関節の動きが制限された状態のことを拘縮(こうしゅく)といいます。拘縮のある方のケアでは、ご本人と介助者の負担をできるだけ少なくし、進行を防ぐことが大切です。今回は、拘縮の基礎知識やケアのポイントについてお伝えします。
拘縮(こうしゅく)とは

関節(骨と骨とが互いに動ける状態でつながっている部分)が、なんらかの原因によって動かしにくくなった状態のことを拘縮(こうしゅく)といいます。
関節の周りには、筋肉や腱(けん)、皮膚などの軟らかい組織(軟部組織)があります。
この軟部組織が固くなったり短縮したりすることにより拘縮が生じると、関節の可動域(動かすことができる範囲)が狭くなります。
曲がったままで伸びなくなる状態を屈曲(くっきょく)拘縮といい、伸びたままで曲がらなくなる状態を伸展(しんてん)拘縮といいます。
固縮(こしゅく)との違い
固縮(筋固縮とも)とは、筋緊張が亢進し、筋肉がこわばる症状のことです。固縮のために関節を動かす機会が少なくなると、拘縮(こうしゅく)を起こしやすくなります。
拘縮が起こりやすい部位と影響
拘縮が起こりやすいのは、手指、肩、肘(ひじ)、膝(ひざ)、足、股などの関節です。拘縮があると、その部位によって以下のような影響が出てきます。
手・指の関節
- ・手指が握ったままの状態になり、物がつかみにくい
- ・爪が手のひらに食い込んで痛い、傷つけやすい
- ・手のひらの清潔が保ちにくい
肩・肘(ひじ)の関節
- ・着替えがしにくくなり、時間がかかる
- ・起き上がる、食事するなどの動作や家事が難しくなる
- ・脇の下の清潔が保ちにくい
膝(ひざ)の関節
- ・立つ、座る、階段を上り下りするなどの動作が不安定になる
- ・座位(座った姿勢)の保持が難しくなる
- ・歩きにくくなり、転倒しやすくなる
- ・靴下や靴の着脱が困難になる
足関節
- ・尖足(せんそく)※ になりやすく、歩行が難しくなる
- ・胼胝(たこ・べんち)※ ができることがある
- ・座位が不安定になりやすい
- ・車いすのフットサポートに足の裏がつかなくなり、事故が起こりやすい
※尖足(せんそく)とは、足の甲側が伸びて、足先が下を向いたままの状態
※胼胝(たこ・べんち)とは、皮膚の一部が厚く硬くなった状態のこと。
股関節
- ・衣類の着脱が困難になる
- ・座位の保持、排せつの姿勢が難しくなる
- ・歩きにくくなり、転倒しやすくなる
- ・浴槽に入るのが難しくなる
拘縮の主な原因

拘縮は主に、関節を動かす機会が減ることによって起こります。
加齢の影響やパーキンソン病等の病気、麻痺(まひ)、痛み、むくみ、寝たきりなどの要因によって、活動性が低下すると、関節が硬くなり、可動域が狭くなります。
そして「関節を動かせない」または「動かしたくない」という状態が続くと、さらに関節可動域は狭くなり、拘縮が進行してしまいます。
拘縮(こうしゅく)ケアのポイント

ゆっくりと介助し、痛みを与えない
アイコンタクト(目を合わせる)をとり、触れる場所と次に行う動作(例えば「腕を外側に開きますね」など)を伝え、こまめに声をかけながら、ゆっくり丁寧に介助しましょう。
介助者の手が冷たいときは、温めてから触れるようにします。
手や足を動かす時は、上からつかむのではなく下から支えるようにし、関節に近い部分を持ちましょう。
また、手のひらや前腕全体などを使い、接する面をできるだけ広くして支えると安定感が増します。
リラックスできる姿勢を保つ
拘縮のある方のケアでは、適切で安楽な姿勢を保つことが重要です。
痛みや不安などを感じることなくリラックスできる肢位(しい)を保持し、身体に負担がかからないようにします。
ポイントは、枕やクッションなどを使って、身体とベッドとのすき間を減らす(点ではなく面で支える)ことです。また、シーツのしわや服の縫い目にも気をつけましょう。
同じ姿勢を長く続けない
同じ姿勢を長時間続けると、身体の一部分に圧力がかかり、身体がこわばってしまいます。
褥瘡(じょくそう)の原因にもなりますので、クッションやエアマットレス等を活用して体圧を分散したり、体位変換を行ったりしましょう。
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拘縮の進行を遅らせるためには、日常生活動作(起居動作・移乗移動・食事・更衣・排せつ・入浴・整容)の中でなるべく関節を動かすことが大切です。
動かす時は無理をせず、痛みを感じない程度にゆっくりと動かしましょう。
血行促進やリラックス効果のある部分浴も、拘縮の予防・改善につながるといわれています。
足浴(そくよく)や手浴(しゅよく)を行う時は、手足を温めてから、拘縮部分をゆっくり開いて洗いましょう。
「シャボンラッピング」を取り入れると、負担を軽減できる場合もあります。
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ご自身で身体を動かすことが困難な場合は、通所系サービス(通所リハビリテーションや通所介護)、訪問系サービス(訪問リハビリテーションや訪問看護、医療保険の訪問マッサージ)などを利用し、機能訓練を受けるとよいでしょう。

拘縮のある方の座位のポジショニング
できるだけ離床して正しい座位姿勢をとることは、拘縮や廃用(はいよう)症候群の予防につながるといわれています。しかし、姿勢が崩れたまま座っていると、身体に悪影響を与えかねません。
拘縮のある方は、座ったときに身体が横や前に傾いたり、ねじれたりすることがあるため、座り方に問題がないか確認することが大切です。
理想的な座位姿勢
正面から見たとき
- ・左右の足が床(車いすの場合はフットサポート)についている
- ・腕が支えられている
- ・骨盤、左右のひざ、左右の肩のラインが水平になっている
- ・(車いすの場合)サイドガードとのすき間が左右で同じになっている
横から見たとき
- ・頭頂部から骨盤が一直線になっている
- ・太ももが座面についている
- ・ひざの裏にすき間がない
真上から見たとき
- ・背もたれとのすき間が左右で同じになっている
- ・左右の肩の位置が前後にずれていない(ねじれていない)
- ・左右のひざの位置が前後にずれていない
※適切な運動や座り方、福祉用具については理学療法士などの専門職に相談しましょう。
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第46回(2019年) 国際福祉機器展レポート(2)暮らしをサポートする福祉用具家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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