認知症の前段階といわれる軽度認知障害(MCI)の基礎知識

軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)とは、まだ認知症とは診断できない状態のことで、認知症の前段階ともいわれています。日常生活は大きな支障なく送ることができますが、認知症に進行する可能性があるため、早期に発見して予防に取り組むことが重要です。今回は、軽度認知障害(MCI)の定義や主な症状についてご紹介します。

軽度認知障害(MCI)とは

軽度認知障害(MCI)とは

軽度認知障害は「Mild Cognitive Impairment」の頭文字をとり、MCI(エム・シー・アイ)と呼ばれており、認知症ではなく、正常と認知症の中間ともいえる状態のことです。
厚生労働省の発表によると、2012年の時点で、認知症有病者数は約462万人と推計され、軽度認知障害(MCI)の方は約400万人と推計されています。

記憶障害(もの忘れ)などの症状がありますが、日常生活への影響はほとんどありません。
しかし、MCIの方は年間で10~30%が認知症に移行するとされており、認知症の前段階と考えられています

  • MCI(軽度認知障害)の定義

    ① 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する
    ② 本人または家族による記憶障害(もの忘れ)の訴えがある
    ③ 全般的な認知機能は正常範囲
    ④ 日常生活動作は自立している
    ⑤ 認知症ではない

出典:厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について(参考資料)」

軽度認知障害(MCI)の症状

軽度認知障害(MCI)の症状

MCI(軽度認知障害)の主な症状は記憶障害(もの忘れ)ですが、そのほかの症状(実行機能障害など)がみられることもあります。

MCIの主な症状

・最近のことを思い出すのに苦労するようになった
・同じ人に同じ話を繰り返すようになってきた
・言葉が出てきにくくなり「あれ」「それ」ということが増えた
・人の名前が出てきにくくなった
・料理を段取りよく作るのが難しくなってきた
・仕事をこなすのに努力が必要になってきた
・同時に2つ以上のことをするのが難しくなってきた
・整理整頓が難しくなった
・人との会話についていけないことが増えた
・趣味などに興味を示さなくなった
・何となく元気がなくなり、外出しなくなった  など

ただし、加齢によるもの忘れとなかなか区別がつきにくい場合があります。

MCI(軽度認知障害)と認知症の違い

MCIは、認知機能の軽度の低下があっても、大事なことはメモをとるなどの工夫によって社会生活や日常生活は何とか支障なく過ごすことができます。また、食事や着替え、入浴、トイレ動作などの日常生活動作(ADL)も自立しています。
もの忘れに対しては、ご家族だけでなくご本人にも「もの忘れをしている」という自覚があります。

認知症は、認知機能の低下によって社会生活や日常生活、対人関係に支障をきたし、日常生活動作(ADL)に援助が必要になります。ご本人の「もの忘れをしている」という自覚が乏しいのも特徴です。

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認知症や軽度認知障害(MCI)の予防対策

認知症や軽度認知障害(MCI)の予防対策

軽度認知障害(MCI)の方は、年間10〜30%が認知症に進行する(正常な場合は年1〜2%)と言われていますが、正常なレベルに回復する人もいると報告されています。認知症になってしまってからでは治療が難しいため、早めに気づくことができるよう意識して予防を心掛けることが重要です。

早期発見・治療

MCIを早期発見するためには、ご家族や周りの方が、日常生活における小さな変化を見逃さないことが大切です。気になる症状がみられる場合は、もの忘れ外来などの専門医療機関に相談しましょう。

バランスのよい食事

食事は、さまざまな栄養素を偏りなくとることが基本となります。
その上で、認知症予防に効果的といわれるDHAやEPA、ポリフェノール、ビタミン類などを取り入れましょう。塩分や糖分、動物性脂肪、高コレステロール食品などを控えめにすることも大切です。

適度な運動

ウォーキングなどの有酸素運動を、無理なく続けるようにしましょう。頭と体を同時に動かす運動も認知症予防の効果があるといわれています。

生活習慣病の予防

高血圧や糖尿病などの生活習慣病喫煙や過度な飲酒は認知症の発病リスクを高めると考えられています。高齢の方だけでなく、若い方にも生活習慣病予防などの取り組みが求められています。

脳を活発にする生活

積極的に趣味や知的活動、おしゃれなどを楽しみ、他人と交流することで脳に刺激を与えることができます。また、食事をよく噛んで食べることも脳の活性化につながります。

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▼関連リンク
厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について(参考資料)」



ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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