今後さらに必要性が高まる「成年後見制度」を利用するときのポイント

「成年後見制度」とは、判断能力が不十分な方を保護し、支援するための制度です。認知症のご高齢者の増加が見込まれるなか、この制度を利用される方は今後も増えていくと思われます。今回は、「成年後見制度」の概要や利用までの流れ、トラブルを防ぐポイントをお伝えします。

「成年後見制度」とは

「成年後見制度」とは

成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは、認知症や知的障害、精神障害などの理由で、物事を判断する能力が十分ではない方を法律的に支援する制度です。
最近は、判断能力が低下した認知症のご高齢者が悪徳商法の被害にあうケースが多発しており、そのようなお金のトラブルを防ぐという観点からも成年後見制度が注目されています。

成年後見制度の種類

成年後見制度は、「任意後見制度」と「法定後見制度」の2つに大きく分けられます。

任意後見制度

ご本人に十分な判断能力があるうちに、判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめご本人自らが選んだ「任意後見人」に、代わりにしてもらいたいことを「任意後見契約」で決めておくという制度です。任意後見契約は、公証人が作成する公正証書で結んでおきます。

法定後見制度

ご本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所よって成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が選ばれる制度です。「後見」「保佐」「補助」の3つがあり、ご本人の判断能力に応じて選べるようになっています。

後見 保佐 補助
対象となる方 判断能力が全くない方 判断能力が著しく不十分な方 判断能力が不十分な方
申立てができる方 ご本人・配偶者・四親等内の親族のほか、市区町村長、検察官など

成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)は、ご本人の思いや利益を考慮しながら、ご本人を代理して財産の管理や福祉サービスを利用するときの契約などを行います。ご本人が悪徳商法の被害にあうなどのトラブルに巻き込まれた場合は、成年後見人等がその契約を取り消すことも可能です。また、成年後見人等はご本人の生活の様子などを家庭裁判所に報告し、家庭裁判所の監督を受けます。

成年後見制度の利用者数の推移

成年後見制度の利用者数の推移

成年後見制度は、十分に利用されているとは言い難い状況ですが、利用者される方は増加傾向にあり、2017年(平成29年)12月末日時点では約21万人となりました。
類型をみると、「成年後見」の割合が約78.6%、「保佐」が約15.7%、「補助」が約4.6%、「任意後見」が約1.2%となっています。

成年後見制度の利用者数の推移(平成24年~平成29年)

成年後見制度の利用者数の推移

申立人については、ご本人の子が全体の約27.2%と最も多く、次いで市区町村長(約19.8%)、本人(約14.2%)の順となっています。


申立人と本人との関係別件数(平成29年)

申立人と本人との関係別件数

(注1)後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件の終局事件を対象としている。
(注2)「その他親族」とは、配偶者、親、子及び兄弟姉妹を除く、四親等内の親族をいう。
出典:厚生労働省『成年後見制度の利用の促進に関する施策の実施の状況(平成30年5月)』
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/genjyou30.5.2_2.pdf

「成年後見制度利用促進法」とは

成年後見制度は、高齢化社会を支える重要な制度であるにもかかわらず利用者が少ないことから、2016年(平成28年)5月に「成年後見制度の利用の促進に関する法律(成年後見制度利用促進法)」が施行されました。
国はこの法律に基づき、成年後見制度の利用促進に関する施策の総合的・計画的な推進を図るため、2017年(平成29年)3月に「成年後見制度利用促進基本計画」を閣議決定しました。市町村においても、国が定めた「成年後見制度利用促進基本計画」を勘案して「市町村計画」を策定し、それぞれの取り組みを進めています。
また、認知症のご高齢者の増加により制度の需要はさらに高まると予測されることから、親族後見人や専門職後見人以外の「市民後見人」の活用なども期待されています。

成年後見制度の問題点

成年後見制度の問題点

成年後見人等は、家庭裁判所が「ご本人の親族」「法律・福祉の専門職」「市民後見人」から、ご本人の支援にふさわしい方を選任します。
しかし、後見人等による不正も問題となっています。たとえば、子が親の後見人等となっている場合、親の財産を自分の生活費にあてたり、借りたりする行為は原則として許されません。ところが、「親のお金だから自由に使ってもいいと思った」など、知識不足が原因で財産を使い込んでしまうケースも多いのです。

成年後見人等による不正報告件数・被害額(平成24年~平成29年)

成年後見人等による不正報告件数

成年後見人等による被害額

※ 括弧内の数値は専門職の内数である。
(注)「成年後見人等」とは、成年後見人、保佐人、補助人、任意後見人、未成年後見人及び各監督人をいう。
(注)各年の1月から12月までの間に、家庭裁判所が不正事例に対する一連の対応を終えたとして報告された数値であり、不正行為そのものが当該年に行われたものではない。
出典:厚生労働省『成年後見制度の利用の促進に関する施策の実施の状況(平成30年5月)』
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/genjyou30.5.2_2.pdf

成年後見人制度のトラブルを避けるために

トラブルを避けるために

親族後見人による不正を防ぐために、弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職が後見人等に選ばれる場合や、複数の後見人等が選ばれる場合があります。また、予定されている後見事務が複雑・困難な場合などには、後見人等をサポートする「後見監督人」が選任されることもあります。

2017年(平成29年)の「成年後見人等と本人の関係」についてみると、親族(配偶者・親・子・兄弟姉妹およびその他親族)が成年後見人等に選任されたものは全体の約26.2%ですが、親族以外の第三者が選任されたものは全体の約73.8%と多くなっています。

成年後見人等と本人との関係別件数(平成29年)

成年後見人等と本人との関係別件数

(注1)後見開始、保佐開始及び補助開始事件のうち認容で終局した事件を対象としている。
(注2)「その他親族」とは、配偶者、親、子及び兄弟姉妹を除く、四親等内の親族をいう。
出典:厚生労働省『成年後見制度の利用の促進に関する施策の実施の状況(平成30年5月)』
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/genjyou30.5.2_2.pdf


さらに、ご本人の財産を適切に管理・保護するための方法の一つとして「後見制度支援信託」があります。「後見制度支援信託」とは、ご本人の財産のうち日常的な支払いをするのに必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し、通常使用しない金銭は信託銀行等に信託する仕組みです。
「後見制度支援信託」を利用すると、信託財産を払い戻したり、信託契約を解約したりするにはあらかじめ家庭裁判所が発行する指示書が必要になります。



まずは成年後見制度を正しく知ることが、トラブルを防ぐための第一歩といえるでしょう。
国や裁判所、社会福祉協議会などのホームページでは、成年後見制度についてわかりやすく解説したパンフレット等を掲載しています。また、成年後見制度を利用するための手続きの流れ、必要書類、費用などについては、各市町村の地域包括支援センターや社会福祉協議会のほか、以下の専門職団体に相談することができます。

全国の家庭裁判所

各地の裁判所 裁判所HP

全国の弁護士会

弁護士会一覧 日本弁護士連合会HP

全国の司法書士会

公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート

全国の弁護士会

公益社団法人日本社会福祉士会HP

その他の団体(相談機関)

日本司法支援センター(法テラス)

「任意後見契約」について

日本公証人連合会 公証役場所一覧

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

今後さらに必要性が高まる「成年後見制度」を利用するときのポイント

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