ご高齢者を災害から守るために!避難するときの注意点と心身のケア

地震や台風、豪雨などの災害が起きた時に自力で避難することが難しいご高齢者は、日頃から災害に対する心構えや備えをしておくことが重要です。今回は、ご高齢者が災害時に避難するときの注意点と心身のケアについてお伝えします。

災害に対する備え

災害に対する備え

もしものときに備える

市区町村が作成している「ハザードマップ」や「地域防災計画」を活用して、危険箇所や避難場所を事前に確認しておきましょう。お住まいの地域の危険な場所、避難経路などをあらかじめ把握しておくことで、より早く安全に避難することができます。
また、室内の安全対策、非常持ち出し品の点検などを行い、ご家族との安否確認の方法を話し合っておきましょう。
かかりつけの医療機関の連絡先、服用している薬の内容などは「災害時緊急連絡カード」に記入し、常に携帯することをおすすめします。


避難行動要支援者名簿への登録

自力での避難が困難な方は、「避難行動要支援者名簿」に申請・登録しておく方法があります。避難行動要支援者名簿とは、災害対策基本法により各自治体に作成が義務づけられている名簿のことです。
この名簿に登録しておくと、支援者(民生委員・消防機関・自主防災組織等)が日常の見守りや避難訓練などを実施し、災害時には避難連絡や避難誘導などの支援を行います。(支援者や支援内容は市区町村によって異なります。)

支援者(避難支援等関係者)には災害対策基本法により守秘義務が課せられているため、提供した個人情報は厳重に管理されます。名簿への登録、情報提供への同意を希望する方は、お住まいの市区町村にお問い合わせください。


地域とのつながり

ご高齢者の一人暮らしやご夫婦のみの世帯が増え続けるなか、地域とのつながりはますます重要になってきます。特に災害のときは、ご近所同士の助け合いが欠かせません。
ご高齢者や障がいのある方は、災害時に意思を思うように伝えられないことがあります。日頃からご近所の方と交流を図り、災害のときに対処してほしいことを事前に伝えておきましょう。また、いざというときに備えて、できるだけ地域の防災訓練に参加しておくことも大切です。

「ご高齢者に必要な日頃の備え」「避難場所でのご高齢者のケア」については、こちらの記事をご覧ください。

日頃から意識しておきたい!ご高齢者の災害への備えとケア

避難するときの注意点

避難するときの注意点

避難するタイミング

避難が必要になった場合は、お住まいの自治体から避難情報が発令されます。
お知らせ方法は、テレビやラジオ、ウェブサイト、市町村防災行政無線、緊急速報メール、SNS、広報車・消防団による広報、電話・FAXなど、自治体によってさまざまです。

避難情報は、5 段階の「警戒レベル」で伝えられます。
ご高齢者や障がいのある方、その支援者の方など、避難に時間がかかる方は、警戒レベル3「高齢者等避難」が発令されたら、危険な場所から安全な場所へ避難しましょう。
【2021(令和3)年4月に災害対策基本法が改正され、5月から新たな避難情報が用いられることになりました。】


避難情報

出典:内閣府「新たな避難情報に関するポスター・チラシ」


避難する場所

緊急時の避難先は、市町村が指定する当該災害に対応した「指定緊急避難場所」や、安全な場所にある親戚・知人宅などが考えられます。「指定緊急避難場所」は、災害の種類ごとに安全な場所が指定されています。
あらかじめどこに避難するかを相談しておきましょう。

ただし、立退き避難がかえって危険な場合は、「近隣の安全な場所」や「屋内のより安全な場所(屋内安全確保)」へ移動します。 たとえば大雨等の場合は、最上階が浸水しない高い建物や川沿いでない建物など、より安全と思われる場所へ避難しましょう。屋内で待機する場合は、上層階の部屋、山や崖からできるだけ離れた部屋など、より安全と思われる部屋に移動します。

また、災害時には必要に応じて「福祉避難所(二次避難所)」が開設されます。福祉避難所とは、ご高齢者や障がいのある方など特別な配慮を必要とする方を対象とした避難所です。
ただし、受け入れや運営体制が整った後に順次開設される二次的な避難所であるため、災害発生の当初から利用することができません。災害が発生した直後は、まず指定の避難場所へ避難しましょう。

心と身体のケア

心と身体のケア

心のケア

ご高齢者は環境変化が大きな負担になりやすく、心が深く傷ついてしまうことがあるため特に配慮が必要です。
生活環境の変化によるストレスで、さまざまな症状が起こることを「リロケーションダメージ」といいますが、ご高齢者が突然の災害で避難所生活を強いられたときも同じような症状がみられることがあります。

特徴的な心の反応

  • ・不安や混乱
    ・不穏や興奮
    ・不眠
    ・うつ症状    など

また、認知症の方はせん妄状態になったり、症状が悪化したりすることがあります。ご高齢者は症状がはっきりと現れない場合もあるため、周囲の方は小さな変化に気をつけましょう。

<対処のしかた>

孤立しがちなご高齢者は、一人にならないようにすることが大切です。正確な情報を伝え、救援や支援サービスを確実に受けられるようにします。また、できるだけ環境を整え、他人との交流を保ち、安心感につなげていきましょう。
ただし、支援を拒む場合などは、ご本人の気持ちを尊重し、尊厳を傷つけないようさりげなく寄り添います。ゆっくりとお話を聴き、ご本人ができること・得意なことがあればお願いして「自分は役に立っている」と感じていただくことも重要です。



身体のケア

避難所での慣れない環境や食事、運動不足などは、ご高齢者の身体にさまざまな影響を及ぼします。また、持病のある方は症状が悪化しやすくなります。


特徴的な身体の反応

  • ・血圧の変化
    ・食欲不振
    ・胃腸症状(吐き気や胃痛など)
    ・疲れがとれない   など

<対処のしかた>

食事、睡眠、排せつはできるかぎり確保し、常用している薬は必ず服用します。
介護が必要な方や治療中の方、認知症の方、そのご家族は、無理をせず早めに避難所スタッフに相談しましょう。常用薬・治療食がない方や体調が優れない方は、医療・保健スタッフ、救護所などに相談してください。

また、生活不活発病(廃用症候群)やエコノミークラス症候群(血栓症)などを防ぐために、定期的に体を動かし、こまめに水分をとりましょう。水分補給は、ご高齢者に多い脱水症や感染症の予防にも有効です。

ご高齢者に多い救急疾患や気をつけるべき症状については、こちらの記事をご覧ください。

もしもの時のために覚えておきたい!ご高齢者の緊急対応

避難先では口腔ケアを欠かさず、お口を清潔に保つことも大切です。歯みがきができない場合は、ブクブクうがいや唾液腺マッサージを行うと、誤嚥(ごえん)性肺炎やインフルエンザなどの予防につながります。キシリトール入りのシュガーレスガムがあれば、よく噛んで唾液をたくさん出しましょう。

お口の中から健康に!介護予防にも役立つご高齢者の口腔ケア



市区町村では、災害時に自力での避難が困難な方のための避難支援制度を実施しています。もしものときに備えて、お住まいの地域にどのような支援体制があるのか調べておきましょう。

また、東日本大震災直後には情報収集の手段として、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などのインターネットツールが活用されました。電話やインターネットがつながらない場合は、スマートフォンや携帯電話のワンセグ機能でテレビを見る方法もあります。ご高齢の方は災害時に情報が届きにくくなるため、情報伝達手段や利用方法を事前に確認しておきましょう。

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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