楽しく取り組んで誤嚥(ごえん)を防ぐ!お食事前の効果的なお口の体操

介護施設などでは、食べる機能の向上を目的としたお口の体操が行われています。お食事前に楽しく取り組むことで、ご高齢者に多い「誤嚥(ごえん)」を防ぐ効果も期待できます。今回は、ご高齢者の嚥下機能についてお伝えし、簡単で効果的なお口の体操もご紹介します。

ご高齢者の嚥下(えんげ)機能

ご高齢者の嚥下(えんげ)機能

食べ物をゴックンと「飲み込むこと」を嚥下(えんげ)といい、食べ物をうまく飲み込めない状態のことを「嚥下(えんげ)障害」といいます。
嚥下障害の要因のひとつが「加齢による筋力の低下」です。加齢とともに飲み込む力は弱くなるため、ご高齢者には嚥下障害が多くみられます。
嚥下障害になると、食べ物や唾液が誤って気管に入る「誤嚥(ごえん)」を起こしやすくなります。そして、誤嚥による肺炎(誤嚥性肺炎)を発症するリスクが高まります。

誤嚥性肺炎の予防方法には、口腔ケアや食形態の工夫、食事環境の調整などがありますが、食べる機能を高めるお口の体操も効果的といわれています。

▼関連記事

ご高齢者が安全に食事をとるために知っておきたい基礎知識

お口の中から健康に!介護予防にも役立つご高齢者の口腔ケア

安全においしく!介護初心者のための「口腔ケア」と「食事介助」

ご高齢者の食べる能力に合わせた食事とは? 食形態から考える介護食

食べる機能を高めるお口の体操

嚥下(えんげ)体操

誤嚥を防ぐために、食前に行うと効果的です。リラックスして無理のない範囲で行いましょう。

深呼吸
①いすに座り、両足を床にしっかりとつけ、背もたれにもたれずに背筋を伸ばします。
②お腹に両手を当て、お腹が膨らむように、大きく鼻から息を吸います。
③お腹をいっぱいまで膨らませたら、口をすぼめて、ゆっくり吐き出します。
④「吸う→吐く」をワンセットとして、2~3回を目安に行います。
※鼻から吸って、口から吐くのがポイントです。

深呼吸

首の体操
①いすに座り、両足を床にしっかりとつけ、背もたれにもたれずに背筋を伸ばします。
②首をゆっくり左右に倒します。
③首をゆっくり前後に倒します。
④振り返るように首をゆっくり左右に回します。
⑤首を右回り、左回りにぐるっとゆっくり回します。
※3~5回を目安に行いましょう。肩・首の痛みや疾患がある方は、医師に相談してから行ってください。


肩の体操
①鼻から息を吸いながら、肩をゆっくり上げて、ストンと下ろします。
 「肩を上げる→肩を下ろす」をワンセットとして、5回を目安に行いましょう。
②ひじを円を描くように動かし、ゆっくり肩を回します。5回を目安に行いましょう。
※力が抜けるタイミングで息を吐き出すようにします。

肩の体操

舌の体操
①大きく口を開いて、舌を前に「ベー」と出します。
②舌先で左右の口角(口の両端)に触れます。
③舌先で円を描くように唇をぐるりとなめます。
※それぞれ3回を目安に行いましょう。

舌の体操

発声練習(パタカラ)

「パ」「タ」「カ」「ラ」の4つを発音することで唇や舌を動かし、飲み込む機能の向上を目指します。
ホワイトボードなどに「パ」「タ」「カ」「ラ」と大きく書いておくとよいでしょう。

パカタラ体操
①唇をしっかり閉じてから開いて「パパパ...」と発音します。
②舌先でお口の天井(上前歯の裏側)をはじいて「タタタ...」と発音します。
③舌の付け根をのどの奥に引くようにして「カカカ...」と発音します。
④舌先を上に上げて「ラララ...」と発音します。
※それぞれ10~20回を目安に、できるだけ大きな声ではっきりと発声しましょう。
楽しくおしゃべりすることも飲み込みの訓練になります。本や新聞などを声に出して読むことも効果的です。

のどの体操

お食事前や空き時間に、座ったままで気軽にできます。5~10回を目安に行いましょう。

嚥下おでこ体操(男性向け)
①おへそをのぞき込むように下を向きます。
②おでこに手のひらの下部(手根部)を当てます。
③おでこと手で押し合いっこをします。(のど仏がぐっと上がるようにしましょう)
④押し合った状態で、5秒間キープします。


あご持ち上げ体操(女性向け)
①下を向いて、力いっぱいあごを引きます。
②下あごに両手の親指を当てます。
③あごと親指で押し合いっこをします。(のど仏がぐっと上がるようにしましょう)
④押し合った状態で、5秒間キープします。


お口の体操のメリット

お口の体操のメリット

・お口の中やお口周りの筋肉を動かすことで唾液が出る
・誤嚥(ごえん)やむせ、せき込み、食べこぼしなどを防ぐ
・筋肉の緊張がほぐれ、リラックスできる
・舌や唇、あごが早く動き、滑舌(かつぜつ)が改善する
・発音や発声機能、呼吸機能が向上する
・食べ物がおいしくなり、食事が楽しくなる
・入れ歯が使いやすくなる  など



飲み込む力は40代、50代から徐々に低下するといわれています。「食事中にむせたり咳き込んだりすることが多くなった」「大きめの錠剤を飲み込みにくくなった」などのサインに気づいたら、気軽にできるお口の体操で飲み込む力を鍛えましょう。

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

楽しく取り組んで誤嚥(ごえん)を防ぐ!お食事前の効果的なお口の体操

Facebookページで
最新記事配信!!

関連記事

介護の方法のおすすめ記事