着替え（衣服着脱）介助のポイント

心地よい衣服を選びましょう

吸湿性や保温性、通気性に優れた素材で、肌ざわりのよい衣服を選びます。また、伸縮性やゆとりがあるもの、軽いものを選ぶと心身の負担を減らせます。ご高齢者は乾燥などで肌が敏感になりがちなため、洗剤のすすぎ残しにも気をつけましょう。

寒くないように配慮しましょう

室温は23～25℃くらいに保ち、介助者の手や衣服も温めておきます。とくに冬場や着替えに時間がかかる場合は注意が必要です。ご高齢者の羞恥心を軽減するためにも、バスタオル等をかけて肌の露出をなるべく少なくしましょう。

安全で快適な環境を整えましょう

転倒などの事故を防ぐために、周辺は整理整頓しておきます。また、着替える前に排泄は済ませておきましょう。着替える衣類は、あらかじめ着る順番に重ねておくとスムーズです。扉やカーテンは閉めて、プライバシーを守りましょう。

動作ごとに声をかけましょう

ご高齢者に安心していただくために、声をかけながら介助します。「着替えましょうか」「上着の前を開けますね」「袖を通しますね」など、ひとつひとつの動作ごとに声かけをしましょう。

「脱健着患」で行いましょう

片マヒがある場合は、基本的にマヒがない方（健側）から脱いで、マヒがある方（患側）から着ます。片側に痛みや拘縮（こうしゅく）がある場合も同様です。「脱健着患（だっけんちゃっかん）」と覚えるとよいでしょう。

衣服のシワに気をつけましょう

衣類のシワは、褥瘡（じょくそう）の原因になります。とくに寝ている時間が長い場合は、シーツと同じように衣類のねじれやたるみにも気をつけましょう。

介助者の負担も軽減しましょう

なるべくご高齢者の身体に近づき、無理のない姿勢で介助しましょう。また、便利な介護用品を利用するのもひとつの方法です。マジックテープ付きなどで着脱しやすく、おしゃれなデザインの介護用衣服も市販されています。

座ったままでズボンを着替える（一例）

ズボンを脱ぐ

①安定した椅子やベッドに腰をかけていただき、足底はしっかりと床につけます。また、手すりや壁を支えにして、転倒を予防します。介助者はご高齢者ができない部分をサポートするようにしましょう。（マヒや痛み等がある場合は、介助者は患側に立って介助します。）

②ずり落ちないように注意しながら左右交互に腰を動かし、少しずつズボンを下げていきます。膝下まで下ろしたら、健側（マヒや痛み等がない方）の足から脱ぎましょう。

③前方に転倒しないように気をつけながら、患側の足も脱ぎます。

ズボンをはく

①はきやすいように、介助者はズボンの裾から手を通してたくし上げておきます。

②はくときは患側の足からズボンを通しましょう。このときに介助者はご高齢者のかかとを持つようにします。続いて健側の足にもズボンを通します。

③両足を通したら、腿（もも）までズボンを引っ張り上げます。左右交互に腰を動かしながら、少しずつズボンを上げていきます。前方や患側に転倒しないように十分注意しましょう。ズボンや下着を整えて、着心地を確認します。

寝たままで上着を着替える（一例）

かぶり式の場合

①ご高齢者に仰向け（仰臥位）になっていただきます。上着をわきの下あたりまでたくし上げます。

②ひじを曲げていただき、袖を片方ずつ抜きます。片マヒや痛み等がある場合は、健側から脱がせましょう。

③両腕を脱いだら、頭を上着から抜きます。両手で襟ぐりをできるだけ広げて、ご高齢者の顎が引っかからないように注意しながら抜きましょう。

④着るときは逆の手順で頭から先に入れて、患側から袖を通していきます。

前開きの場合（「脱ぐ・着る」を同時に行う方法）

①仰向けのご高齢者の上着のボタン等をはずします。まず片方の腕から肩を脱がせ、ひじを少しまげて袖を抜きます。

②もう片方はそのままで、脱いだ方の腕に新しい上着の袖を通します。介助者は新しい上着の袖口に手を入れて、ご高齢者の手をとって袖を上げていきましょう。

③着替えた方を上に横向き（側臥位）になっていただきます。脱いだ上着は身体の下に押し込みます。

④仰向けにもどっていただきます。身体の下にある脱いだ上着を引き出します。

⑤もう片方の腕も脱がせて、新しい上着の袖を通します。ボタン等をとめて、背中にシワやたるみがないように整えましょう。

着替えによって身体を動かすことは、生活リハビリにもなります。転倒などの危険に配慮しながら、ご自身でできることは無理のない範囲でやっていただくことが大切です。ご高齢者が着替えを嫌がる場合は、お好みの衣服を選んでもらい、着こなしを積極的にほめて着替えへの意欲を引き出してみましょう。