誰もがともに暮らす「宅幼老所(地域共生型サービス)」とは

厚生労働省が推進する地域共生型サービスのひとつに、宅幼老所(たくようろうしょ)があります。宅幼老所では、子どもからご高齢の方までが家族のように過ごせるよう、さまざまな取り組みを行っています。今回は、今後の普及が期待される宅幼老所について解説します。

宅幼老所(地域共生型サービス)とは

宅幼老所(地域共生型サービス)と

宅幼老所(たくようろうしょ)は、地域共生社会の実現に向けた「地域共生型サービス」のひとつです。
ご高齢の方や障がいのある方、子どもなどを対象に、家庭的な雰囲気のもとで、利用者のニーズに沿ったサービスを提供します。

サービスの形態は地域のニーズによってさまざまで、デイサービスなどの「通い」のほか、ショートステイなどの「泊まり」やホームヘルプなどの「訪問」、グループホームなどの「住まい」などがあります。
空き店舗を活用した子育て支援や、高齢者交流施設の設置・運営事業の申請も可能です。

事業の理念

「誰もが地域でともに暮らす」(共生)を重視、選択の自由
・家族のように過ごせる第二の我が家
・近所の家に遊びに行く感覚
・いつでも誰でも受け入れ可能

「地域共生社会」とは

地域共生社会は、「ニッポン一億総活躍プラン」において「子ども・高齢者・障がい者などすべての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる」社会であるとされています。

これまでの公的支援は、高齢者、障がい者、子どもなどの対象者ごと、または生活に必要な機能ごとにサービスが分かれていました。
しかし最近は、介護と育児を同時に行う「ダブルケア」や、80代前後の高齢の親が長期的にひきこもりをしている50代前後の子を養うことにより生じる生活の問題「8050問題」など、複合的な課題を抱える世帯が増えています。
そして、誰にも相談できず社会から孤立してしまうケースも少なくありません。
また、高齢化や人口減少が進み、公的な福祉サービスだけで要支援者を支援することは困難になってきています。

このような状況のなかで政府が打ち出したのが「地域共生社会」という概念です。
「地域共生社会」とは、対象者や機能ごとに整備された「縦割り」の公的支援を「丸ごと」へ転換し、地域全体で支え合う社会にしていこうというもの。その実現に向けて、地域住民が世代などを超えてつながり、地域課題の解決力を強化することを求めています。

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宅幼老所(地域共生型サービス)の活用イメージ

宅幼老所(地域共生型サービス)の活用イメージ

例えば以下のようなサービスを組み合わせて、地域の多世代が交流し、地域住民のさまざまな相談にも応じる福祉拠点として機能することが期待されています。
運営に係る費用等については、介護保険法や児童福祉法などに基づいて、利用料や補助金として拠出されます。

・通所介護(デイサービス)

デイサービスセンター等において、介護や機能訓練などを日帰りで提供する事業

・小規模多機能型居宅介護

「通い」「宿泊」「訪問」を組み合わせて、介護や機能訓練などを提供する事業

・一時預かり(地域密着Ⅱ型)

保護者の通院や社会参加活動、育児に伴う心理的・身体的負担の軽減のため、就学前児童を一時的に預かる事業

・保育所の分園

認可保育所の設置が困難な地域において、中心保育所と一体的な運営を行う施設

・家庭的保育事業

保育士や研修により市町村が認めた家庭的保育者(保育ママ)が、自身の居宅等において少数の乳幼児を保育する事業

・地域型保育・子育て支援モデル事業

地方版子ども・子育て会議の設置および小規模保育や地域子育て支援事業のほか、放課後児童クラブ等を組み合わせた多機能な保育を実施する事業

宅幼老所

出典:厚生労働省「宅幼老所の取組」

地域の実践例

地域の実践例のひとつとして知られているのが、富山県から全国に発信された「富山型デイサービス」です。
介護保険の指定通所介護事業所を母体として、障害者総合支援の就労継続支援B型の事業を実施しています。

「富山型デイサービス」は、1993年(平成5年)に3人の看護師が県内初の民間デイサービス事業所として開所した「このゆびとーまれ」から始まりました。
最初の利用者は障がい児でしたが、その後は高齢者や子ども、障がい者など、誰でも柔軟に受け入れています。
地域の身近な場所に立地する小規模な建物で、家庭的な雰囲気のなか、利用者本位のサービス提供を目指していることが特徴です。

富山型デイサービスの理念

・年齢や障がいに関係なく、誰もが地域で共に暮らせる町作りを考える
・誰も排除しないで包みこむこと

宅幼老所(地域共生型サービス)のメリット

宅幼老所(地域共生型サービス)のメリット

高齢者のメリット

・子どもと話したり、触れ合ったりすることで、自然な笑顔がうまれる
・見守りなどの役割を見つけ、自信をもつことができる
・意欲が高まり、日常生活の改善や会話の促進につながる

子どものメリット

・核家族が増えている中で、大家族のような関係を築ける
・高齢者と日常的に関わることで、挨拶や食事のマナーなどを自然と学べる
・他人への思いやりや優しさ、豊かな感性などを身につけることができる

障がい者(児)のメリット

・安心して過ごせる居場所ができる
・自分なりの役割を見いだし、自立へとつながっていく

スタッフのメリット

・子育て中の職員などが、子どもを連れて通うことができる
・宅幼老所のスタッフとして働きながら、安心して子どもを育てることができる

地域のメリット

・地域住民のさまざまな相談に応じる福祉拠点となる
・地域の特性などに合ったサービスを提供できる



参考・出典:
厚生労働省「宅幼老所の取組」
厚生労働省「富山型デイサービスとは(共生型)」
とやまの地域共生

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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