「8020(ハチ・マル・ニイ・マル)運動」と「オーラルフレイル」

ご自身の歯をできるだけ残し、口腔機能を維持することは、お口や全身の健康だけでなく、QOL(生活の質)の向上につながります。今回は、「80歳になっても自分の歯を20本以上保持する」という「8020運動」と、健康長寿のために知っておきたい「オーラルフレイル」について解説します。

8020(ハチ・マル・ニイ・マル)運動とは

8020(ハチ・マル・ニイ・マル)運動とは

8020(ハチ・マル・ニイ・マル)運動とは、「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動のことです。

この運動は、1989年に厚生省(現在の厚生労働省)と日本歯科医師会が提唱したことからスタートしました。
「80(ハチ・マル)」という数字は男女を合わせた平均寿命のことで、「生涯」を意味しています。また「20(ニイ・マル)」は、自分の歯で食べるために必要な歯の本数を意味しています。
歯が約20本残っていれば、ほとんどの食べ物を咀嚼(そしゃく = 噛む)することができ、食生活にほぼ満足できるといわれています。

8020運動が始まった当初は達成率が7%程度でしたが、2011年には37%になり、2016年には51.2%に伸びました。(歯科疾患実態調査)
しかし、高齢者全体が増え続けているため、「8020」に達していない高齢者も増加傾向にあります。


歯を失う主な原因

歯を失う原因として最も多いのが、生活習慣病のひとつ「歯周病」です。
比較的若いうちは「むし歯」が原因となることが多いですが、中高年になると「歯周病」で歯を失うことが多くなります。
歯の本数が減ると、残っている歯にかかる負担が大きくなり、さらに歯が失われやすくなってしまいます。

歯が抜けるのは「歳(老化)のせいだからしかたがない」とお考えの方も多いようですが、歯周病の多くは適切なケアによって予防することができます。
自分の歯をできるだけ保つためには、毎日のお手入れで歯周病を予防し、歯周病のサインに気づいたら早めに治療することが大切です。

オーラルフレイルとは

オーラルフレイルとは

「フレイル」は、「虚弱」を意味する「Frailty(フレイルティ)」の日本語訳です。
日本老年医学会が提唱した概念で、「加齢とともに心身の活力が低下し、生活機能障害や要介護状態などの危険性が高くなった状態」のことをいいます。

日本歯科医師会は、歯の本数に主眼を置いた「8020運動」などに加えて、口腔機能に注目した「オーラルフレイル」という新しい考え方を提案しました。
「オーラルフレイル」は、「Oral(口腔の)」と「Frailty」を合わせた造語で、「口のフレイル」という意味です。

お口の機能のフレイル(虚弱)は、見逃しやすいささいな口腔機能の低下から始まります。
お口に関するささいな衰えをそのまま放っておくと、フレイル(虚弱)やサルコペニア、介護リスク、死亡リスクが高まるといわれています。


オーラルフレイルのサイン

  • ・食べこぼす
    ・むせることがある
    ・口が乾燥する
    ・口臭が気になる
    ・滑舌(かつぜつ)が悪い、舌が回らない
    ・食欲がない
    ・硬いものが噛みにくくなった
    ・やわらかいものばかり食べる
    ・食事のバランスが悪くなった  など

しかし「オーラルフレイル」は、早めに気づいて適切に対応すれば改善が可能な状態です。
そのため、歯の本数を維持する「8020運動」のみではなく、「オーラルフレイル対策」で口腔機能を維持・改善することも大切になります。


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ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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