白癬(はくせん)は、高齢の方にもよくみられる感染症のひとつです。ご家庭内や高齢者施設などで人から人へ感染しやすく、自覚症状がほとんどないまま感染を広げてしまうこともあります。適切な治療をしないと完治が難しいため、早期発見と早期治療、予防がとても大切です。
白癬(はくせん)とは

白癬(はくせん)とは、カビ(真菌)の一種である白癬菌(皮膚糸状菌)によって起こる感染症のことです。
感染部位によって、足白癬(水虫)、爪白癬(爪水虫)、手白癬(手水虫)、体部白癬(ぜにたむし)、頭部白癬(しらくも)、股部白癬(いんきんたむし)などのさまざまな呼び名がついています。
感染経路
白癬菌は、ケラチンというタンパク質を栄養源にして増殖するため、ケラチンが多い皮膚の角質層や爪、髪の毛などにみられます。
身体のさまざまなところに感染しますが、最も多いのが足白癬(いわゆる水虫)です。足白癬は、主に感染した人の皮膚から剥がれ落ちた垢(鱗屑)や毛が付着する足ふきマット、スリッパ、畳、布団、タオルなどを介して感染します。また、白癬にかかっているペットから感染する場合もあります。
白癬菌が皮膚に付着してもすぐに感染するわけではありませんが、菌が増殖しやすい条件が多いほど感染のリスクが高まります。
- ・高温多湿の環境
- ・皮膚に傷がある
- ・皮膚のバリア機能が低下している
- ・指同士がくっついている など
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白癬(はくせん)の種類と主な症状

足白癬(足の水虫)
白癬菌が足に感染すると、足白癬(いわゆる水虫)と呼ばれます。
かゆみ、水ぶくれなどの症状が出ますが、自覚症状がほとんどない場合もあります。
自分の足白癬(水虫)から爪や手など別の部位に感染してしまうこともありますので注意が必要です。
足白癬には、趾間型(しかんがた)、小水疱型(しょうすいほうがた)、角質増殖型(かくしつぞうしょくがた)があります。
足の指の間に、赤くなる、皮膚が白くふやけたようになる、皮がむける、ムズムズする、ジュクジュクするなどの症状が出ます。
・小水疱型(しょうすいほうがた)足の裏に小さな水ぶくれができ、破れたあとに皮がむけます。痒みを伴うこともあります。
・角質増殖型(かくしつぞうしょくがた)足の裏の皮膚が分厚くなって硬くなり、ひび割れを伴うことがあります。
かゆみはほとんどないことが多いため、足白癬(水虫)と気づかない場合もあります。
手白癬(手の水虫)
手に感染したものは手白癬と呼ばれます。足白癬(足の水虫)と同じような症状が出ます。
爪白癬(爪の水虫)
爪にできる白癬です。高齢の方に多くみられ、長期間の治療が必要になります。
爪が変色する、厚くなる、もろくなる、変形するなどの症状が出ます。また、歩きにくくなる、転びやすくなる、QOL(生活の質)が低下することが知られています。
体部白癬(ぜにたむし)
股以外の体部に生じたものは、体部白癬(ぜにたむし)と呼ばれます。
発疹がかゆみを伴ってリング状に広がり、リングの中は治っているように見えるのが特徴です。動物との接触や格闘技などが感染の原因となることがあります。
股部白癬(いんきんたむし)
股に生じたものは、股部白癬(いんきんたむし)と呼ばれます。
股部周辺に強いかゆみを伴う発疹がみられます。
頭部白癬(しらくも)
髪の毛に白癬菌が感染したものは、頭部白癬(しらくも)と呼ばれます。
楕円形の脱毛や、フケのような細かい鱗屑(りんせつ)などがみられます。
白癬(はくせん)予防のポイント
ご家庭内の感染に注意する
- ・足ふきマットやスリッパなどはこまめに洗い、よく乾燥させてから使用する
- ・床や畳の掃除をできるだけこまめに行う
- ・白癬にかかっているご家族がいたら、バスマットやスリッパ、タオルなどは共用しないようにする
体を清潔に保つ
- ・入浴施設など、不特定多数の人が素足で利用する場所から帰ったら早めに足を洗う
- ・特にむれやすい足は優しく丁寧に洗い、洗った後は指の間までしっかり乾かす
- ・靴は通気のよいものを選び、一日履いた靴はよく乾燥させる
- ・角質に傷がつくと足白癬になりやすいため、ゴシゴシ洗いは避ける
白癬にかかったら適切なケアを行う
- ・治療を途中でやめない
- ・白癬菌が別の部位に感染しないよう気をつける
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家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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