高齢化の進展とともに認知症の人の数はさらに増えると見込まれています。今回は、認知症ケアの質を高めるための「認知症介護基礎研修」「認知症介護実践研修(認知症介護実践者研修と認知症介護実践リーダー研修)」「認知症介護指導者養成研修」についてそれぞれ解説します。
認知症ケアの質を高めるための研修

2025年には65歳以上のご高齢者の約5人に1人が認知症になると予測されています。
介護の現場でも質の高い認知症ケアを提供することが求められるため、各自治体で介護従事者などを対象とした認知症対応力向上研修が行われています。
2021年4月には、新任の介護職員等向けの「認知症介護基礎研修」が義務化されました(2024年3月31日までは努力義務)。
その後は、「認知症介護実践者研修」⇒「認知症介護実践リーダー研修」⇒「認知症介護指導者養成研修」を修了することでステップアップも可能です。
これらの研修の目的は、認知症についての理解のもとご本人主体の介護を行い、できるかぎり認知症の進行を遅らせ、行動・心理症状(BPSD)を予防することができる専門職員を養成し、認知症の方に対する介護サービスの充実を図ることです。
受講要件や受講費用などは自治体によって異なります。
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「認知症介護基礎研修」とは

「認知症介護基礎研修」は、新任の介護職員などが認知症介護に必要な基礎的な知識や技術を修得するための研修です。
介護保険施設・事業者等で介護に直接携わる職員のうち、医療や福祉関係の資格を持っていない方を対象としています。
研修は原則としてeラーニングによって行われます。
2024年3月までは経過措置期間として努力義務となっていますが、2024年4月から完全に義務化されます。
「認知症介護実践研修」とは
「認知症介護実践研修」は、認知症介護に関する実践的な知識や技術を修得するための研修です。
認知症介護実践者研修と、ケアチームのリーダーを養成するための認知症介護実践リーダー研修とがあります。
認知症介護実践者研修
介護保険施設・事業所等に従事する介護職員などであり、一定の知識や技術、実務経験(おおむね2年ほど)を有する方を対象としています。
認知症介護実践リーダー研修
介護保険施設・事業所等に従事する介護職員などであり、一定以上の期間の実務経験(おおむね5年以上)を有し、かつ「認知症介護実践者研修」を修了して一定期間を経過した方を対象としています。
「認知症介護指導者養成研修」とは

認知症介護実践研修などの企画・立案に参画し、介護の質の改善について指導できる方を養成するための研修です。
次の① ~ ⑤のすべてを満たした方が対象となります。
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① 医師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士のいずれかの資格を有する方またはこれに準ずる方
② 次の(ア)~(ウ)のいずれかの要件に該当する方で、相当の介護実務経験を有する方
(ア)介護保険施設・事業所等に従事している方(過去に従事していた方も含む)
(イ)福祉系大学や養成学校等で指導的立場にある方
(ウ) 民間企業で認知症介護の教育に携わる方
③ 「認知症介護実践研修」の修了者(「痴呆介護研修事業」修了者を含む)またはそれと同等の能力を有すると都道府県等が認めた方
④ 「認知症介護基礎研修」か「認知症介護実践研修」の企画・立案に参画し、または講師として従事することが予定されている方
⑤ 地域ケアを推進する役割を担うことが見込まれている方
「認知症介護指導者養成研修」については、都道府県・指定都市を通じて申し込み、認知症介護研究・研修センターで受講します。修了後のスキルアップのための「認知症介護指導者フォローアップ研修」も行われています。
今回ご紹介した研修のほかにも、「認知症対応型サービス事業管理者研修」「小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修」「認知症対応型サービス事業開設者研修」があります。また、医療従事者等の認知症対応力を向上するための研修も実施されています。
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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