お一人での入浴が困難になった際に必要な入浴介助。身体を清潔に保つだけでなく、リラックスや安眠、血行促進、感染症や褥瘡(じょくそう)の予防など心身にさまざまな良い効果をもたらします。しかし、特にご高齢者の入浴は転倒事故や血圧の変化など事故への十分な注意が必要です。
今回は、安全な入浴介助の手順とポイントを、在宅介護がはじめての方にも分かりやすくお伝えしていきます。
入浴介助の手順とポイント(注意点)
入浴前
① バイタルチェック(体温・血圧・脈拍・呼吸・表情などのチェック)を行い、異常がないか確認をします。
② ヒートショック現象を防ぐために、脱衣室・浴室をあらかじめ室温25度くらいに暖めておき、ほかの部屋との温度差がないようにします。
③ 排泄(トイレ)は事前に済ませ、入浴に必要な物品を用意しておきます。
④ 脱衣室へ移動します。
転倒予防のために安定したいすに座り、手すりをつかめる状態で衣服を脱ぎましょう。リハビリ・自立支援のために、なるべくご自身で着脱していただくことが大切です。
※片麻痺(かたまひ・へんまひ)がある場合は、健側(麻痺がない方)から脱ぎ、患側(麻痺がある方)から着ます。これを脱健着患(だっけんちゃっかん)といいます。
※衣服は、ボタンではなくマジックテープのもの、ゆったりとして伸縮性があるものを選ぶと着替えのご負担を軽減できます。
⑤ プライバシーに配慮しながら、褥瘡(じょくそう)や皮膚トラブルの有無など全身の状態を観察します。
入浴中
① 浴室の壁・いす・浴槽など肌が触れるところは、シャワーをかけて温めておきます。
② シャワーチェアなど滑りにくいいすに腰をかけ、手すりにつかまっていただきます。
浴室のいすには、滑り止めとしてタオルを敷いておくのもよいでしょう。
③ まずは介助者がお湯の温度を確認し、次に声をかけて、ご自身でもお湯の温度の確認をしていただきます。ちょうどよい温度であることを確認した後、お湯を心臓から遠い足元から全身へとかけていきます。
④ 髪→顔→身体の順に洗いましょう。ご自身でできるところは行っていただき、できないところは介助者がサポートします。介助者が洗髪する場合は、頭皮は指の腹を使って洗うようにしましょう。陰部などのデリケートな部分は、できるだけご自身で洗っていただきます。
⑤ 身体にすすぎ残しがないことを確認し、手すりにつかまりながら、ゆっくりと浴槽に入っていただきます。浴槽に入る際も、心臓に遠い部分から浸かるようにしましょう。
※立ち上がる時は、床が石鹸などの泡で滑らないよう、しっかり流しておきましょう。
※片麻痺(かたまひ・へんまひ)がある場合は、健側(麻痺のない方)が手すりや浴槽と隣り合うようにしましょう。
⑥ 5分ほどお湯に浸かり、身体を温めます。浴槽から出たら、脱衣室に出る前にタオルで身体を軽く拭きましょう。
※長湯による急激な血圧の変化や脱水症状に注意します。
入浴後
① 転倒予防のために足の裏をしっかりと拭いてから、乾いたタオルで身体全体を拭きます。
② 血圧の変化でふらつく場合もあるため、安定したいすに座った状態で服を着ます。
③ 必要に応じて、耳掃除・爪切り・保湿剤やパウダーの塗布などを行いましょう。
④ 十分に水分補給をして、しばらく休憩することが大切です。
⑤ 入浴前と同じくバイタルチェックを行い、入浴後も体調の変化に気をくばります。
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ご自宅でできる工夫・身体負担の軽減と安全をサポートする入浴補助用具
・脱衣室・浴室には多くの物を置かず、スペースを広めに確保することがポイントです。
・脱衣室が狭い場合は、暖かい居室で衣服を脱ぎ、バスタオルなどで保温しながら浴室に向かってもよいでしょう。
・ヒートショック現象を防ぐために、暖房器具をうまく活用しましょう。
・転倒防止のために、手すりや滑り止めマット、シャワーチェア、シャワーキャリーなどを活用しましょう。
入浴補助用具
入浴用車いす(シャワーキャリー)
座ったままで部屋から浴室まで移動することができて便利です。背もたれや座面が調整できるタイプ、座ったままトイレで排泄ができるタイプなどがあります。
入浴用いす(シャワーチェア・シャワーベンチ)
身体を洗うときの姿勢が安定します。背もたれやひじかけがついたタイプ、座面回転タイプ、折りたたみタイプなどがあります。
浴槽用手すり
浴槽に取り付ける手すりです。浴槽をまたぐときに身体を支えます。ご高齢者が握りやすいところに設置することが可能です。
入浴台(バスボード)
浴槽をまたぐことが困難な場合は、浴槽の縁にかけた入浴台に座りながら浴槽内に移動することができます。
入浴用介助ベルト
移乗するときなどに使用します。転倒防止に役立ち、介助者の負担も少なくなります。
浴槽内いす
浴槽内にいすを置くことで楽に出入りができ、座った姿勢も安定します。浴槽が深い場合や半身浴をしたい場合にも便利です。
すのこ(浴室内・浴槽内)
浴室の出入口や洗い場、浴槽内などに使用することで、つまずきや転倒の防止に役立ちます。
※入浴補助用具は、介護保険を利用できるものもあります。
※入浴補助用具の使い方、症状・環境などに合わせた選び方について詳しくは、ケアマネジャー、福祉用具(貸与)販売店などへ相談してみましょう。
介護保険サービスを利用した入浴
入浴介助は、ご自身だけではなくご家族にとっても負担が大きいものです。
要支援・要介護認定を受けている方でご家族だけでの入浴介助が難しい場合は、デイサービスに通って入浴のサービスを受けたり、訪問入浴介護や訪問介護サービスを利用してご自宅で入浴したりすることもできます。
デイサービスなどの介護施設には機械浴を備えている場合も多く、要介護度の高い方も安全に入浴できますので、うまく利用してみましょう。
▼関連リンク
あずみ苑の入浴介助
スタッフ紹介 オペレーター(訪問入浴介護)
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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