自治体による認知症高齢者向けの賠償補償(認知症高齢者等個人賠償責任保険)
認知症の症状には、判断力や理解力の低下、性格の変化、徘徊(はいかい)などがあります。これらの症状によって、認知症の方が事故やトラブルを起こしてしまうことが懸念されます。
今回は、認知症の方が起こした事故などにより賠償責任を負う場合に備えて、自治体が加入している個人賠償責任保険について解説します。
認知症の主な症状

認知症になると、認知機能が低下して、社会生活に支障を来すようになります。
認知症の症状には、ほぼすべての認知症の方にあらわれる「中核症状」と、中核症状に伴ってあらわれる「行動・心理症状(BPSD)」があります。
行動・心理症状(BPSD)のひとつである徘徊(はいかい)は、交通事故などにつながる危険性があります。
警察庁によると、認知症による行方不明者数は年々増加しており、2023(令和5)年には過去最多の1万9,039人に達しました。
認知症の中核症状
もの忘れ(記憶障害)- ・新しいことが覚えられない
- ・数分前、数時間前の記憶が残らない
- ・同じことを何度も言ったり聞いたりする
- ・慣れた道でも間違えてしまう
- ・時間や場所がわからなくなる
- ・周囲の人との関係がわからなくなる
- ・運転などのミスが多くなる
- ・会話のつじつまが合わない
- ・身の回りのことができなくなる
- ・段取りや計画が立てられなくなる
認知症の行動・心理症状(BPSD)
- ・怒りっぽくなる
- ・暴言や暴力がみられる
- ・徘徊(はいかい)する
- ・実際にはないものが見える
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個人賠償責任保険とは

個人賠償責任保険とは、日常生活において他人にケガをさせたり、他人のものを壊したりして、法律上の損害賠償責任を負った場合に補償する保険のことです。
自動車保険、火災保険などの特約(オプション)として加入している方も多いと思います。
認知症の方が対人や対物のトラブルを起こしてしまった場合は、ご家族や法定の監督義務者が損害賠償責任を負う可能性もあります。
そのため、認知症の方による事故やトラブルに備えて、民間保険を活用した独自の損害賠償制度を導入する自治体が増えています。
自治体の個人賠償責任保険を利用する場合は、事前に申請や登録が必要です。
また、保険の名称(認知症高齢者等個人賠償責任保険など)、対象者、補償内容、保険料などは自治体によって異なります。
制度の有無、詳しい内容、加入方法などは、お住まいの自治体にご確認ください。
ご家族ができる対策
見守りネットワークに登録する自治体などが、認知症で行方不明になったときに探してくれる地域ネットワークを構築しています。事前登録が必要な場合がありますので、前もって確認しておきましょう。
名前や連絡先を衣類などに書いておく名前や連絡先を、ポケットや靴の内側など目立たないところ、よく持って出かける物などに書いておくとよいでしょう。
身近な人に前もって事情を伝えておく最近の顔写真を用意し、近所の人、交番、お店などに事情を伝えて見守りをお願いしておきましょう。
生活リズムや環境を整える日中に適度な運動をする、趣味の時間をつくる、デイサービスやショートステイを利用するなどして、生活リズムや環境を整えることも大切です。
便利な機器を利用する人感センサー、見守りカメラ、GPS端末など、便利な機器を活用しましょう。GPS機器の貸出を行っている自治体もあります。
認知症の方が行方不明になってしまった場合は、すぐに警察に連絡することが重要です。また、自治体のSOSネットワーク、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどにも連絡しましょう。早めの届け出が早期発見につながります。
もし、道に迷っていると思われる高齢の方を見かけたときも警察に連絡しましょう。
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家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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