認知症とともに生きる方やご家族のための「認知症ケアパス」

年齢を重ねると誰でも発症する可能性のある認知症。高齢化の進展とともに認知症の方の数は増加し、今後も増え続けると予想されています。今回は、ご自身やご家族が認知症になったとき、住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために活用していただきたい「認知症ケアパス」について解説します。

「認知症ケアパス」とは

「認知症ケアパス」とは

「認知症ケアパス」とは、認知症の方の状態に応じた適切なサービス提供の流れを地域ごとにまとめたものです。 認知症の方やそのご家族が、「いつ」「どこで」「どのような」医療・介護サービスを受けることができるのかが分かりやすく示されています。

認知症ケアパスは、厚生労働省が2012(平成24)年 に発表した「オレンジプラン(認知症施策推進5か年計画)」で初めて紹介され、2015(平成27)年策定の「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」にも受け継がれました。

現在は多くの自治体で認知症ケアパスの作成が進められています。各市区町村が地域の実情に応じて作成しているため、具体的な内容はお住まいの地域によって異なります。なお、認知症ケアパスをまだ作成していない自治体もあります。

「認知症ケアパス」の内容例

「認知症ケアパス」の内容例

困ったときの相談先一覧

認知症ケアパスには、認知症が心配な方やご家族、身近な方などが困ったときの相談窓口が掲載されています。疑問や不安を感じたときは、おひとりで抱え込まず早めに相談しましょう。



認知症の基礎知識

認知症は原因となる病気によってさまざまな特徴があり、対応方法もそれぞれ異なります。
周りの方が正しい知識を得ることは、ご本人の快適な暮らしにつながります。ご家族の心にもゆとりが生まれ、今後の生活について前向きに考えられるようになるでしょう。



認知症の方への接し方

認知症の行動・心理症状(BPSD)は、適切な対応によって和らぐこともあります。
多くの自治体では、認知症の方と接するときの心構えやポイントなどを、イラストとともに分かりやすく解説しています。ご家族はもちろん、ご近所の方やボランティアの方などが「こんなときどうすれば?」と困ったときに役立つでしょう。


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認知症チェックリスト

「もしかして認知症なのでは?」と気になる方のために、早期発見のためのひとつの目安としてチェックリストを掲載している市町村があります。
他の病気と同じように、認知症も早期発見・早期治療がとても大切です。早めに気づいて適切な治療を受けることで、改善が期待できるものもあります。また、認知症の治療薬で進行を緩やかにすることができる場合もあります。



介護・医療・福祉等のサービス一覧

認知症ケアパスには、認知症の症状に応じたサービスや知っておきたい制度などの情報がまとめられています。
ご家族だけで認知症の方を介護するのはとても大変です。介護保険や総合事業などのサービスを積極的に利用し、介護負担をできるかぎり減らしましょう。



地域住民が取り組む活動の紹介

認知症カフェや認知症サポーター、介護者の集い、ボランティアなど、地域の住民が取り組んでいる活動が紹介されています。
認知症の方やそのご家族は外出の機会が減り、孤立してしまいがちです。認知症になっても、できることや得意なことを活かせるような場所を探してみましょう。ご家族も介護者同士の交流の場で気持ちを分かち合ったり、情報を共有したりすることが、リフレッシュや不安の解消などに役立つでしょう。


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認知症ケアパスの活用方法

認知症ケアパスの活用方法

認知症は誰でもかかる可能性のある病気です。ご高齢の方だけでなく、65歳未満の方が発症(若年性認知症)することもあります。
ご自身やご家族が「認知症かも...?」と感じたとき、認知症の診断を受けたときは、戸惑ったり、今後の生活などに不安を抱いたりするでしょう。
しかし、認知症になったからといって何もできなくなるわけではありません。適切な支援と身近な方の理解があれば、尊厳のある自分らしい生活を続けることができます。

「認知症ケアパス」には、認知症の基礎知識や相談窓口、介護のアドバイス、サービス一覧、地域活動の紹介など、さまざまな情報が盛り込まれています。また、認知症予防に関する情報などが載っている場合もありますので、認知症への備えとして活用することもできます。

認知症ケアパスの情報は随時更新されているため、最新のものか確認するようにしましょう。
お住まいの市区町村の「認知症ケアパス」については、地域包括支援センターなどにお問い合わせください。

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ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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