「ケアラー」とは、介護や看病、療育、世話、気づかいなどが必要な家族、近親者、友人、知人等を無償でケアする方のことで、そのうち18歳未満の方を「ヤングケアラー」といいます。今回は、最近少しずつ知られるようになってきたヤングケアラーについて解説します。
ヤングケアラーとは

ヤングケアラーとは、本来大人が担うと想定されているような家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを日常的に行っている18歳未満の子どものことです。
ケアを必要としているご家族は、主に障がいや病気のある親や祖父母ですが、きょうだいや他の親族の場合もあります。
ヤングケアラーが行っているケアの内容には、以下のようなものがあります。
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・買い物・料理・掃除・洗濯などの家事
・目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかい
・障がいや病気のある家族の身の回りの世話
・障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助
・がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病
・幼いきょうだいの世話
・障がいや病気のある兄弟・姉妹の世話や見守り
・家計を支えるために労働
・アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族の対応
・家族のための通訳
ヤングケアラーは、子どもでありながら重い責任を負い、ケアが必要なご家族を支えています。
ケアを通して「自分が役に立っている」「家族との結びつきが強まった」と感じることもありますが、過度な負担によって心身の健康や人間関係、学業、進路などに影響が出ることが懸念されています。
しかし、子ども自身がヤングケアラーであると認識していないケースも少なくありません。また、家庭内のデリケートな問題であることから、周囲に知られたくない子どももいます。
ヤングケアラーの現状

2020(令和2)年度に厚生労働省が行った調査では、中学2年生の5.7%、全日制高校2年生の4.1%、定時制高校2年生相当の8.5%、通信制高校生の11.0%が「自分が世話をしている家族がいる」と回答しました。世話をしている頻度については、「ほぼ毎日」が半数近くを占めています。
また、2021(令和3)年度に小学6年生を対象に行った調査では、6.5%が「家族の世話をしている」と答えました。世話をしている頻度については、「ほぼ毎日」が 52.9%と最も高くなっています。
ヤングケアラーが抱える問題
ヤングケアラーは、ケアを担うことでこのような影響が出る可能性があります。
健康への影響 |
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・睡眠が充分に取れない ・心や体の疲れが取れない ・ストレスを感じる ・ケアについて話せる人がいなくて孤独を感じる |
友人関係への影響 |
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・友人と遊ぶことができない ・友人等とコミュニケーションを取れる時間が少ない |
学業への影響 |
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・勉強する時間が十分に取れない ・遅刻や早退、欠席が増える ・授業中に寝てしまうことが多い ・宿題ができていないことが多い ・持ち物の忘れ物が多い ・提出物を出すのが遅れることが多い |
進路への影響 |
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・自分にできると思う仕事の範囲を狭めて考えてしまう ・自分のやってきたことをアピールできない |
ヤングケアラーに関する相談窓口

児童相談所相談専用ダイヤル
・フリーダイヤル 0120-189-783(いちはやく・おなやみを)
・受付時間: 24時間(年中無休)
・参考サイト:児童相談所相談専用ダイヤルの無料化について
児童相談所は、都道府県や指定都市等が設置する機関です。子どもの福祉に関するさまざまな相談を、24時間・年中無休・通話料無料で受け付けています。携帯電話からの電話もつながります。
24時間子供SOSダイヤル(文部科学省)
・フリーダイヤル 0120-0-78310(なやみいおう)
・受付時間: 24時間(年中無休)
・参考サイト:「24時間子供SOSダイヤル」について
都道府県や指定都市教育委員会などによって運営されている全国共通のダイヤルです。
子どもや保護者などからの相談を、24時間・年中無休・通話料無料で受け付けています。
子どもの人権110番(法務省)
・フリーダイヤル 0120-007-110
・受付時間: 平日 8:30 ~ 17:15 (土・日・祝日・年末年始は休み)
・IP電話の場合はこちら→ 法務局電話番号一覧(通話料有料)
・参考サイト:「子どもの人権110番」
子どもの人権問題に関する専用相談電話です。通話料無料の電話相談のほか、インターネットでも相談を受け付けています。
日本精神保健福祉士協会「子どもと家族の相談窓口」
・相談専用Eメール: kodomotokazoku@jamhsw.or.jp
・受付時間: 24時間
・参考サイト:子どもと家族の相談窓口(Eメール対応)
このほかにも、高齢の方の介護については地域包括支援センター、障がいのある方の介護等については基幹相談支援センターなど、さまざまな分野の相談窓口があります。また、ヤングケアラー当事者・元当事者同士の交流会や家族会もあります。子どもたちが自ら相談できず孤立してしまうケースがあるため、周りの大人が早めに気づいて必要な支援につなげていくことも重要です。
▼関連リンク:
厚生労働省特設ホームページ「子どもが子どもでいられる街に。~みんなでヤングケアラーを支える社会を目指して~」
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家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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