームに入居するには、2人部屋(夫婦部屋)に入る方法と、同じ施設の1人部屋(個室)におひとりずつ入る方法があります。
1人部屋と2人部屋にはそれぞれメリット・デメリットがありますので、価値観や生活スタイルに照らし合わせて慎重に選ぶことをおすすめします。
ご夫婦同室を希望される場合は、2人部屋のある施設が少ないため、なるべく早めに探し始めるのが望ましいでしょう。




夫婦で老人ホームに入る場合の注意点

ご夫婦ともお元気なときは、比較的自由度が高い施設を選ぶことも可能です。ただし、自立の方向けの施設では、要介護度が上がったときに退去を迫られる場合があります。
また、2人部屋に入居できたとしても、ご夫婦のどちらかが入院したり亡くなったりしたときに、1人部屋への住み替えが必要になることもあります。

ご夫婦の介護度が異なる場合は、お身体の状況等によって入居できないところがありますので、介護度の高い方が先に入居するという選択もあるでしょう。
ご夫婦ともに介護が必要な場合は、介護サービスを提供している施設を選ぶ必要があります。

ご希望や条件に合った施設を探して入居に至るまでには、意外と時間がかかるものです。施設の見学や体験入居、引っ越しなどには体力や気力も要しますので、おふたりともお元気なうちから検討されるとよいでしょう。




夫婦で入居できる老人ホームの選び方

夫婦で入居できる老人ホームの選び方

ここからは、ご夫婦で入居できる老人ホームを選ぶときのポイントをお伝えします。


希望条件を整理する

まずは入居後にどのように過ごしたいのかをご夫婦でよく話し合い、条件を整理しましょう。
立地や設備、費用、介護と医療の体制など、優先すべき点やどうしても譲れない点、妥協できる点をあらかじめ整理しておくとよいでしょう。


長期的な視点で考える

老人ホームを選ぶ際は、先を見据えてサービス内容などを確認しましょう。
現在は介護の必要がない方や要介護度が低い方も、支援や介護が必要になったとき、介護度が上がったときにどう暮らしたいのか考えておくことが大切です。
どのような介護・医療サービスが受けられるのか、その施設でいつまで暮らせるのか、住み替える場合は入居一時金がいくら返還されるのかなどを入居前に必ず確かめておきましょう。


無理のない資金計画を立てる

老人ホームに入居する際は、入居時の費用と月額費用(家賃・食費・管理費)のほかに、医療費、その他のサービス費、介護保険自己負担額、通信費、日用品や娯楽の費用などがかかります。
費用は施設ごとに大きく異なりますので、パンフレット等に記載されている金額のほかに必要な費用を事前に確認することが重要です。


見学や体験入居を行う

多くの老人ホームでは、見学や体験入居ができます。ご夫婦そろって足を運び、実際にホームの雰囲気を感じ取ることはとても大切です。できれば曜日や時間を変えて何度か訪問し、気になることがあれば納得のいくまで質問しましょう。

  • 見学・体験入居で確認しておきたいポイント
    ・施設全体の雰囲気
    ・居室や廊下の広さ
    ・トイレや洗面所などの使い心地
    ・収納スペースの広さ
    ・ホームの設備
    ・食事の内容
    ・サークル活動などの内容
    ・スタッフの表情や身だしなみ
    ・入居者の様子
    ・施設周辺の環境(利便性・騒音の有無など)

重要事項説明書をよく確認する

ご希望やご予算に沿うホームが見つかったら、最新の「重要事項説明書」などを取り寄せて内容をよく確認しましょう。
「重要事項説明書」には、サービスの提供内容や医療連携の内容、利用料金、入居条件、入居後に居室を住み替える場合の条件、入居者の状況、職員体制、夜勤の勤務体制などが記載されています。


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老人ホームの見学・体験入居のときにチェックしておきたいポイント
有料老人ホームの探し方と利用までの流れ


最近はご高齢者やご家族のニーズが多様化しているため、自立の方から介護が必要な方まで対応している老人ホームもあります。また、認知症の方や医療依存度の高い方でも入居できる、ペットと暮らせる、看取り介護を行っているなど、幅広いニーズに対応した施設も増えつつあります。しかし、ホームによって入居条件やサービス内容が異なるため、本当に適切なところなのかを慎重に見極めることが重要です。

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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