褥瘡(じょくそう・床ずれ)とは、身体の一部が圧迫され続けることで、皮膚に栄養がいきわたらず、壊死し皮膚潰瘍(かいよう)を生じた状態のことをいいます。
寝たきりの方に多くみられますが、認知症や麻痺(まひ)のある方にも起こりがちです。
今回は、褥瘡(じょくそう・床ずれ)とはどのようなものなのかを解説し、その発生原因と予防法、できてしまったときの対処法をまとめます。
褥瘡(じょくそう・床ずれ)の症状と重症度
床ずれの重症度
褥瘡(じょくそう・床ずれ)の初期症状は、肌に赤み(「発赤(ほっせき)」)がみられます。進行すると、内出血や水泡、びらんが見られます。重症化すると皮膚が壊死し、皮下脂肪や筋肉や骨、腱などにまで傷が広がり、治りにくくなります。また、そこから細菌が入ると、感染症を合併し死に至ることもあります。
NPUAP(米国褥瘡諮問委員会)のステージ分類
ステージI | 皮膚に圧迫しても消えない発赤(ほっせき)や皮内出血などがみられる |
ステージII | 「ステージI」の床ずれに摩擦力が働き、表皮が剥離して真皮層が露出したり、 水疱などができたりしている |
ステージIII | 組織欠陥が皮下組織に及んでいる |
ステージIV | 組織欠陥が筋膜を超えて筋肉や骨、腱などにまで至り、感染を伴いやすい |
褥瘡(じょくそう・床ずれ)の好発部位
褥瘡(じょくそう・床ずれ)は、持続的に圧力のかかりやすい骨の出っ張った部位にできやすくなります。
仰向け(仰臥位)で寝ているときに最も発生しやすいのは、体圧のかかる仙骨部(せんこつぶ・おしりの中央の骨が出た部分)です。また、横向き(側臥位)に寝ているときは、大転子部(だいてんしぶ・太ももの付け根の外側)などに発生しやすくなります。
仰向け(仰臥位)
後頭部・肩甲骨部・脊柱部・仙骨部・踵骨部(かかと)など
横向き(側臥位)
耳介部(耳)・肩関節部・肘関節部(ひじ)・腸骨部・大転子部・膝関節部・外踝部(くるぶし)など
座位
坐骨部・尾骨部・背部・肘関節部など
褥瘡(じょくそう・床ずれ)の発生原因
褥瘡(じょくそう・床ずれ)の発生原因には、以下のような要因があります。
① 皮膚への持続的な圧迫
長時間の同一体位、補装具などの圧迫、寝具の重みや窮屈な寝衣など
② 皮膚への摩擦やズレ
シーツ、寝衣のしわや糊のききすぎ、移動時の摩擦、ベッドのギャッジアップ時や座位時のずり落ちなど
③ 身体の不潔と皮膚の湿った状態
下着やおむつ、尿取りパットなどによる皮膚の蒸れ、発汗や排尿・排便時の皮膚の汚れなど
④ 全身状態の低下
栄養不良、血行障害、運動・感覚障害、皮膚や筋肉、皮下脂肪の退化など
褥瘡(じょくそう・床ずれ)の予防方法
褥瘡(じょくそう・床ずれ)の予防には、発生原因を除去することが重要です。
また、日ごろから着替えや入浴の際などに、皮膚の状態をよく観察し、発赤(ほっせき)を見逃さないようにしましょう。
① 体位変換・ポジショニング
褥瘡(じょくそう・床ずれ)の好発部位を意識しながら、身体の同じ部分に長時間の圧迫がかからないように、定期的に身体の向きや姿勢を変えます。発赤がみられたら、その部分が圧迫されないような体位をとりましょう。
② 褥瘡予防用具の使用
エアマットレスやクッションなど、体圧分散用具を活用することで予防できます。
③ 皮膚摩擦やズレを防ぐ
衣服は、肌触りがよく、通気性や吸湿性に優れた素材のものを選びましょう。
身体を移動するときは、皮膚の摩擦を防ぐため、引きずらずに持ち上げるなどの注意をします。
ベッド上で身体を移動する際は、滑りやすい「スライディングシート」や「スライディンググローブ」等を活用するのもよいでしょう。また、シーツ、寝衣などのしわや縫い目は、皮膚に直接あたらないようにしましょう。
④ 身体の清潔保持
尿や便などの排泄物や汗が皮膚に付着した状態が続くと、皮膚への刺激が加わってしまうため、丁寧に拭き取り、いつも清潔にします。下着やおむつ、尿とりパットは通気性のよいものを選び、ぬれたまま長時間あてることのないようにしましょう。寝具や衣類も清潔で乾燥したものを使用します。
また、血行を良くする入浴は、褥瘡(じょくそう・床ずれ)の予防にも効果的です。入浴が難しい場合は、清拭(せいしき)や部分浴を行いましょう。
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⑤ 栄養を十分にとる
バランスのよい食事と適度な水分補給を心がけ、食事量の少ない方は栄養価の高い食品をとり、栄養状態を良好に保ちましょう。
良質のたんぱく質・高エネルギーで、ビタミン・ミネラルが豊富な食材を選び、ご本人の食べる能力に合った食形態のものをおいしく食べていただきます。ご家族など介助者が忙しいときは、市販の栄養補助食品などを上手に利用するのもよいでしょう。また、口腔ケアも低栄養の予防や改善につながります。
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褥瘡(じょくそう・床ずれ)の対処方法
褥瘡(じょくそう・床ずれ)は予防可能な疾患ですが、体調が悪化したり食事がとれなくなったりすると、十分に気を配っていてもできてしまうことがあります。
初期状態での早期発見と、ステージに合わせた治療が重要なため、褥瘡(じょくそう・床ずれ)の疑いがあるときは、すぐに医師や看護師等の医療職に報告・相談をしましょう。
▼参考
日本褥瘡学会
http://www.jspu.org/
社会福祉士資格保有のライター。「介護」を中心とした福祉分野で、執筆活動を続けている。
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