介護保険施設に入所したときやショートステイを利用したとき、施設サービス費の利用者負担(1~3割)のほかに、食費や居住費(滞在費)などがかかります。食費と居住費は保険給付の対象外となっているため、費用について不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、介護保険施設に入所する方やショートステイを利用する方の食費・居住費の助成制度「特定入所者介護サービス費」について解説します。
「特定入所者介護サービス費」とは

介護保険施設サービスやショートステイを利用する場合、食費と居住費(滞在費)は原則として全額自己負担となります。
しかし、所得や資産等が一定以下の方の食費・居住費については負担限度額が設けられており、これを超えた分は「特定入所者介護サービス費」として介護保険から支給されます。
この負担限度額は、所得段階や施設の種類、部屋のタイプによって異なるのが特徴です。
なお、2021(令和3)年8月から、介護保険施設入所者・ショートステイ利用者の食費(日額)の負担限度額が変わりました。
※ 居住費(滞在費)の負担限度額に変更はありません。また、生活保護を受給している方や老齢福祉年金を受給している方など(第1段階)の負担限度額は、食費・居住費ともに変更ありません。
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対象サービスと対象要件

対象となるサービス
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
・介護老人保健施設(老健)
・介護療養型医療施設
・介護医療院
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(地域密着型特別養護老人ホーム)
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・短期入所療養介護(医療型ショートステイ)
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対象となる方
次の要件をすべて満たす方が対象となります。
・介護認定を受けている
・世帯全員(別世帯の配偶者を含む)が住民税非課税である
・預貯金等が下表の資産要件を満たしている
負担段階 | 所得状況 | 試算案件 |
第1段階 | 生活保護等を受給している方 | 単身 1,000万円以下 夫婦 2,000万円以下 |
第2段階 | 世帯全員が住民税非課税で 年金収入等(※)が80万円以下の方 |
単身 650万円以下 夫婦 1,650万円以下 |
第3段階① | 世帯全員が住民税非課税で 年金収入等が 80万円超120万円以下の方 |
単身 550万円以下 夫婦 1,550万円以下 |
第3段階② | 世帯全員が住民税非課税で 年金収入等が 120万円超の方 |
単身 500万円以下 夫婦 1,500万円以下 |
※ 年金収入等=公的年金等収入金額(非課税年金を含む)+その他の合計所得金額
預貯金等に含まれるもの
預貯金等に含まれるもの | 確認方法 |
預貯金(普通・定期) | 通帳の写し (インターネットバンクであれば口座残高ページの写し) |
有価証券 (株式・国債・地方債・社債など) |
証券会社や銀行の口座残高の写し (ウェブサイトの写しも可) |
金・銀(積立購入を含む)など、 購入先の口座残高によって時価評価額が容易に把握できる貴金属 |
購入先の口座残高の写し (ウェブサイトの写しも可) |
投資信託 | 銀行、信託銀行、証券会社等の口座残高の写し (ウェブサイトの写しも可) |
タンス預金(現金) | 自己申告 |
※ 預貯金等に含まれないもの
生命保険・自動車・腕時計・宝石など時価評価額の把握が難しい貴金属・絵画・骨董品・家財など
1日当たりの負担限度額
負担段階 | 居住費(滞在費) | 食費 | ||||
ユニット型個室 | ユニット型個室的多床室 | 従来型個室(特養等) | 従来型個室(老健・療養等) | 多床室 | ||
第1段階 | 820円 | 490円 | 320円 | 490円 | 0円 | 300円 |
第1段階 | 820円 | 490円 | 420円 | 490円 | 370円 | 390円 (600円) |
第3段階① | 1,310円 | 1,310円 | 820円 | 1,310円 | 370円 | 650円 (1,000円) |
第3段階② | 1,310円 | 1,310円 | 820円 | 1,310円 | 370円 | 1,360円 (1,300円) |
※ 食費における( )内の金額は、ショートステイ(短期入所生活介護または短期入所療養介護)を利用した場合の額です。
「特定入所者介護サービス費」の申請方法

「特定入所者介護サービス費」の給付を受けるためには、お住まいの市区町村に申請し、負担限度額認定を受ける必要があります。
対象となる方は、介護保険負担限度額認定申請書に必要事項を記入し、市区町村の窓口に申請します。
申請には、印鑑、同意書、介護保険被保険者証、預貯金・有価証券等の通帳などの写し、申請者の本人確認書類、被保険者のマイナンバーが確認できるものなどが必要です。
申請が承認されると、介護保険負担限度額認定証が交付されます。
利用するサービス事業者に「介護保険負担限度額認定証」を提示することで、食費・居住費(滞在費)の負担が軽減されます。
※ 自動更新ではないため、有効期間終了前に更新手続きをする必要があります。
※ 不正に受給した場合には、それまでに支給された額および最大2倍の加算金の納付を求められることがあります。
▼関連リンク:
厚生労働省「介護保険施設における負担限度額が変わります」
介護保険制度における食費や住居費の負担が重い方は、「食費・居住費の特例減額措置」や「社会福祉法人等による利用者負担の軽減制度」の対象となる場合があります。まずはお住まいの市区町村に相談してみましょう。
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家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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