お口の中から健康に!介護予防にも役立つご高齢者の口腔ケア

近年、介護の現場でも口腔ケアの重要性が認知されるようになってきました。ご高齢者の口腔ケアはお口の病気予防だけではなく、全身の健康維持やQOL(生活の質)向上のためにも必要です。今回は、ご高齢者の口腔ケアの目的や観察ポイント、効果的な「ブクブクうがい」の方法についてお伝えします。

ご高齢者の口腔ケアの目的と効果

ご高齢者の口腔ケアの目的と効果のイラスト

誤嚥性肺炎を予防する

「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」とは、食べ物や唾液などが誤って気管に入り、一緒に入った細菌が炎症を起こすことで生じる肺炎です。咳反射や嚥下反射機能が低下しているご高齢者は、食事中だけではなく睡眠中にも細菌を含んだ唾液を誤嚥してしまうことがあります。口腔ケアでお口の中の細菌を減らし、誤嚥性肺炎を予防しましょう。

口腔機能を維持・向上する

舌や唇、頬などを動かすことは、咀嚼(噛む)や嚥下(飲み込む)などの機能を維持・向上するトレーニングになります。お口や顔面の体操、歯ブラシやスプーンを活用したマッサージなど、お身体の状態に合った口腔リハビリテーションを無理なく行ってみましょう。

抵抗力を高める

唾液には、ウイルスや細菌が身体に侵入するのを防ぐ働きがあります。唾液の分泌を促進する口腔ケアは、インフルエンザや風邪の予防にも効果的です。また、しっかりと噛んで食べることで栄養状態が良くなり、身体の抵抗力が高まります。

全身の健康を保つ

歯周病は、糖尿病や骨粗しょう症などの病気と深い関係があるといわれています。また、歯周病をもっている方は虚血性心疾患や脳梗塞になる確率が高いという説もあります。口腔ケアでお口の健康を保つことは、全身の健康を保つことにもつながるのです。

QOL(生活の質)を向上する

口腔機能の改善は、心理面にも良い影響を与えます。歯の不具合や口臭の悩みが解消すれば、「食べる」「笑う」「話す」をさらに楽しめるようになるでしょう。さらに、ご高齢者の意欲が高まることで介護予防や認知症予防、介護負担の軽減なども期待できます。

口腔ケアを見直すための観察ポイント

誤嚥してしまった高齢者のイラスト


ご高齢者の口腔内トラブルは、ちょっとした異変にもできるだけ早く気づいて対処することが大切です。お口やお身体の状態を観察し、下記のような症状に気づいたら医療機関に相談してみましょう。

お口の観察ポイント

・口臭が気になる
・口の中が乾きやすい
・薬が飲みにくい
・食事中にむせやすくなった
・固いものが食べにくくなった
・食べこぼしが増えた
・食事にかかる時間が長くなった
・薄味がわかりにくく濃い味を好むようになった
・食後に食べ物が口の中に残りやすくなった
・話しにくくなり会話が減ってきた 

お身体の観察ポイント

・熱を出すことが多くなった
・風邪をひきやすくなった
・表情が乏しくなってきた
・閉じこもりがちになった
・食が細くなった
・糖尿病がある
・麻痺(まひ)等がある
・認知症の症状がある

効果的な「ブクブクうがい」の方法

歯が揃っている高齢者のイラスト


うがいには、上を向いて行う「ガラガラうがい」と頬を動かして行う「ブクブクうがい」があります。ご高齢者の場合は、誤嚥(ごえん)予防のために「ブクブクうがい」を行いましょう。なお、「ブクブクうがい」も無理をすると誤嚥の恐れがあるため、十分に注意しながら行ってください。

うがいの前に確認すること
※お口に水を含まずに確認してみましょう。

・意識がはっきりとしているか
・唇を閉じたままにできるか
・舌を動かすことができるか
・水を吐き出すことができるか
・頬をふくらませたり縮ませたりできるか
・鼻の下や下唇の下をふくらませたり縮ませたりできるか

「ブクブクうがい」で注意すること

・姿勢
上体を後ろに倒すと誤嚥のリスクが高まるため、少し前かがみの姿勢で行いましょう。喉の奥まで水が入る「ガラガラうがい」は避けてください。

・水の量
一口分の水(ぬるま湯や冷めたお茶など)の量は、少なすぎず多すぎないようにします。うがい薬を使う場合は、念のために薄めておきましょう。

・ペース
リラックスしながら、ご高齢者のペースでゆっくりと行っていただきます。事前に首や肩のマッサージや体操をしておくとリラックスできるでしょう。

安全な「ブクブクうがい」の方法(いすに座って行う場合)

①コップにぬるま湯を入れ、ガーグルベースン(うがい受け)を用意します。
②少し前かがみの姿勢をとり、顎を引きます。
③ぬるま湯を口に含み、頬全体をふくらませて3回ほど「ブクブク」とうがいをします。
④うがい後に食べかすが残っている場合は、指に湿らせたガーゼを巻きつけて拭き取りましょう。



歯みがきができないときは、食後に「ブクブクうがい」をするだけでも爽快感が得られます。また、お元気な方は食前に「ブクブクうがい」をするとお口の準備体操になります。うがいの効果で意識がはっきりとし、お口の中が保湿されるため、食事をより安全においしくいただけるでしょう。

▼基本的な口腔ケアの手順についてはこちらをご覧ください。
安全においしく!介護初心者のための「口腔ケア」と「食事介助」

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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