認知症はご高齢者の病気と思われがちですが、65歳未満の方も発症する可能性のある病気です。65歳未満で発症した認知症を「若年性認知症」といいます。今回は、若年性認知症の特徴や支援体制などについて解説します。
若年性認知症とは

若年性認知症とは、65歳未満で発症する認知症(脳血管性認知症・アルツハイマー病・前頭側頭型認知症・レビー小体型認知症など)の総称です。
2020年(令和2年)3月に厚生労働省が発表した調査結果によると、若年性認知症の人数は全国で約35,700人で、18~64 歳人口における有病率は10 万人当たり50.9 人と推計されています。また、発症年齢は平均で54.4歳でした。
若年性認知症は、医学的にはご高齢者の認知症と大きな違いはありません。しかし、ご本人や配偶者がいわゆる「現役世代」であるため、ご本人だけでなく家庭生活や社会生活への影響も大きいという特徴があります。
ご高齢者の認知症との違い

原因疾患
原因となる疾患は、アルツハイマー型認知症が52.6 %と最も多く、血管性認知症が17.1%、前頭側頭型認知症が9.4%でした。

男性に多い
女性が多いご高齢者の認知症とは異なり、若年性認知症は男性が女性より少し多くなっています。
早期発見が難しい(医療機関の受診が遅れる)
認知機能の低下のために仕事でのミスが重なったり、家事が上手くできなくなったりしても、認知症とは思い至らず受診が遅れることがあります。
また、初期症状が認知症特有のものではないことも、若年性認知症の特徴で、うつ状態や更年期障害など他の病気だと思って受診し、診断が遅れてしまう場合もあります。
経済的な問題が大きい
働き盛りの方が発症することが多いため、休職や退職によって経済的困難な状況に陥る可能性があります。また、配偶者も介護のために仕事を減らすなどして、家計が苦しくなる場合があります。
配偶者の負担が増える
ご高齢者の場合は、子ども世代が介護を担うことも多くあります。しかし、若年性認知症の場合は子どもがまだ若く、介護負担は配偶者に集中しがちです。さらに仕事や家事、育児、自分や配偶者の親の介護が重なってしまう場合もあります。
家庭内での課題が多い
親が若年性認知症になると子どもへの心理的影響が大きく、進学・就職・結婚など人生の節目を迎える時期にある子どもの人生設計が変わる場合もあります。また、高齢の親が若年性認知症の子どもの介護をするというケースもあります。
若年性認知症の方への支援

若年性認知症支援コーディネーター
「若年性認知症支援コーディネーター」とは、若年性認知症の方の自立支援に関わる関係者のネットワークの調整役を担う人のことです。各都道府県や指定都市に配置されています。
若年性認知症の方やそのご家族などからの相談に応じ、さまざまな支援を行っています。
「若年性認知症支援コーディネーター」の主な業務
- ①相談窓口
- ・相談内容の確認と整理
- ・適切な専門医療へのアクセスと継続の支援
- ・利用できる制度・サービスの情報提供
- ・関係機関との連絡調整
- ・本人・家族が交流できる居場所づくり
- ②市町村や関係機関との連携体制の構築
- ③地域や関係機関に対する若年性認知症にかかる正しい知識の普及
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介護保険
認知症と診断された場合は、65歳以下であっても40歳以上であれば特定疾病として介護保険の申請ができます。
介護保険対象者
・40歳〜65歳未満の医療保険加入者(第2号被保険者)
・65歳以上の方(第1号被保険者)
若年性認知症の方は、ご高齢者が利用するサービスになじめないことがありますが、若年性認知症に対応したデイサービス(通所介護)やデイケア(通所リハビリテーション)を利用することも可能です。
相談窓口
お住まいの市区町村の介護保険課・地域包括支援センターなど
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介護保険における「特定疾病」とは
自立支援医療(精神通院医療)
通院による継続した治療が必要な場合に、通院医療費の自己負担分の一部が軽減される制度です。 その他にも、医療負担を軽減する制度として「高額療養費制度」や「所得税・住民税の医療費控除」などがあります。
相談窓口
お住まいの市区町村の障害福祉担当課・通院中の医療機関
精神障害者保健福祉手帳・身体障害者手帳
精神障害者保健福祉手帳」は、認知症などの精神疾患があり、日常生活に支障をきたす場合に申請できます。(身体症状がある場合は「身体障害者手帳」に該当する場合があります)
相談窓口
お住まいの市区町村の障害福祉担当課
障害年金
公的年金(国民年金・厚生年金など)の受給資格があり、障害者となった場合は障害年金の申請ができます。
相談窓口
お住まいの市区町村の年金相談窓口(国民年金)
年金事務所・共済組合(厚生年金)
成年後見制度
成年後見制度は、認知症などの理由で判断能力が十分ではない方を法律的に支援する制度です。
相談窓口
お住まいの地域包括支援センター・日本司法支援センター(法テラス)・弁護士会・司法書士会・家庭裁判所など
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その他の支援
傷病手当金・国民年金保険料の免除・就労継続支援事業所・日常生活自立支援事業など
ご高齢者の認知症と同じように、若年性認知症も早期発見・診断がとても重要です。また、若年性認知症と診断された場合は、初期の段階から適切な治療や支援を受けることが大切になります。さまざまな相談場所がありますので、まずは身近な相談窓口に相談し、不安や負担をできるだけ減らしていきましょう。
主な相談窓口
・医療機関のソーシャルワーカー
・お住まいの地域包括支援センター
・お住まいの市区町村の窓口
・若年性認知症支援コーディネーター
・若年性認知症コールセンター http://y-ninchisyotel.net/ 電話 0800-100-2707(無料)
・公益社団法人 認知症の人と家族の会 http://www.alzheimer.or.jp/
・認知症110番(公益財団法人 認知症予防財団)電話 0120-654874(無料)
<参考・引用>
厚生労働省
厚生労働省ホームページ「認知症施策関連ガイドライン(手引き等)、取組事例」
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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