介護保険における「特定疾病」とは

介護保険を利用できるのは原則65歳以上の方ですが、介護保険における「特定疾病」が原因で介護が必要になった場合は、40歳以上65歳未満の方でも要介護(要支援)認定の申請をすることができます。
今回は、介護保険の対象となる16種類の「特定疾病」について解説します。

介護保険における16種類の「特定疾病」とは

介護保険における16種類の「特定疾病」とは

介護保険の対象となる特定疾病は、「心身の病的加齢現象との医学的関係があると考えられる疾病で、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因し、要介護状態の原因である心身の障害を生じさせると認められる疾病」と定義されています。

介護保険における16種類の「特定疾病」の範囲

  • ① がん(がん末期)
    ② 関節リウマチ
    ③ 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
    ④ 後縦靱帯骨化症
    ⑤ 骨折を伴う骨粗鬆症
    ⑥ 初老期における認知症(アルツハイマー病、脳血管性認知症など)
    ⑦ 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)
    ⑧ 脊髄小脳変性症
    ⑨ 脊柱管狭窄症
    ⑩ 早老症(ウェルナー症候群など)
    ⑪ 多系統萎縮症
    ⑫ 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
    ⑬ 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞など)
    ⑭ 閉塞性動脈硬化症
    ⑮ 慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎など)
    ⑯ 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

介護保険における16種類の「特定疾病」の症状

介護保険における16種類の「特定疾病」の症状

① がん(がん末期)

医師が一般に認められている医学的知見に基づき、回復の見込みがない状態(おおむね余命6月間程度)に至ったと判断したものに限られます。

② 関節リウマチ

膠原病の症状のひとつで、関節の炎症が持続する病気です。

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③ 筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)(ALS)

手足・のどなどの筋肉や呼吸に必要な筋肉がやせて、力がなくなっていく病気です。

④ 後縦靱帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)

背骨の中を縦に走る「後縦靱帯」が骨化することにより、脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄または神経根の圧迫障害をきたす病気です。

⑤ 骨折を伴う骨粗鬆症(こつそしょうしょう)

骨量が減って骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。

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⑥ 初老期における認知症

記憶・思考などの能力が脳の病気や障害のために低下していき、記憶障害や失語、失行、失認、実行機能障害などの症状が現れます。アルツハイマー病、脳血管性認知症などの種類があります。

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⑦ 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)

次の3種類の疾病が「パーキンソン病関連疾患」と呼ばれています。

・進行性核上性麻痺(しんこうせいかくじょうせいまひ)
「転びやすい」「しゃべりにくい」「飲み込みにくい」などの症状がみられます。

・大脳皮質基底核変性症(だいのうひしつきていかくへんせいしょう)
「筋固縮」や「歩行障害」などのパーキンソン症状と、「手が思うように使えない」「動作がぎこちない」などの大脳皮質症状が同時にみられる病気です。

・パーキンソン病
「振戦」「筋固縮」「寡動・無動」「姿勢反射障害」などが代表的な症状です。

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⑧ 脊髄小脳変性症(せきずいしょうのうへんせいしょう)

運動失調症状をきたす変性による病気の総称です。「歩行時のふらつき」「手の震え」「ろれつが回らない」などの症状がみられます。

⑨ 脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)

脊柱管が狭くなる病気です。神経が圧迫され、「四肢・躯幹の痛み」「しびれ」「筋力低下」「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」などの症状が現れます。

⑩ 早老症

早く老いる病気で、ウェルナー症候群、プロジェリア症候群、コケイン症候群に該当するものをいいます。ウェルナー症候群では、主に「白髪」「脱毛」「白内障」「皮膚の変化」などの症状がみられます。

⑪ 多系統萎縮症(たけいとういしゅくしょう)

次の3つのタイプに分かれます。

・オリーブ橋小脳萎縮症(おりーぶきょうしょうのういしゅくしょう)
早期に「起立・歩行のふらつき」などの小脳症状で発症し、進行するとパーキンソニズムや自律神経症状を伴なうことがあります。

・線条体黒質変性症(せんじょうたいこくしつへんせいしょう)
パーキンソン病と似た症状で発症し、経過とともに「立ちくらみ」や「排尿障害」などの自律神経症候や運動失調が加わってきます。

・シャイ・ドレーガー症候群
「立ちくらみ」「尿失禁」など自律神経障害の症状が現れ、続いて小脳障害やパーキンソン症状が加わってきます。

⑫ 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症

いずれも糖尿病の合併症で、「糖尿病の三大合併症」といわれています。

・糖尿病性神経障害
血糖値が高い状態が続くことにより神経の働きが障害され、感覚の異常などさまざまな症状が現れます。

・糖尿病性腎症
血糖値が高い状態が続くことにより腎臓の機能が低下し、蛋白尿や微量アルブミン尿が認められるようになります。

・糖尿病性網膜症
糖尿病が原因で眼の中にある網膜が障害を受け、視力低下などの症状が現れます。

⑬ 脳血管疾患

脳出血、脳梗塞、くも膜下出血などがあります。

⑭ 閉塞性動脈硬化症

動脈に動脈硬化が起こり、閉塞がみられ、歩行障害などの症状が起こります。

⑮ 慢性閉塞性肺疾患

慢性気管支炎あるいは肺気腫による気流閉塞を特徴とする病気です。肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息などがあります。

⑯ 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

変形性関節症は、さまざまな原因によって関節が変形する病気です。関節の痛みや腫れ、歩行困難などの症状がみられます。



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ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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