こんなときはどうする?ご高齢者の症状に合わせた口腔ケア

これまで口腔ケアの基本をお伝えしてきましたが、口腔ケアの内容はお一人おひとりによって変わってきます。また、病気などによって何らかの症状がある場合は、それに応じた口腔ケアが必要です。
今回は、ご高齢者に多い疾患と症状に合わせた口腔ケアのポイントについて解説します。

片麻痺がある方の口腔ケア

片麻痺がある方の口腔ケア

片麻痺(へんまひ・かたまひ)とは、身体の片側(左または右)の上下肢が麻痺している状態のことです。
片麻痺のある方には、嚥下障害や構音障害(ろれつが回らない・正しく発音できない等)などの症状がみられます。

食事のときは、健側(麻痺がない方)で噛んでも、患側(麻痺がある方)に食べ物が流れてしまうことがあり、食物残渣(食べ物のかす)が患側にたまりやすくなります。また、誤嚥(ごえん)を引き起こしやすいため、口腔ケアや食事介助の際は注意が必要です。

口腔ケアのポイント

・誤嚥(ごえん)を防ぐために、体位を整えて、軽くあごを引いてから行いましょう。
・自力でできる部分は介助者が声をかけながら見守り、できない部分はサポートしましょう。
・歯ブラシは健側(麻痺がない方)の手で持ってブラッシングします。
・電動歯ブラシや持ち手の太い歯ブラシ、片麻痺用コップ、吸引チューブ付き歯ブラシなどを活用しましょう。
・食物残渣(食べ物のかす)がたまりやすい患側をよく確認し、念入りに清掃しましょう。
・口腔ケアのあとに、可能であれば咳払いをしていただきます。
・食前の嚥下(えんげ)体操や口腔レクなどを取り入れてみましょう。片麻痺のある方は、健側(麻痺がない方)を動かすだけでも効果があります。

座位がとれる場合

・いす(または車いす)に座り、足をしっかりと床につけます。
・患側(麻痺がある方)にクッションなどを当てて姿勢を安定させます。
・鏡を見ながら行うと、麻痺側を認識できて、ブラッシングしやすくなります。

ベッド上で行う場合

・座位が難しい場合はベッドをギャッチアップし、上半身を約30度起こした姿勢をとります。
・頭の下に枕を入れて頭部を起こし、膝の下などにもクッションを入れて下にずれないよう体位を保持します。
・身体が起こせない場合や嚥下障害がある場合は、健側(麻痺がない方)を下にして側臥位(横向き)をとりましょう。

認知症の方の口腔ケア

認知症の方の口腔ケア

記憶障害がある認知症の方にとっては、毎日行っている歯磨きも「初めての行為」と認識する場合があります。

認知症の方が口腔ケアを嫌がる場合は、無理強いしないことが大切です。無理に行おうとすると恐怖心や嫌悪感を抱きやすいため、笑顔で声をかけながら少しずつ誘導します。お口に触れることを嫌がる場合は、口から遠い手や肩などから優しく触れ、様子を見ながら行いましょう。

口腔ケアのポイント

・短時間でスムーズに行えるよう、事前にしっかり準備をしておきます。
・慣れた場所で落ち着いた雰囲気をつくり、リラックスしているときを見計らって行いましょう。
・笑顔で正面から近づき、認知症の方の視界に入ってから、分かりやすい言葉でゆっくり声をかけます。
・水を流す音を聞いてもらったり、介助者が一緒に歯磨きしたりするなどの工夫もしてみましょう。
・完璧を目指さず、できるときにできる部分だけ行い、「できたこと」を褒めて次回につなげていきましょう。
・口腔機能向上のためトレーニングは、レクリエーション感覚で簡単に楽しく行えるものを選びましょう。

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お口の乾燥がある場合

お口の乾燥がある場合

唾液の分泌量は、加齢に伴い減少します。また、ご高齢の方は病気や薬の副作用などによってお口の中が渇くことがあります。

お口が乾燥しているときは、唾液腺マッサージやお口のストレッチなどを行い、唾液の分泌を促すことが大切です。
シェーグレン症候群などの病気による場合は、口腔用の保湿剤や人工唾液を使用する方法もありますので、主治医または歯科医師に相談してみましょう。

マウスケア保湿

口腔ケアのポイント

・こまめな口腔ケアと一緒に、唾液腺マッサージを行いましょう。
・スポンジブラシなどを用いて、お口の中を湿らせてから口腔ケアに入りましょう。
・アルコール入りの洗口液(マウスウォッシュ)はお口が乾燥しやすいため、使用は避けましょう。
・刺激のある食べ物(辛いもの・カフェインを含むものなど)は控えるようにしましょう。
・適切な水分補給や室内の加湿も行いましょう。

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ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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