季節の変わり目は要注意!体調を崩しやすいご高齢者の体調管理

2019/09/18

加齢により体温を調節する機能が低下しているご高齢者は、暑さや寒さに適応することが難しくなっています。特に気温の変化が大きい季節の変わり目は体調を崩しやすいため、十分な注意が必要です。今回は、本格的な秋に向かう時期にご高齢者に気をつけていただきたい病気や対処法についてお伝えします。

季節の変わり目に多い心身の不調

季節の変わり目に多い心身の不調


季節の変わり目に体調を崩してしまう原因のひとつに、自律神経のバランスの乱れがあります。自律神経には、相反する働きをする「交感神経」と「副交感神経」があります。

交感神経

主に昼間に働き、心身の活動力を高める神経です。血圧を上げる・心拍数を増やすなどの作用があります。

副交感神経

主に夜間に働き、心身を休息・回復させる神経です。血圧を下げる・心拍数を減らすなどの作用があります。

通常は、この2種類の自律神経が身体の機能を調整してバランスを保っています。しかし、自律神経の働きは加齢とともに不安定になりがちです。そして、寒暖差が激しい季節の変わり目は、さらに自律神経が乱れやすくなります
自律神経の調整がうまくいかないことで起こる心身の不調は、食欲不振・微熱・倦怠感・不眠・便秘・憂うつ・無気力など多種多様です。例えば、「レビー小体型認知症」の方には、起立性低血圧や便秘、発汗異常(多量の汗をかく)などの自律神経症状がよくみられます。

また、無意識のうちに体温を微調整することも、自律神経の働きのひとつです。そのため、自律神経のバランスが乱れると体温調節がうまくできなくなります。このような自律性体温調節反応の異常は、ご高齢者の熱中症や低体温症の原因になることがあります。

「いつもと違う」と感じた時の対応

ご高齢者の病気は、症状がはっきりと出ないことがあります。また、自覚症状も乏しいために病気を見逃してしまうことが少なくありません。「なんとなく元気がない」「いつもと様子が違う」と感じるときは、重大な病気が隠れている可能性もあります。ご本人が言葉で訴えなくても、周囲の方が早めに不調に気づいて対応することが大切です。

食欲がない

食欲がない


食欲不振の原因は、加齢によるものから心身の病気までさまざまです。急に食べなくなった場合は無理に食べさせようとせず、まずは原因を考えてみましょう。病気が原因の場合は、胃潰瘍・十二指腸潰瘍等の消化器疾患のほか、感染症・心不全・電解質異常などが考えられます。また、脱水症や腎機能低下(腎不全)が原因の場合もあります。

食欲不振が長引いている場合は、うつ病・認知症等の精神面での状態や、服用している薬の副作用などが考えられます。なお、食べているのに急に体重が減る場合は、糖尿病や甲状腺機能亢進症などを疑ってみることが必要です。

医療機関を受診して病気が見つからない場合は、環境の変化やストレス、不規則な生活習慣などによって自律神経のバランスが崩れているのかもしれません。お食事の内容や回数を工夫したり、楽しく食べられる雰囲気を作ったりしてみましょう。また、口腔トラブル(口内炎・歯周病など)がないかを確認し、口腔ケアも見直してみることも重要です。

お食事や口腔ケアについて詳しくは下記の記事をご覧ください。

ご高齢者が食べやすい食事とは?栄養たっぷりでおいしい介護食

お口の中から健康に!介護予防にも役立つご高齢者の口腔ケア


発熱がある

発熱がある


ご高齢者は体温を調節する機能が低下するため、病気になっても発熱しないことが少なくありません。微熱でも軽症とは限らず、熱が出たときは重症になっていることもあります。ご高齢者の発熱で多いのは、感染症(風邪・誤嚥性肺炎・尿路感染症など)です。ほかにも、脱水症・膠原病・褥瘡(じょくそう)などによる発熱の可能性があります。

急に高熱が出たときは、原因を判明させてから治療をすることが重要です。安易に解熱剤を使用するのではなく、まずは医療機関に相談をしましょう。発熱とともに意識障害やけいれん、呼吸困難などがある場合は、ただちに救急車を呼んでください。

また、同様にご高齢者は体温調節機能の低下により、厚着や布団の掛けすぎ、暖房の効きすぎ等によって、身体に熱がこもり微熱が出ることがあります。室温などの環境を改善しても平熱より1 ℃ 以上高い場合は「発熱」と考え、ほかの症状がないか確認しましょう。
ご高齢者は一般的に体温が低い傾向にありますが、平熱には個人差があります。そのため、普段から定期的に体温を測って平熱を把握しておくことが大切です。体温は起床直後に低く、食後や入浴後に高く出ることがありますから、食前や食間に1日3回ほど測るとよいでしょう。


全身がだるい

全身がだるい


倦怠感(だるさ)も、季節の変わり目に自律神経のアンバランスによって起こりやすい症状です。また、ご高齢者は筋肉量の減少や低栄養などによって倦怠感を感じることがあります。
しかし、急にだるくなった場合や十分な休養をとっても回復しない場合は、心身の病気が隠れているかもしれません。「だるい」と訴えるご高齢者に多いのは、貧血・感染症・うつ病・心臓の病気などです。また、服用している薬が原因になっている可能性もあります。

病気ではないけれど「疲れやすくて身体がだるい」という場合は、日常生活をチェックしてみましょう。「睡眠不足ではないか」「バランスのとれた食事をとっているか」「体力が落ちて入浴やレクが負担になっていないか」などを確認します。
「朝日を浴びる」「30分ほど昼寝をする」「夜の照明を控えめにする」などの工夫で生活リズムを整えると、気持ちよく過ごせるかもしれません。また、ご家族もできるだけ休息や気分転換を取り入れて、ストレスを溜めないようにすることが大切です。



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ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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