視覚障害があると「見えない」あるいは「見えにくい」ため、日常生活に困難が生じますが、ちょっとした配慮や工夫で暮らしやすくなります。今回は視覚障害の基礎知識や視覚障害のあるご高齢者との接し方、安全・快適に暮らすための工夫について解説します。
視覚障害とは
視力や視野などの視機能が十分でないために、眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても日常生活に支障がある状態のことを「視覚障害」といいます。
厚生労働省の「令和4年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」によると、身体障害者手帳を持つ視覚障害者数は推計で27万3000人です。
見え方によって、全盲、(医学的)弱視、ロービジョン(低視覚)などがあり、視覚障害者の多くを占めているのはロービジョンの方です。
視覚障害の原因となる病気は、緑内障、網膜色素変性(もうまくしきそへんせい)、糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)、黄斑変性(おうはんへんせい)などで、加齢と関係が深い病気も並んでいます。
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視覚障害と一口に言っても、「視力が低い」「視野が狭い」「光をまぶしく感じる」「色がわかりにくい」「ものがゆがんで見える」など、見え方や見えにくさは多様です。視覚障害のあるご高齢者とのコミュニケーションは、状態やご希望などに合わせてとるようにしましょう。
ここでは、一般的な接し方のポイントをご紹介します。
具体的な表現で説明する
「これ」「あれ」「むこうの~」「あそこに~」などの指示語や指差し表現は、情報が正確に伝わらないことがあります。説明するときは、「(あなたの)隣に~」「右側に~」「駅を背にして左に~」のように、具体的な表現でわかりやすく伝えましょう。
左右については、基本的に「相手から見て右か左か」が基準になります。
視覚以外の感覚を活用する
嗅覚・触覚・聴覚など、視覚以外の感覚も活用しましょう。たとえば何かをすすめる場合は、説明しながら触っていただくと正確な情報が伝わりやすくなります。ご高齢者の手をとって何かに触れていただくことは効果的な方法ですが、驚かせないために声をかけてから触れるようにしましょう。
クロックポジションを利用する
ご自身でお食事を楽しんでいただく方法のひとつに、時計の文字盤に見立てた「クロックポジション」があります。テーブル上では、ご高齢者の向こう側(奥)が12時、手前が6時です。献立は「12時の位置に主菜の焼き魚、5時には味噌汁、8時にご飯...」のように説明します。熱いものや汁物などは、触って位置を確認していただきましょう。料理の盛り付けも、お皿を時計に見立てて説明することができます。食事中は実況中継のように説明しすぎず、さりげなく見守ることがポイントです。
気をつけること
- ・声の大きさや言葉遣いにも気を配り、優しいトーンで、ゆっくり、はっきりと話しかけましょう。
- ・もし会話中に席をはずす場合は、黙ってその場から離れず、戻ってきたときも一声かけるようにします。物も黙って動かさないようにしましょう。
- ・「見えないから視覚的イメージは必要ないだろう」と決めつけず、食事の彩りや服装などの色彩も楽しんでいただきましょう。
ガイド(誘導)する方法
白杖(はくじょう)という白い杖を持って歩いている方が戸惑っている姿を見かけたら、まずは正面から「何かお困りですか」「お手伝いしましょうか」と声をかけます。
いきなり身体に触れたり、白杖をつかんだりしないようにしましょう。
もし誘導を頼まれたら、「どうしたらよいか教えてもらえますか」と尋ねてから行動します。
ガイドは、白杖を持っていない側に立ち、半歩前を歩くようにします。腕(ひじの上あたり)につかまってもらうか、軽く肩を持ってもらうのが一般的です。歩幅や歩く速度は、相手のペースに自然にあわせましょう。
狭い場所を通るとき
狭い通路や混雑した場所を通るときは、先に「ここから狭くなります」と声をかけます。ガイドがつかまれている腕を背中の方に回し、相手には真後ろに入ってもらって一列で通りましょう。
段差や障害物があるとき
段差の手前で「5センチくらいの段差があります」「一段下がります」など声をかけ、相手に杖で確認してもらいながら、ゆっくりと歩くようにします。何か障害物があるときは、「○○があります」「右に避けますね」などと声をかけましょう。
階段を通るとき
階段の手前で「ここから上り(下り)階段です」と声をかけ、ガイドが一段先を進みます。途中で立ち止まらず、一定のリズムで上り(下り)、「あと3段で終わります」「次の一段で終わります」などと伝えながら誘導します。相手が上り(下り)終わったら、立ち止まって「階段が終わりました」と伝えましょう。
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障がいのある方の外出支援や介護などを行う「ガイドヘルパー」ご自宅で安全・快適に暮らすための工夫
視覚障害のある方は、住み慣れたご自宅でも転倒などのリスクがあるため、安全に暮らせる工夫をすることが重要です。また、適切な補助具や支援機器を使ったり、福祉制度を利用したりすることで不自由さの軽減が図れます。
安全な環境をつくる
転倒予防のために、手すりの設置や段差の解消をします。部屋の配線コードは露出しないようにし、床の上には滑りやすいものやつまづきやすいものは置かないようにしましょう。観音開きの戸棚やドアの半開きも危険です。キッチンでは扇形に開く「ふきんかけ」の使用を控え、床に水がこぼれた際はすぐに拭きとります。
物の置き場所を一定にする
ご家族で物の置き場所を決めておき、使ったら元に戻すようにしましょう。収納の位置を変えた場合はその旨を伝え、ご本人に触って確認していただきます。衣類やタオルなどは重ねて収納せず、引き出しの高さにたたんでから立てて入れると取り出しがスムーズです。
わかりやすい印をつける
点字が読める場合は、日常で使うものに点字を打ったタックペーパーを貼りましょう。点字が読めなくても、市販の凸型テープや輪ゴム等で印をつけることができます。ズボン、下着など前後がわかりにくい衣類には、リボンや糸印をつけると着替えやすいです。最近は、凹凸の印がついたシャンプーや牛乳パックなど、市販のユニバーサルデザイン(※)・バリアフリー商品も増えています。
※ユニバーサルデザインとは、老若男女といった差異、障害・能力の如何を問わずに利用することができる施設・製品・情報の設計(デザイン)を指します。
適切な用具を使用する
遮光眼鏡・単眼鏡・拡大読書器・音声時計・触読式時計などの用具を使うことで生活がしやすくなります。筆記具・調理器具・電卓・タイマー・体温計等にも、ロービジョン(低視覚)の方向けに工夫された商品があります。また、家電製品は音声ガイドつきのものが便利です。最近では、視覚的な補助機能がついたスマートフォンやタブレットを使いこなすご高齢者も増えてきました。
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高齢化により、今後も「ロービジョン」の方が増加すると予測されています。たとえ眼が見えにくくなったとしても、なるべくQOL(生活の質)を維持することが重要です。視覚障害の方を支援する活動として、保持されている視機能を最大限に活用し快適な生活を送れるようにサポートする「ロービジョンケア」があります。医療的・福祉的・心理的など、さまざまな面からのサポートを活用しながら「できないこと」より「できること」を増やしていきましょう。
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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