地域包括ケアシステムを実現するために重要な「地域ケア会議」の概要と５つの機能

2023/03/27

介護の基本

支援や介護、医療を必要とするご高齢者を地域全体で支え合う体制のことを「地域包括ケアシステム」といいます。この地域包括ケアシステムの実現に向けた一手法として期待されているのが「地域ケア会議」です。今回は「地域ケア会議」の概要や5つの機能について解説し、実践事例もご紹介します。

「地域ケア会議」とは

少子高齢化が進むなか、ひとり暮らしやご夫婦のみの高齢者世帯、認知症の方が増加しています。
高齢化の進み方には大きな地域差があることから、地域の特性に応じた。地域包括ケアシステム（住まい、医療、介護、予防、生活支援を地域で一体的に提供する体制）の構築が進められています。
「地域ケア会議」とは、地域包括ケアシステムの実現するためのひとつの方法として開かれる話し合いの場のことです。

「地域ケア会議」の目的

ご高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備（地域づくり）を同時に進めていくことを目的としています。

「地域ケア会議」の実施主体と主な参加者

「地域ケア会議」は、地域包括支援センターまたは市町村が主催します。
参加するのは、行政職員や地域包括支援センター職員、介護支援専門員（ケアマネジャー）、介護事業者、医療関係者、民生委員などです。参加者は会議の目的に応じて選定されます。

「地域ケア会議」の５つの機能

出典：厚生労働省「地域ケア会議の概要」

　①個別課題の解決

多職種が協働して、ご高齢者の個別ケース(支援が困難な事例など) について検討し、解決を図ります。
そうしたプロセスを通して、介護支援専門員（ケアマネジャー）の自立支援に資するケアマネジメント等の質を高める効果もあります。

　②ネットワークの構築

ご高齢者の実態把握や課題解決のために「地域包括支援ネットワーク」を構築し、強化します。

　③地域課題の発見

個別ケースの検討の積み重ねを通じて、ご高齢者のニーズや地域課題を把握・共有し、対応策を検討します。

　④地域づくり・資源開発

それぞれの地域に必要な資源の発掘、地域づくりを行います。

　⑤政策形成

介護保険事業計画への反映などの政策形成につなげることで、地域のケア体制を整備していきます。

「地域ケア会議」の実践事例

東京都立川市〈個人と地域を結び付けていく個別支援

視力障害がいのある要介護2の認知症高齢者・Ａさんの事例

Ａさんは昔から公営住宅に住んでおり、近隣住民とも顔見知りの関係性はありました。
しかし認知症が進行して徘徊が始まり、火の元の心配が大きくなったため、近隣住民と自治会から担当の介護支援専門員（ケアマネジャー）に苦情が入り、介護支援専門員から地域包括支援センターへ相談が持ち込まれました。

Ａさんは訪問医や訪問介護など複数のサービスを利用していたことから、担当の介護支援専門員のケアマネジメントを支援する目的でＡさん宅に同行訪問しました。
火の元についての課題を解決するため、ガスコンロから電気調理器への交換、自動消火器の取り付け、利用しているサービスの再調整を行いました。

その後、地域包括支援センター主催により、担当医や各サービスの担当者、自治会役員を招集しての会議が開かれました。
ケアチームと地域住民が顔を合わせ、Ａさんが地域での暮らしを継続していけることを目的とした調整を行いました。また、近隣住民に安全性の確保ができた旨を説明し、日常生活に関わる必要な情報を共有しました。

近隣住民がサービス調整により安全性が確保されたことを納得した後、改めてＡさん宅で会議を開催し、Ａさんと近隣住民、サービス担当者が顔合わせをして、今後のＡさんの地域での暮らしを確認する場を持ちました。

その結果、近隣住民の理解を得られただけでなく、ご本人を取り巻く関係者の輪が広がり、その地域で暮らし続けることが可能となりました。

出典：地域ケア会議運営マニュアル（長寿社会開発センター）第3章地域ケア会議の実践例

高齢になっても住み慣れた場所で安心して暮らし続けるためには、地域で支え合う体制づくりが重要です。
ご高齢者を支える現役世代が減少していくため、今後は行政だけでなく多職種の連携や地域の方の協力がますます求められるようになるでしょう。