「意思疎通支援」は、障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業のひとつです。意思疎通が困難な方のために、手話通訳者や要約筆記者などを派遣し、コミュニケーションの円滑化を図ります。今回は、地方自治体が実施する「意思疎通支援」と、コミュニケーション支援を行う「意思疎通支援者」について解説します。
「意思疎通支援」とは

意思疎通を図ることに支障がある方に、意思疎通支援者の派遣等を行います。
手話通訳や要約筆記などの方法により、円滑なコミュニケーションを図り、障がいのある方の福祉の増進と社会参加の促進に資することを目的としています。
意思疎通が困難な方とその他の方のコミュニケーションを仲介するのは、厚生労働省令に基づく認定資格に合格した方や、地方自治体が実施する養成研修を受講した方です。
厚生労働省令に基づく資格者 |
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・手話通訳士 |
厚生労働省が養成カリキュラムを定めている者 |
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・手話通訳者 ・手話奉仕員 ・要約筆記者 ・盲ろう者向け通訳・介助員 ・失語症者向け意思疎通支援者 |
対象となる方
聴覚、言語機能、音声機能、視覚、失語、知的、発達、高次脳機能、重度の身体などの障がいや難病のため、意思疎通を図ることに支障がある方
実施主体
障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)の地域生活支援事業に基づいて、各地方自治体が実施しています。
都道府県 |
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・盲ろう者向け通訳・介助員の派遣 ・市町村が派遣できない場合などにおける手話通訳者・要約筆記者・失語症者向け意思疎通支援者の派遣 ・市区町村域や都道府県域を越えた広域的な派遣を円滑に実施するための市区町村間の派遣調整 |
市区町村 |
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・手話通訳者・要約筆記者・失語症者向け意思疎通支援者等の派遣 ・市区町村の窓口に手話通訳者を設置 |
利用者負担
意思疎通支援者の派遣等にかかる利用者負担については、地方自治体がそれぞれ規定していますが、多くの自治体で無料となっています。
(派遣者の交通費や必要な入場料などは利用者の負担となる場合があります。)
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「意思疎通支援」とは

「手話通訳士」「手話通訳者」「手話奉仕員」
聴覚障がいのある方とその他の方とが円滑にコミュニケーションを図ることができるよう、手話を用いて意思疎通を支援します。
・手話通訳士
厚生労働省令に基づく認定を受けた「社会福祉法人聴覚障害者情報文化センター」が実施する手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)に合格し、登録を受けた方です。
政見放送において、手話通訳を担当することができます。
・手話通訳者
手話通訳に必要な手話語彙(ごい)、手話表現技術、基本技術を習得している方です。
手話通訳者の養成研修を受講し、都道府県などが行う試験に合格する必要があります。
・手話奉仕員
市区町村および都道府県が実施する手話奉仕員養成研修事業において「手話奉仕員」として登録された方のことです。
「要約筆記者」
要約筆記」は、聴覚障がいのある方への伝達手段のひとつです。要約筆記者は、会話の内容をその場で要約し、ノートやパソコンなどで文字として伝えます。
要約筆記者になるには、養成研修を受講し、都道府県等が行う試験に合格する必要があります。
「盲ろう者向け通訳・介助員」とは

視覚と聴覚の両方に障がいがある方(盲ろう者)の耳と目の代わりとなり、通訳などのコミュニケーション支援、視覚情報の提供、外出時の移動介助などを行います。
「失語症者向け意思疎通支援者」とは
失語症の症状や困難さを理解し、コミュニケーション支援、外出・同行支援、身体介助などを行います。
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・言語障がいのある方とのコミュニケーションのポイント
地域生活支援事業には、必ず実施しなければならない「必須事業」と、市区町村の判断で行う「任意事業」があります。「意思疎通支援」は必須事業であるため、すべての自治体で行われています。サービスの利用を希望する方は、お住まいの市区町村にお問い合わせください。
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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