介護施設などで、介護スタッフのまとめ役として活躍する介護リーダー。社会の移り変わりや制度の改正に伴い、介護リーダーの役割も変化しつつあります。今回は、介護現場で中核的な役割を担う介護リーダーに求められる能力やキャリアパスについてお伝えします。
「介護リーダー」とは

「介護リーダー」は、グループで実践するケアの現場で介護スタッフを束ねます。
介護リーダーには、介護や福祉に関する専門的な知識・技術のほかに、円滑な人間関係を築くためのヒューマンスキルが欠かせません。また、認知症の方の増加や世帯構成の変化、意識の移り変わり、制度改正などに伴って多様化するニーズに対応できる柔軟性なども求められています。
現在、国は「地域包括ケアシステム(医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される体制)」の実現のために、必要となる介護人材の確保に取り組んでいます。
厚生労働省は、その具体策のひとつとして介護人材の機能分化を進めるとしています。そして、介護職のグループリーダーには、一定のキャリア(5年程度の実務経験)を積んだ介護福祉士を位置づける方針を2017年(平成29年)に示しました。
介護福祉士養成課程の教育内容についても見直しが行われ、2018年度(平成30年度)から周知、2019年度(平成31年度)からは順次導入される予定です。
「介護リーダー」の主な役割

厚生労働省は、介護職のグループにおけるリーダー(介護福祉士)の役割・求められる能力として、以下の3つを挙げています。
高度な知識・技術を有する介護の実践者としての役割
専門的な知識・技術を用いて、多職種と連携しながら、幅広い介護ニーズに対応する役割を担います。
具体的には、今後も増加が見込まれる認知症の方の症状に応じた対応、医療・リハビリの必要性が高い方への対応、終末期の方に対する看取りを含めた対応、障がいの特性に応じた対応、複合的な支援ニーズを抱えるご家族への対応などです。
そのためには、ご利用者の心身状況などを把握する観察力、適切に対応できる判断力、業務遂行力、多職種連携力などが求められます。
介護技術の指導者としての役割
グループ内の介護スタッフへの介護技術の指導や助言、適切な業務・役割の配分、スーパーバイズなどの役割があります。
そのためには、ADLやアセスメント(課題整理)のエビデンスに基づいた介護技術の指導・伝達によって後進の育成ができる指導力、介護スタッフの能力を開発していく人事管理能力などが求められます。
介護職のグループにおけるサービスをマネジメントする役割
介護過程の基本に沿った介護サービスの提供監理、グループ内の介護スタッフのフォロー、ご利用者に関する情報収集と共有などの役割があります。
そのためには、介護計画に沿った介護が提供されているかを把握し、その向上・改善に向けて対応できる能力、さまざまな職種や機関と連携できる能力などが求められます。

出典:厚生労働省「介護福祉士養成課程における教育内容の見直し」について
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000194331.pdf
「介護リーダー」になるためには

前述のように、厚生労働省は介護職のグループリーダーに一定のキャリア(5年程度の実務経験)を積んだ介護福祉士を位置づける方針を示しています。今後さらに複雑化・多様化・高度化していく介護ニーズに対応するためには、専門的な知識・技術を修得した介護福祉士が適当であると考えているためです。
こうしたことから、介護福祉士養成課程の教育内容は、以下の観点から見直しが行われました。
これからの介護リーダーは、介護福祉士資格取得の過程で素養を身につけ、現場で実践力を磨くというキャリアパスになっていくようです。
①チームマネジメント能力を養うための教育内容の拡充
「人間関係とコミュニケーション」の教育に含むべき事項に「チームマネジメント」が追加される予定です。(30時間 → 60時間)
②対象者の生活を地域で支えるための実践力の向上
「社会の理解」の教育に含むべき事項に「地域共生社会」、「介護実習」の教育に含むべき事項に「地域における生活支援の実践」が追加される予定です。
③介護過程の実践力の向上
領域「介護」の目的に「各領域での学びと実践の統合」、「介護総合演習」と「介護実習」には新たに【教育に含むべき事項】が追加される予定です。
④認知症ケアの実践力の向上
「認知症の理解」の教育に含むべき事項に「認知症の心理的側面の理解」「認知症ケアの理解」が追加される予定です。
⑤介護と医療の連携を踏まえた実践力の向上
「介護実習」の教育に含むべき事項に「多職種協働の実践」が追加される予定です。
「こころとからだのしくみ」の教育に含むべき事項が「こころとからだのしくみⅠ(人体の構造や機能を理解するための基礎的な知識)」と「 Ⅱ(生活支援の場面に応じた心身への影響)」に大別されます。
また、「発達と老化の理解」の教育に含むべき事項の「人間の成長と発達」には、「ライフサイクルの各期の基礎的な理解」を追記するとしています。
同省は、新たな入門的研修を導入することで、介護人材の確保に繋げようと考えています。これからは幅広い年代の多様な人材が介護分野へ参入することになるかもしれません。それに伴い、介護リーダーの役割や求められる能力はさらに明確化していく可能性があります。
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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