ご家族や地域で見守る!ご高齢者をねらう特殊詐欺の手口と対策

ご高齢者をねらった詐欺は依然として増え続けており、その手口もご本人だけでは防ぎきれないほど巧妙化しています。ご高齢者の詐欺被害を防ぐためには、ご家族や地域の方の見守りも必要です。今回は、被害が絶えない特殊詐欺の事例や報告されている件数、未然に防ぐポイントについてお伝えします。

特殊詐欺とは

特殊詐欺

近年、ご高齢の方が「特殊詐欺」に遭うケースが増えています。特殊詐欺とは、不特定の方に対して電話やメールなどを使い、対面することなく信頼させて現金などをだまし取る犯罪のことです。
2020年 (令和2年)1月1日から、特殊詐欺は以下の10種類に分類されています。

特殊詐欺の種類

・オレオレ詐欺

  • 親族などを名乗り、仕事に関するトラブル等を口実にお金をだまし取る手口です。
    子どもや孫のふりをした犯人から電話がかかってきて、最初に「風邪をひいた」「喉の調子が悪い」などと言って、声が違うことを不自然に思われないようにします。そして「携帯をなくした(盗まれた・壊れた)」と言って、電話番号が変わったと思い込ませます。
    再び犯人から電話があり、迫真の演技で「会社のお金が入ったカバンを落としてしまった」「会社のお金を使い込んでしまった」「今日中に支払わないと会社をクビになる」などの理由をつけ、すぐにお金が必要だと言います。
    指定口座にお金を振り込ませるほか、会社の同僚等を名乗る犯人が現金やキャッシュカードを受け取りにくる場合もあります。

・預貯金詐欺

  • 自治体や税務署の職員等を名乗り「医療費などの払い戻しがある」などと言って、キャッシュカードの確認・取替が必要だと信じ込ませた上で暗証番号を聞き出し、自宅を訪れてキャッシュカードをだまし取る手口です。
    警察官や銀行協会職員等を名乗り「あなたの口座が犯罪に利用されている」と言う場合や、百貨店や家電量販店の店員等を名乗り「あなた名義のキャッシュカードで買物をした犯人がいる」と言う場合もあります。

・キャッシュカード詐欺盗(窃盗)

  • 警察官や銀行協会、大手百貨店等の職員と偽って電話をかけ、「キャッシュカードが不正に利用されている」「預金を保護する手続きをする」などと言ってキャッシュカードをすり替えて盗み取る手口です。
    電話で説明した後に、警察官や銀行職員になりすました犯人が「キャッシュカードの確認に行く」などの名目で自宅を訪れます。そして、隙を見て偽のカードと本物のカードをすり替え、口座から現金を引き出してしまいます。

・架空料金請求詐欺

  • 有料サイトや消費料金等について、メールやハガキ(封書)で「未払いの料金がある」などと知らせて金銭等をだまし取る手口です。
    携帯電話に「サイトの料金が未納です」「このままでは裁判になります」のような内容のメールが届いたり、法務省や裁判所などの名称でハガキが届いたりします。
    不安になって記載された電話番号に電話をかけると、「裁判を取り下げるため」などと言って実際には使用していない料金を支払わせようとします。
    「コンビニで電子マネーカード(プリペイドカード)を買って番号を教えて」などと言ってくる場合もあります。

・還付金詐欺

  • 「還付金がある」などと言ってATMを操作させ、犯人の口座に送金させる手口です。
    自治体や税務署、年金事務所の職員を装った犯人から「払い過ぎたお金(医療費・保険料・税金など)が返ってきます」などと電話がかかってきます。そして、携帯電話を持ってATMへ行くよう誘導し、電話で還付手続きを指示するふりをしてATMを操作させ、犯人の口座にお金を振り込ませようとします。

・融資保証金詐欺

  • 実際には融資する意思がないにもかかわらず、簡単に融資が受けられると信じ込ませて金銭などをだまし取る手口です。
    「お金を貸します」「無担保、低金利、保証人不要で融資可能」などと書かれたハガキやメールが突然届きます。大手企業のロゴが記載されているため、軽い気持ちで「お金を借りたい」と電話をかけると、犯人は「まず保証金が必要です」などと言ってお金を要求してきます。

・金融商品詐欺

  • 価値が全くない未公開株、高価な物品などについて嘘の情報を教えて、購入すればもうかると信じ込ませ、その購入代金として金銭等をだまし取る手口です。
    未公開株や社債などへの投資や商品購入に関するパンフレット、ハガキ、SMSが突然届いた後、犯人から電話がかかってきます。
    「興味がない」と電話を切っても、勝手に購入したことにして解約料を要求してくることもあります。

・ギャンブル詐欺

  • 雑誌やインターネット記事、電話、メール等で「パチンコ、パチスロの必勝法」「公営ギャンブルの必勝法」「宝くじの当選番号」などを教えると持ちかけ、会員登録等を申し込んできた人に登録料・情報料を支払わせて金銭等をだまし取る手口です。

・交際あっせん詐欺

  • 雑誌やメールに「女性紹介」などと記載し、申し込んできた人に会員登録料金や保証金等の名目で金銭等をだまし取る手口です。

・その他の特殊詐欺

  • 上記の類型に該当しない特殊詐欺のことです。

特殊詐欺の認知件数

2021年(令和3年)の特殊詐欺の認知件数は14,498件、被害額は282.0億円で、被害は大都市圏に集中しています。
手口別の認知状況をみると、「オレオレ詐欺」「預貯金詐欺」「キャッシュカード詐欺盗」の認知件数は8,118件、被害額は160.7億円で、総認知件数に占める割合は56.0%となっています。

ご高齢者の被害状況

65歳以上のご高齢者の被害認知件数は12,724件で、法人被害を除いた総認知件数に占める割合(高齢者率)は88.2%と非常に高い割合になっています。また、65歳以上の高齢女性の被害認知件数は9,907件で、法人被害を除いた総認知件数に占める割合は68.7%でした。
【参考:警察庁 令和3年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)】

ご高齢者がねらわれる理由

ご高齢者がねらわれる理由

身近に相談できる人がいない

65歳以上のご高齢者のうち、子どもと同居する方は減少しており、単独やご夫婦のみの世帯が増加しています。
特に、身近に相談できる方がいない一人暮らしのご高齢者は、標的にされやすいといわれています。離れて暮らすご家族がいても、ご高齢者は「連絡をすると迷惑がかかるかも」と考えがちです。
おひとりで孤独を感じている方は、他人から親切に話しかけられると好意を抱きやすいため、犯人が偽りの親切心を示して誘導する場合もあります。

日中に電話に出る機会が多い

ご高齢者の多くはご自宅で過ごす時間が長く、電話に出る機会が増えます。また、ご高齢者は律儀に対応し、犯人の言いなりになってしまう傾向があります。
また、普段インターネットなどを使わない方は情報量が少ないため、判断を誤ってしまうことが多いようです。さらに、被害に遭ったことに気づかない、気がついても「恥ずかしい」という気持ちから誰にも相談しないというご高齢者も少なくありません。

詐欺被害を未然に防ぐために

詐欺被害を未然に防ぐために

留守番電話にしておく

ご自宅の電話は、家にいるときでも常に留守番電話にしておくとよいでしょう。
特殊詐欺は、電話から始まることがほとんどです。電話に出て犯人と話してしまうと、巧みな話術によって冷静な判断が難しくなります。犯人は声が録音されて証拠として残ることを嫌がるため、メッセージを残すことを避けます。留守番電話に設定することで、犯人と直接話をしない環境をつくっておきます。

また、最近の電話機には出る前に相手を確認できたり、登録した番号以外の着信を拒否できたりするなどの機能が付いているものがあります。電話機に後から取り付けられる警告・通話録音装置や迷惑電話ブロックなどは、振り込め詐欺だけでなく悪質商法等にも有効です。

電話を受けても動揺しない

もし電話に出てしまった場合も冷静に対応できるよう、電話の近くに貼り紙をしておくとよいでしょう。子どもや孫が危機に直面したという虚言で不安や恐怖を呼び起こしたり、「時間がない」と急かしたりして、判断力を奪うのが特殊詐欺の手口です。いざというときに動揺しないように、詐欺の手口を書いた紙や「家族に相談!」などのメモを貼っておきます。

相手に急かされても、お金をすぐに振り込んだり渡したりしないで、子どもや孫など本人に確認することが大切です。「電話番号が変わった」と言われた場合は、元の電話番号に必ずかけ直しましょう。不安を感じたらすぐに電話を切り、ご家族や身近な方、警察などに相談してください。

ご家族で「合い言葉」を決めておく

日頃からご家族で詐欺の手口などについて話題にし、被害防止のためによく話し合っておきましょう。ご家族だけが分かる合い言葉や約束事を決めておき、こまめに注意を呼びかけることも重要です。

困ったときは誰かに相談する

不審な電話やメール、請求文書などがきたら、すぐに誰かに相談しましょう。ご近所の方とも情報を共有し、緊急連絡先を交換しておきます。地域の方も、近所のご高齢者の変化に気づいたら相談機関に連絡する、ATMの前で慌てている方を見たら声をかけるなどすることで詐欺の防止へつなげることができます。

関連記事:
ご高齢者の消費者トラブルを未然に防ぐためのポイント


特殊詐欺の手口は非常に複雑で巧妙です。「私は大丈夫!」「絶対にだまされない」と思っている方も、被害に遭う可能性があります。少しでも「怪しいな」と感じたら、ひとりで判断しないで警察「#9110」または消費者ホットライン「188(いやや!)」に相談しましょう。

相談窓口

消費者ホットライン 「局番なしの 188(いやや!)
警察相談専用電話  「#9110
未公開株通報専用窓口(日本証券業協会) 0120-344-999


被疑者に関する情報

匿名通報ダイヤル 0120-924-839


関連リンク:
警察庁 SOS47 特殊詐欺対策ページ

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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