ご高齢者の病気や転倒などの事故は、要介護や寝たきりにつながることがあります。いつまでも元気で暮らし続けるためには「健康寿命」を延ばすことが大切です。今回は、介護や寝たきりの予防となる運動習慣や食事についてみていきましょう。
介護が必要となる主な原因は?
厚生労働省の簡易生命表によると、2019(令和元)年の日本人の平均寿命は、女性が87.45歳、男性81.41歳で、いずれも過去最高を更新しています。
一方、「健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)」は、2016(平成28)年時点で女性が74.79歳、男性が72.14歳でした。
介護が必要となった主な原因をみると、要介護者では「認知症」が 24.3%と最も多く、次いで「脳血管疾患(脳卒中)」が 19.2%、「骨折・転倒」が 12.0%となっています。(2019年 国民生活基礎調査)
では、要介護になるリスクを減らして「健康寿命」を延ばすために、どのようなことを心がければよいのでしょうか。
寝たきりを予防するための習慣をつけよう
運動
筋肉には「体を動かす」「エネルギーをつくる」といった働き以外にも、「脳の働きに影響を与える」「ホルモンを分泌する」などの働きももっていることがわかってきました。
筋肉は、何もしなければ、20代をピークに減少していきます。ある日突然急に減るわけではないのでその衰えに気づきにくいのですが、何もしなければ、少しずつですが着実に減り続けていきます。
しかし、筋肉は、70歳や80歳になっても増やすことができる運動器官です。
筋力アップや骨の強化、また認知症予防に、手軽にできて習慣化しやすい運動の一例をご紹介します。
○片足立ち
・背筋をまっすぐに伸ばしたまま、両足をそろえて立ちます。
・床から5cmほど浮かせて片足を上げます。
・左右それぞれ1分間ずつを1セットで、1日3セット行います。
転倒しないようにつかまるものがある場所で行います。支えが必要な人は、机や手すりに手をついて行います。
○スクワット
・肩幅より少し広めに両足を広げ、つま先を30度くらいに開きます。
・息を吐きながらゆっくりお尻を下げ、吸いながらゆっくりと元に戻します。
・1セット5~6回で、1日3セット行います。
転倒しないようにつかまるものがある場所で行います。支えが必要な人は、机や手すりに手をついて行います。
○ひとりジャンケン
利き手でグー・チョキ・パーと順に出し、逆の手が必ず負けるようにしてじゃんけんをします。1日5分程度行います。慣れたら手を逆にしても行います。
○ウォーキングやジョギング
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、基礎代謝量の維持とともに、リフレッシュや血行改善などの効果も期待できます。
食事
健康を保つためには 栄養バランスのとれた食事をとることも大切です。筋肉や骨を強くするために必要な栄養素を見てみましょう。
○カルシウム
骨量の減少、骨粗しょう症を予防するには、まず、カルシウムを十分に補うことが必要です。カルシウムを多く含む食品の代表は、牛乳、乳製品(ヨーグルト、チーズ)と小魚類(ししゃも、ちりめんじゃこ、しらす干し、いわしなど)です。
○ビタミンD、ビタミンK
ビタミンDは、カルシウムの吸収率を高めます。魚介類(しらす干し、サンマ、サケなど)や、きのこ類(マイタケ、干ししいたけ、きくらげなど)に多く含まれます。
ビタミンKは、カルシウムが骨に沈着するのを促し、カルシウムが骨から流れてしまうのを押さえる働きがあります。野菜類(ホウレンソウ、小松菜、ブロッコリーなど)や納豆などに多く含まれます。
○ビタミンC
骨の主成分はコラーゲンとカルシウムです。ビタミンCが不足するとコラーゲンも不足し、骨が正しく形成されません。ほとんどの野菜と果物に含まれています。
○たんぱく質
たんぱく質は、筋肉の元になる栄養素です。基礎代謝を上げる効果もあります。肉類、魚介類、卵類、大豆製品(納豆、豆腐など)、乳製品(ヨーグルト、チーズなど)に多く含まれています。
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筋肉をつけたり、食事に気をつけたりすることが、介護予防につながります。いつまでも自分らしく暮らせる生活を目指して、小さなことからでもぜひ始めましょう。
社会福祉士資格保有のライター。「介護」を中心とした福祉分野で、執筆活動を続けている。
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