ご高齢者に多い「加齢性難聴」とコミュニケーションのポイント

加齢とともに聴覚の機能は低下し、コミュニケーションが難しくなることが多くあります。しかし、話し手が少し工夫することで、会話や交流を楽しむことができます。今回は、ご高齢者に多い「加齢性難聴」について解説し、聞こえにくいご高齢者とのコミュニケーション方法もお伝えします。

ご高齢者に多い「加齢性難聴」とは

ご高齢者に多い「加齢性難聴」とは

難聴にはさまざまな種類がありますが、ご高齢者に多くみられるのは「加齢性難聴」です。

内耳の蝸牛(かぎゅう)にある有毛(ゆうもう)細胞が、加齢により壊れて減少すると、難聴や耳鳴りなどの症状が起こります。一度壊れてしまった有毛細胞は元に戻らないため、日常生活やコミュニケーションに支障をきたす場合は、補聴器等で聴力を補うことがあります。

耳の構造

難聴が進むと、車や自転車が近づいても気づかない、クラクションが聞こえないなど、危険の察知が遅れてしまうことがあります。 また、言葉を聞きとれず、会話がうまくいかなくなると、自信をなくして人との交流を避けたり、閉じこもりがちになったりすることから、認知機能の低下なども懸念されます

「加齢性難聴」の特徴

「加齢性難聴」の特徴

症状に気づきにくい

加齢性難聴は少しずつ進行するため、ご本人に「聞こえにくくなった」という自覚がないことがあります。また、ご本人が加齢による難聴を受け入れたくない場合があり、ご家族や周囲の方が症状に気づくケースも少なくありません。


高音から聞こえにくくなることが多い

加齢による難聴は、一般的に高い周波数の音(体温計や家電製品の電子音、電話の呼び出し音など)から徐々に聞こえにくくなります。


言葉を聞きとるのが困難になる

音が割れたり、歪んだり、こもって聞こえる、早口での会話が分かりにくいなどの症状があり、言葉を聞きとることが難しくなります。


小さな音は聞こえにくく、大きな音はうるさく聞こえる

小さな音は聞こえにくいのですが、大きな音は響いてうるさく感じてしまうことがあります。


聞こえにくい方とのコミュニケーション

聞こえにくい方とのコミュニケーション

聞こえやすい環境を整える

雑音が多いと聞こえにくいため、テレビを消すなどして、できるだけ静かな環境を整えます。表情や口の形がよく見えるよう、明るい場所を選びましょう。
近づいて話すと聞こえやすくなりますが、近づきすぎると不愉快に感じることもありますので、一定の距離を保つとよいでしょう。補聴器をつけている場合は、1~2mほどの距離が理想的といわれています。


注意を向けてから話し始める

ご高齢者の難聴では、どの方向から声が聞こえてくるのか分かりにくいこともあります。
相手の視界に入り、お名前を呼ぶ・視線を合わせる・身ぶりで合図するなどして、こちらに注意を向けてから話し始めましょう。


向かい合って話す

横や後ろから話しかけると、聞こえにくいことがあります。
コミュニケーションをとるときは、相手に向かい合い、顔を見ながら話すようにしましょう。口を大きく動かし、表情も確認しながら声の大きさを調節します。 片耳に補聴器をつけている方には、つけている側から話しかけましょう。


ゆっくり・はっきりと話す

高齢になると、小さい声や大きすぎる声、早口の言葉などが聞こえにくくなります。また、カ行・サ行・タ行・パ行の音は特に聞きとりにくいといわれています。
そのため、普通より少し大きめの声で、ゆっくり、はっきりと話すようにしましょう。
一音一音を区切るのではなく、「言葉のまとまり」で区切って話すことがポイントです。(例:こんにちは / 今日は / 天気が / よいですね)


筆談・身ぶり・手ぶりなども交える

言葉だけでなく、筆談、見ぶり、手ぶりなども交えて、視覚的に理解できるように工夫します。
特に話し手がマスクをつけていると、口元や表情が隠れてしまい、言葉も不明瞭になります。紙や筆記具を持ち歩き、コミュニケーションボード(イラストを指さしながら意思を伝えるツール)なども活用するとよいでしょう。


▼関連記事
お客様との上手なコミュニケーション方法 ~介護の仕事に携わる方へ~


聞こえなくなった音を補う「補聴器」

聞こえなくなった音を補う「補聴器」

補聴器は、聞こえなくなった音を補う機器です。慣れるまで時間がかかるケースも多くあります。
補聴器の種類は、耳かけ型、耳あな型、ポケット型などさまざまです。使い心地やお手入れ方法もそれぞれ異なります。

マスクの着用により聞きとりにくい場合は、補聴器の音を調整することで改善できる場合があります。
また、マスクを外すときに補聴器が落下してしまうことがあります。紛失や破損を防ぐために、補聴器の落下防止用品を活用するとよいでしょう。

最近は、事前に試すことができない通信販売などでの補聴器トラブルが増加しています。
補聴器を購入する場合は、信頼できる販売店で試聴し、ご自身に合ったもの、納得できるものを選びましょう。

・公益財団法人テクノエイド協会「認定補聴器専門店一覧」
https://www5.techno-aids.or.jp/shop/map.php 

聴覚の衰えは40歳代から始まるといわれています。「聞こえにくい」と感じたら、「年のせいだから...」と決めつけず、早めに専門医(耳鼻咽喉科医)に相談しましょう。しっかりと検査してもらい、治療は可能かどうか、本当に補聴器が必要かどうかなどを確認することが大切です。

めまいの陰に深刻な病気が隠れている場合も少なくありません。介護する方は、ご高齢者特有の症状や危険性、対処法などを知っておくと良いでしょう。

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

ご高齢者に多い「加齢性難聴」とコミュニケーションのポイント

Facebookページで
最新記事配信!!

あなたにおすすめの記事

関連記事

介護の方法のおすすめ記事