お客様との上手なコミュニケーション方法 ~介護の仕事に携わる方へ~

介護の現場では、ご利用されるお客様をはじめ、そのご家族や職種の異なる同僚との円滑なコミュニケーションが欠かせません。特に「お客様とのコミュニケーションが難しい」と悩む方は多いのではないでしょうか。今回は介護の仕事に携わる方のために、すぐに役立つコミュニケーションの基礎知識やスキルをお伝えします。

介護現場でのコミュニケーションの基本

介護現場でのコミュニケーションの基本

傾聴・受容・共感

「傾聴」とは、ただ「聞く」のではなく、その奥にある気持ちを酌み取りながら、耳を傾け「聴く」ことをいいます。「受容」とは、お客様の言葉や感情について否定も肯定もせず、ありのままに受け入れることをいいます。そして「共感」とは、その気持ちを理解して温かく寄り添うことをいいます。

自己開示

お客様に心を開いていただくためには、まず自分から心をオープンにしなくてはなりません。自分の家族や趣味などを会話の入口とすることで、話題が広がりやすくなることもあります。

余裕のある態度

ゆっくりと、間をおきながら落ち着いた態度で接しましょう。時間的なゆとりがない場合でも、精神的なゆとりがあると余裕をもって接することができます。精神的余裕がないと自覚したら、仕事の目的や意義を再確認したり、時間配分を見直したりしてみます。

言語的・準言語的コミュニケーション

言葉(言語)や語調(準言語)によるコミュニケーション


言葉(言語)によってコミュニケーションをとる手段を、「言語的コミュニケーション」といいます。また、声の強弱・長短・抑揚・話す速度など言葉にともなう語調(準言語)によるものを、「準言語的コミュニケーション」といいます。
自分の気持ちを上手にお客様に伝えるためには、言葉だけではなく語調も意識することが重要です。

言語的コミュニケーションのポイント

・挨拶
良好な人間関係を築くために、生活の節目で積極的に挨拶をしましょう。自然な笑顔で、ポジティブな印象の明るい挨拶を心がけます。

・敬語
言葉に親しみを込めることは大切ですが、なれなれしい言葉遣いで相手に不快な思いをさせてしまう場合もあります。正しい敬語(尊敬語・謙譲語・丁寧語)と普通語を臨機応変に使い分けましょう。

・気づかいや心配りの言葉
自分本位ではなく、お客様本位の言葉を使います。相手の立場に立って考えることで、自然と気づかいや心配りの言葉が出てくるはずです。

・肯定的な言葉
「~してはダメです」などの否定的な言葉は避け、たとえば「私に任せてくださると嬉しいです」などの肯定的な言葉に言い換えます。また、お客様の自信や意欲を高めるために、良いと思ったことは素直に言葉に出して伝えましょう。

・会話
話を熱心に聴いていることを伝えるために、自然な相づち、うなづきを入れます。また、話の節目に「~ですね」とお客様の言葉の一部を自然に繰り返しながら聴くとさらに効果的です。
質問をするときは、答え方が「はい」や「いいえ」などになる「閉ざされた質問」と、答え方が決まっていない「開かれた質問」を上手に使い分けます。

準言語的コミュニケーションのポイント

・口調
親しみを込めた優しいトーンを基本とし、丁寧な口調を心がけます。単調にならないように強弱や抑揚をつけて、語頭や語尾は強めないように気をつけましょう。

・声の大きさ
小さすぎず大きすぎない適度な大きさの声ではっきりと話します。お客様お一人おひとりに合わせて声の大きさを調節することも大切です。

・話す速さ
ご高齢者のペースに合わせて、ゆっくりと丁寧に話しましょう。たとえ忙しくても早口にならないように注意します。

非言語的コミュニケーション

非言語的コミュニケーション


言葉(言語)以外のコミュニケーション手段として、装い・表情・目線・姿勢・動作などによる「非言語的コミュニケーション」があります。非言語コミュニケーションの研究者、レイ・ L・バードウィステル氏の研究によると、2者間の対話におけるメッセージのおよそ65%は「非言語的コミュニケーション」によって伝わるのだそうです。

介護現場でも、スタッフとお客様が無意識に非言語によってメッセージを伝え合っていることになるでしょう。また、意識的に非言語を使ってメッセージを伝えたり、お客様の非言語を観察してその想いを酌み取ったりすることもできるわけです。

非言語的コミュニケーションのポイント

・身だしなみ
第一印象を左右する身だしなみも非言語の一つです。髪型や化粧、服装、爪などを確認し、清潔感のある装いを心がけます。

・表情
好印象を与える笑顔が基本ですが、お客様が悲しみや怒りなどを抱えている場合は笑顔を慎みます。お客様の表情をよく観察し、表情でも共感を示しましょう。

・目線や視線
目線はお客様と同じ高さに近づけるようにします。また、視線を交わすアイコンタクトの長さは、話している時間の半分程度が適切といわれています。

・姿勢や動作
傾聴するときはお客様の正面の席を避け、椅子に深く座って軽い前傾姿勢をとるなどして、熱心に聴こうとする意欲を伝えます。腕組み、ほおづえ、貧乏ゆすりなどの無意識な動作には要注意です。



このほか、認知症やうつ病の方には、特徴に配慮したコミュニケーションが必要です。専門の知識や技術に加えて、介護のプロとしてのコミュニケーションスキルも身につけていきましょう。



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ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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