日本には「介護保険制度(高齢者などの介護を社会全体で支え合う仕組み)」があり、支援や介護が必要になっても、住み慣れたご自宅で必要な介護サービスを受けながら暮らし続けることも可能です。しかし、さまざまな事情により自宅での生活が難しくなることがあります。
また、お元気なうちから老人ホームなどに住み替えたいとお考えの方もいらっしゃるでしょう。今回は、そのような場合に入居できる高齢者向け住まいについてまとめました。
目次
1.高齢の方向け住まいの種類

高齢の方向けの住まいには、「有料老人ホーム」、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」、「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)」などがあります。サービスの内容や提供方法、設備、費用、入居条件などは、施設によって異なります。
施設の種類 | 主な特徴 |
---|---|
有料老人ホーム | 大きく分けて「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3つがあります。入居条件はホームによって異なります。 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 「高齢者住まい法」の改正により創設されたバリアフリー構造の住まいです。 |
特別養護老人ホーム | 比較的安価で入居できる公的な施設です。そのため待機者が多く、数年の待機が必要となることもあります。大きく分けて「広域型特別養護老人ホーム」「地域密着型特別養護老人ホーム」「地域サポート型特別養護老人ホーム」の3つがあります。 |
その他の住まい
- ・ケアハウス
- ・グループホーム(認知症対応型共同生活介護) ・介護医療院 など
1.高齢の方向け住まいのサービス
施設の種類 | 受けられるサービス |
---|---|
有料老人ホーム | 「食事の提供」「介護(入浴・排せつ・食事)の提供」「洗濯や掃除等の家事」「健康管理」のサービスのうち、1つ以上を受けることができます。 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 「安否確認」と「生活相談」のサービスが必ず提供されます。介護保険サービスは、外部の介護保険事業者等と契約を結ぶことで利用できます。 |
特別養護老人ホーム | 介護(入浴・排せつ・食事など)、機能訓練、療養上のケアなどを受けることができます。 |
3.居住に必要な費用
費用は、住まいの種類、提供されるサービス内容、居室や共用部分の設備などによって異なります。
必要な費用
- ・居室や共用部分を利用するための家賃
- ・共用部分の維持・管理のために必要な共益費(管理費)
- ・水道利用料や電気利用料などの水光熱費
- ・食事の提供を受けるために必要な食費
- ・介護、生活支援、家事援助などを受けるためのサービス利用料 など
※ 入居時に「敷金」の支払いを求めるところもあります。
4.有料老人ホームとは

有料老人ホームは、「老人福祉法 第29条」に規定された高齢の方向けの住まいです。都道府県等へ届け出ることで設置が可能な施設で、有料老人ホームに対する指導・監督も都道府県等が行っています。
入居条件
入居できる年齢、要介護度などの要件は、ホームによって異なります。
有料老人ホームの種類
有料老人ホームには、「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3つがあります。
・介護付有料老人ホーム介護などのサービスが付いた有料老人ホームです。
介護が必要になっても、ホームが提供する「特定施設入居者生活介護」という介護保険サービスを利用しながら、暮らし続けることができます。
広告などに「介護付き」や「ケア付き」と表示することができるのは、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている有料老人ホームのみです。
介護付有料老人ホームは、さらに「一般型特定施設入居者生活介護」と「外部サービス利用型特定施設入居者生活介護」に分かれています。
一般型特定施設入居者生活介護 | 介護サービスはホームの職員が提供します。 |
外部サービス利用型特定施設入居者生活介護 | 介護サービスは委託先の介護サービス事業所が提供します。安否確認や計画作成などはホームの職員が行います。 |
生活支援などのサービスが付いた有料老人ホームです。介護が必要になった場合は、入居者ご自身の選択により、デイサービスや訪問介護などの介護サービスを利用しながら暮らし続けることが可能です。
・健康型有料老人ホーム食事などのサービスが付いた有料老人ホームです。
その名前のとおり、自立した高齢者を対象としているため、介護が必要になった場合は、契約を解除して退去することになります。
契約形態
利用権方式 | 居住部分とサービス部分(介護や生活支援など)の契約が一体となっている方式です。 |
建物賃貸借方式 | 賃貸住宅における居住の契約形態で、居住部分とサービス部分(介護や生活支援など)の契約が別々になっている方式です。 |
終身建物賃貸借方式 | 「建物賃貸借契約」の特別な類型で、都道府県知事等から高齢者の居住の安定確保に関する法律の規定に基づく終身建物賃貸借事業の認可を受けたものです。終身にわたり居住することができます。 |
利用料の支払い方式
全額前払い方式 | 終身にわたって必要な家賃・サービス費用の全部を「前払金」として一括で支払う方式 |
一部前払い・一部月払い方式 | 終身にわたって必要な家賃・サービス費用の一部を前払いし、その他は月払いする方式 |
月払い方式 | 前払金は支払わず、家賃・サービス費用を月払いする方式 |
選択方式 | 入居者が「全額前払い方式」「一部前払い・一部月払い方式」「月払い方式」のいずれかを選択できる方式。 |
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5.サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは
略して「サ高住」とも呼ばれるサービス付き高齢者向け住宅は、高齢者が安心して生活できるバリアフリー構造の住宅です。2011(平成23)年の「高齢者住まい法(高齢者の居住安定確保に関する法律)」の改正により創設されました。
登録や指導・監督は、都道府県・政令市・中核市によって行われています。
入居条件
次のいずれかに該当する単身または夫婦世帯が対象です。
- ・60歳以上の方
- ・要介護または要支援認定を受けている60歳未満の方
サービス付き高齢者向け住宅の特徴
施設情報・運営情報が公開されている専用サイトで費用やサービス、入居者などに関する情報が開示されているため、入居希望者のニーズにあった住まいを選ぶことが可能です。
居住の安定が図られた契約長期入院を理由に事業者から一方的に解約できないなど、居住の安定が図られた契約内容になっています。
高齢の方に配慮した環境手すりの設置、段差解消、廊下幅の確保など、バリアフリーの基準を満たしています。また、各専用部分の床面積は原則25㎡以上で、台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を備えています。
「見守りサービス」が提供されるケアの専門家が少なくとも日中常駐し、「安否確認」と「生活相談サービス」を提供します。その他に、食事の提供、家事援助(清掃・洗濯等)、介護(介護保険サービスを除く)などのサービスを提供しているところもあります。
・ケアの専門家社会福祉法人・医療法人・指定居宅サービス事業所等の職員、介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、養成研修修了者 医師、看護師、准看護師
・介護保険サービスが利用できる介護が必要な場合は、住宅事業者や外部の介護保険事業者と契約し、介護保険サービスを利用することができます。(「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているサービス付き高齢者向け住宅の場合は、その施設から介護保険サービスを受けることになります。)
契約形態
「利用権方式」と「建物賃貸借方式」がありますが、主な契約形態は「建物賃貸借方式」です。
利用料の支払い方式
「前払い方式」と「月払い方式」がありますが、多くのサービス付き高齢者向け住宅は「月払い方式」を採用しています。なお、「前払い方式」が採用されている場合でも、前払金に対して必要な保全措置を講じることが義務付けられています。
6.特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)とは
略して「特養」とも呼ばれる特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は、介護が必要な高齢者のための生活施設です。基本的には、「地方公共団体」と「社会福祉法人」に限って設置運営が認められています。
公的な施設であるため、入所期間に制限はなく、終身利用が可能です。ただし、治療が必要となり長期入院を要する状態になった場合は、退所となることがあります。
入居条件
原則として要介護3以上の高齢者(65歳以上)が対象です。
ただし、40~64歳で特定疾病により要介護3以上と認定された方、やむをえない事情があり特例で入居が認められた要介護1~2の方は入居できることがあります。
特別養護老人ホームの種類
特別養護老人ホームには、大きく分けて「広域型特別養護老人ホーム」「地域密着型特別養護老人ホーム」「地域サポート型特別養護老人ホーム」の3つがあります。
・広域型特別養護老人ホーム最も一般的な、定員が30名以上の特別養護老人ホームです。居住地域に制限がなく、どの地域に住んでいても申し込むことができます。
・地域密着型特別養護老人ホーム定員が29名以下の小規模な特別養護老人ホームは、「地域密着型特別養護老人ホーム」と呼ばれます。
原則として、施設がある市区町村に住んでいる方が申し込めます。
対象地域で在宅介護を受けている高齢の方を対象に、24時間体制で見守りや生活援助、相談業務などを行う特別養護老人ホームです。
特別養護老人ホームの費用
介護保険施設のひとつである特別養護老人ホームは、民間企業などが運営する施設とは異なり、入居一時金などの初期費用はかかりません。
負担するのは入居後の月額利用料のみで、月額利用料には、施設サービス費、居住費、食費、日常生活費などが含まれています。
施設サービス費は、居室の種類(個室・多床室など)や施設の形態、職員の配置などによって異なります。
7.その他の高齢者向け住まい
・ケアハウス自立した日常生活を営むことに不安があると認められた方、ご家族による援助を受けることが困難な方などが、無料または低額な料金で入居できる低所得高齢者のための住まいです。
食事の提供、入浴などの準備、相談と援助、社会生活上の便宜の供与などが提供されます。
介護が必要になった場合は、外部の介護サービスの利用が可能です。
「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているケアハウスでは、要支援や要介護の高齢者に介護サービスを提供しています。 介護サービスが提供されない場合は、住み替えが必要になることもあります。
認知症の方を対象にした共同生活住居です。
少人数の認知症の方が、家庭的な雰囲気の中で、介護スタッフの専門的なケアを受けながら暮らすことができます。
提供されるサービスは、介護(入浴・排せつ・食事など)や日常生活上の支援、機能訓練などです。
要支援2または要介護1以上の認知症の方が利用できます。(※要支援2の方は「介護予防認知症対応型共同生活介護」の利用となります。)
介護が必要な方に「長期療養のための医療」と「日常生活上の介護」を一体的に提供する介護保険施設です。
「住まい」としての機能も重視されているため、プライバシーに配慮した環境が整っています。
診察室や処置室、機能訓練室のほかに、食堂、浴室、談話室、レクリエーションルームなども設けられています。
長期的な医療と介護のニーズを併せ持つ要介護1~5の方が対象です。
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8.高齢の方向け住まいを選ぶときのポイント

高齢の方向けの住まいは多様であり、特徴や入居条件、費用などがそれぞれ異なります。また、運営する事業者の考え方がサービス等に反映されているところもあります。そのため、ご自身の健康状態や希望、ライフスタイルに合った住まいを選ぶことが大切です。
見学や体験入居をしてみる
気になる住まいが見つかったら、入居を検討する前に何度か見学し、資料だけでは分からない雰囲気や職員の対応、サービスの細かい部分などをチェックしてみましょう。できるだけご家族と一緒に複数の住まいに見学に行き、可能であれば体験入居もしてみましょう。
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サービス提供体制を確認する
職員の配置状況や持っている資格、夜勤の勤務体制、介護・医療ニーズへの対応などを確認しましょう。
入居後に介護や医療が必要になった場合や、介護度が重くなった場合に、生活を継続することが可能かどうかも重要なポイントです。
書類をよく確認する
入居後や退去時のトラブルを防ぐために、「重要事項説明書」や入居契約書などの各種書類は十分に確認しましょう。
特に費用、退去要件は契約後のトラブルが多いため、注意が必要です。疑問点があったら説明を求め、理解、納得してから契約しましょう。
高齢者向けの住まいや介護などについて分からないこと、困ったことがある場合は、高齢者のための総合相談窓口である「地域包括支援センター」に相談してみましょう。最寄りの地域包括支援センターは、厚生労働省の 「全国の地域包括支援センターの一覧」で確認できます。
また、有料老人ホーム等に関しては「公益社団法人 全国有料老人ホーム協会」、サービス付き高齢者向け住宅に関しては「一般社団法人高齢者住宅協会」が、相談窓口を開設しています。
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頼れる介護の専門家「ケアマネジャー」の仕事内容とは?
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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