認知症の方と一緒に楽しむレクリエーション・プログラム

レクリエーションは認知症の方にとっても非常に重要で、QOL(生活の質)の向上などさまざまな効果が期待できます。今回は、認知症の種類や症状に合わせた対応についてお伝えし、認知症の方と一緒に楽しめるレクリエーション・プログラムもご紹介します。

認知症の種類と特徴

認知症の種類と特徴

認知症の種類と特徴

認知症には「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体(しょうたい)型認知症」「前頭側頭(ぜんとうそくとう)型認知症」などの種類があり、症状や特徴もそれぞれ異なります。
「中核症状」「BPSD(行動・心理症状)」は、どの認知症にも共通する症状です。
中核症状はほぼすべての認知症の方にあらわれますが、BPSD(行動・心理症状)の発症には個人差があります。


認知症の種類 特徴的な症状
アルツハイマー型認知症 意欲の低下
もの盗られ妄想
不安・焦燥        など
脳血管性認知症 片麻痺(かたまひ・へんまひ)
言語障害
感情失禁(感情がコントロールできなくなる)
夜間せん妄       など
レビー小体型認知症 幻視(存在しないものや人が見える)
小きざみ歩行
身体の動きが遅くなる
転倒しやすい
起立性低血圧
失神
不安・焦燥
症状に大きな波がある  など
前頭側頭型認知症 性格の変化
自己本位的な行動
反社会的行動
常同行動(常に同じ行動をする)
意欲の低下
無関心
影響を受けやすい
言語障害    など


認知症の症状 特徴的な症状
中核症状 記憶障害
見当識障害(時間や場所、季節、人などが分からなくなる)
理解・判断力の障害(話の内容が理解できないなど)
実行機能障害(計画を立てて行動できないなど)
失語(言葉の理解、言葉で表現することが難しくなるなど)
失行(日常的な一連の動作が行えなくなる)
失認(対象を正しく認知・認識できなくなる)
BPSD
(行動・心理症状)
徘徊(はいかい)
暴言・暴力
不潔行為
幻覚
妄想
不安 ・抑うつ
睡眠障害     など

レクリエーション援助のポイント

レクリエーション援助のポイント

認知症の方と一緒にレクリエーションを楽しむときは、認知症の種類や症状に合わせた対応が求められます。お一人おひとりの状態に適したプログラムを選び、常に目を配りながらサポートすることが大切です。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は認知症の中で最も多く、全体の半分以上を占めるといわれています。
アルツハイマー型認知症の特徴は、症状がゆるやかに進行することです。
感情は保たれていることが多いため、グループで交流を楽しめるプログラムなどがよいでしょう。意欲の低下がみられるときは、気分転換になる散策や音楽鑑賞などのイベントプログラムを検討してみましょう。

おすすめのレクリエーション
身体を動かすレクリエーション
少人数レクリエーション
園芸や家庭菜園
イベントプログラム
社交的な活動          など


<注意点>
・記憶力を競うようなプログラムは避ける
異食(食べ物以外のものを口にしてしまう行為)に気をつける
・言葉で伝えたことを覚えられない場合は、紙に書くなどの工夫をする
・同じことを何度も聞いたりしても、はじめて聞いたかのように耳を傾ける


脳血管性認知症

脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などによって起こる認知症です。症状が階段状に悪化するという特徴があります。
症状はさまざまですが、片麻痺(かたまひ・へんまひ)歩行障害、構音障害、嚥下(えんげ)困難などを伴なうことがあります。片麻痺の程度によっては、片手でも行えるプログラムを選びましょう。

おすすめのレクリエーション
身体を動かすレクリエーション
少人数レクリエーション
リハビリテーション活動
イベントプログラム  
動物との触れ合い        など


<注意点>
・構音障害のために言葉を上手に発音できない場合は、急かさずに聞きましょう。
・感情のコントロールが難しくなったときは、落ち着くまでいったん離れるなどの対応をとりましょう。

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レビー小体型認知症

レビー小体型認知症の特徴的な症状に幻視(存在しないものや人が見える)があります。
また、小きざみ歩行、筋肉がこわばる、身体の動きが遅くなるなどのパーキンソン症状があらわれることがあり、転倒しやすくなります。
ほかにも、起立性低血圧、失神、調子の良いときと悪いときの差が大きいなどの症状がありますので、これらの特徴を頭においてプログラムを考える必要があります。

おすすめのレクリエーション
創作活動
グループゲーム         など


<注意点>
転倒・転落を防ぐ対策を万全に行う
急な立ち上がり、ふらつき、失神に気をつける
幻視に対しては、否定も肯定もしない


前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症の特徴的な症状は性格の変化です。我が道を行く行動をとるようになり、万引きなどの反社会的行動をとることもあります。
また、同じ行動をくり返す常同行動も特徴的で、同じ時間に同じ場所を歩き続ける周徊(常同的周遊)がみられることがあります。
記憶力は比較的保たれていますので、レクリエーションは同じ場所でなじみのスタッフが対応すると安心していただけるでしょう。 周りのことや自分に対して無関心になりますが、興味があることには熱心に取り組むため、ご本人の好きな趣味の活動などが向いています。得意なことを見つけ、それを日課として毎日やってもらうのもよいでしょう。個別対応が必要な方でも、配慮によってグループ活動が可能になることもあります。

おすすめのレクリエーション
趣味活動
身体を動かすレクリエーション
少人数レクリエーション      など


<注意点>
刺激の少ない静かな環境を整える
周囲の環境に影響されやすいため、音や映像などに気をつける
・道具などは目に入りやすい場所に置く
・強い言葉で指示したり、無理に誘ったりすることは避ける
・手招きをして誘導する、ものを直接見せるなど非言語的コミュニケーションを活用する

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認知症の方と楽しむプログラム

認知症の方と楽しむプログラム

基本プログラム

指折り
①両手をパーにして出します。
②スタッフと一緒に「1、2、3、4、5」と声を出しながら、両手の親指から順番に曲げていきます。
③グーになったら「6、7、8、9、10」と声を出しながら、両手の小指から順番に開いていきます。

目的 脳に刺激を与える
手指を識別する
手指の運動
効果ADL(日常生活動作)の維持・向上
人数 1人から
場所 室内
観察のポイント 元気な声を出しているか
楽しそうにしているか
スタッフの言葉を理解できているか
指をしっかり曲げ伸ばしできているか

グループプログラム

後出しジャンケン
①スタッフが「私の出すジャンケンと同じジャンケンを出してください。」と説明します。
②スタッフが「ジャンケン・グー」と言いながら、両手でわかりやすくグーを出します。
③参加者は声を出しながら、同じジャンケンを出します。

目的 脳に刺激を与える
上肢や手指の運動
効果 仲間と過ごす楽しさを感じてもらう
人数 2人から
場所 室内
観察のポイント 楽しそうにしているか
指示通りにジャンケンを出せたか

イベントプログラム

誕生日会
① 誕生日の飾り付けをします。
② 誕生日の方以外の参加者に集まっていただきます。
③ 誕生日の方に入場してもらい、みんなで拍手をしてお祝いします。
④ 歌やゲーム、バースデーケーキなどを楽しみます。

目的 誕生日をみんなでお祝いする
飾り付けの作業を行う
歌やゲームなどを楽しむ
バースデーケーキを味わう
効果 楽しい雰囲気を感じてもらう
参加者の連帯感を高める
自尊心を高める
人数 何人でも可能
場所 広間、食堂、庭など
観察のポイント 楽しそうにしているか
飽きずに参加できたか


レクリエーションを行うときは、言葉遣いなど幼児や児童のように接しないようにすることが大切です。また、心地よく過ごせる安全な環境をつくり、スタッフも一緒に楽しむようにしましょう。
認知症の方が参加される場合は、シンプルで分かりやすいプログラムを選びます。ご本人が参加したがらないときは無理にすすめず、楽しい雰囲気を感じていただくだけでもよいでしょう。

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<参考文献>
余暇問題研究所『認知症の人のレクリエーション』中央法規出版,2012.

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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