育児と介護が重なる「ダブルケア」とは?その実態と対策

「ダブルケア」という言葉をご存知でしょうか?ダブルケアとは、育児と同時に親御さんや親族の介護を担うことをいいます。晩婚化が進み、高齢出産が増えたことなどから指摘されるようになってきたダブルケアの問題。今回は、この「ダブルケア」の実態と対策についてご説明します。

ダブルケアの実態

ダブルケアの実態

ダブルケアとは

人間は生まれてから最期を迎えるまでの間、自分以外の人の支援を受けなければならない時期が2回あります。それは、生まれて数年の「育児」の時期と、高齢になり身体機能が衰えることにより「介護」が必要になる時期です。
この「育児」と「介護」が同時期に訪れる状態のことを「ダブルケア」といいます。

ダブルケアの背景

ダブルケアが増えている背景には、女性の社会進出などによる晩婚化や晩産化があります。
これまでは、育児と介護を行う時期に時間差がある場合がほとんどでした。しかし、出産年齢が高齢化している現代では、育児期に親の介護も同時に引き受ける世帯の増加が予測されています。
例えば40歳前後で出産した場合、子育てが大変な時期に高齢の親御さんの健康や介護についても考えないといけません。

また、ダブルケアは現代日本の社会問題である「少子高齢化」とも密接に関係しています。
1970~80年代とは違い、現代はケアする側の兄弟姉妹が少なく、親戚関係や地域との関わりも希薄です。さらに、ダブルケアと仕事を両立するとなると、その負担の大きさは計り知れません。

ダブルケア人口の推移やその内容

ダブルケア人口の推移やその内容

平成27年度の内閣府男女共同参画局の調査では、ダブルケアを行う人の人口は約25万人でした。男女別では、女性が約17万人、男性は約8万人で、女性が男性の約2倍となっています。

ダブルケアを行っている人の年齢に注目してみると、平均年齢は男女ともに40歳前後で、まさに働き盛りの人が直面する問題だといえます。そして、男女ともに30~40歳代が約8割を占めており、育児のみを行う人とほぼ同様という結果でした。

参照:内閣府男女共同参画局ダブルケア人口・世帯の推計 [PDF形式:1.45MB]
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/zenbun/s1_2_3.html

ダブルケアによって起こる問題

ダブルケアによって起こる問題

女性に対する手助けが少ない

ダブルケアに直面する世代は、まだまだ夢がある世代です。マイホームやマイカーが欲しいという希望もあるでしょう。また、当然子どもの将来に備えて貯蓄も必要になってきます。
しかし、育児・介護・仕事の3つを同時に行なうのは至難の業といえますから、ダブルケアに直面すると仕事に影響が出てきます。

前述の調査では、ダブルケアに直面する前後の業務量や労働時間を「変えなくてすんだ」と答えた人は男性で約半数ですが、女性は約3割となりました。
また、「業務量や労働時間を減らした」と答えた人は、男性が約2割、女性が約4割で、そのうち離職して無職になった人は男性で2.6%、女性で17.5%でした。
ダブルケアを行う無職女性の約6割は就業を希望しているにもかかわらず、ダブルケアが及ぼす就業への影響は男性より女性のほうが大きいのです。

ダブルケアの対策

ダブルケアの対策

在宅介護サービスを利用する

育児をしながら在宅介護サービス利用する方法があります。在宅介護サービスとは、ご自宅で生活をしながら介護保険サービスを組み合わせて利用することです。在宅介護サービスでは、ご自宅から施設へ通うデイサービス(通所介護)や短期間の宿泊を伴うショートステイなどがおすすめです。

例えば、保育園や幼稚園がお休みとなる土日に利用することで、負担を軽減することができます。一週間単位で考えて、育児と介護がなるべく重ならないようにするといいでしょう。

精神的な負担を軽減する

基本的には市区町村の窓口に連絡するところから始まります。多くの場合、育児(子育て)と介護は同一の管轄になるため、例えば「〇〇福祉課」等に連絡してみましょう。

さらに具体的な相談窓口として、育児なら「子育て世代包括支援センター」、介護なら「地域包括支援センター」があります。これらの支援センターでは、各種資格を持つ専門スタッフが、子育てや介護に関する総合的な相談に応じてくれます。

老人ホーム等への入居

在宅介護が困難な場合には、施設入居を検討するのもひとつの方法です。例えば、空室がなく待機が必要となることが多い特別養護老人ホームは、ダブルケアをしているという状況を説明すると、優先的に入所できる場合があります。この場合は、市区町村窓口もしくは希望する施設に問い合わせてみましょう。

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ダブルケアの問題は、ひと昔前ならあまり考えられなかったでしょう。それは三世代で生活することが多く、家族全員で協力して育児と介護をしていたため、負担が分散されていたからです。核家族化が定着した現代社会では、様々な社会資源や支援制度を活用して、なるべくダブルケアの負担を軽くするようにしましょう。

ライター:真っ赤なトマト

介護福祉士養成の専門学校を卒業後、特別養護老人ホームに介護スタッフとして7年間勤務する。施設ケアマネジャーや生活相談員などを経験して今に至る。資格は介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士、社会福祉主事任用資格などを取得している。

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