介護施設などでは、食べる機能の向上を目的としたお口の体操が行われています。お食事前に楽しく取り組むことで、ご高齢者に多い「誤嚥(ごえん)」を防ぐ効果も期待できます。今回は、ご高齢者の嚥下機能についてお伝えし、簡単で効果的なお口の体操もご紹介します。
ご高齢者の嚥下(えんげ)機能
食べ物をゴックンと「飲み込むこと」を嚥下(えんげ)といい、食べ物をうまく飲み込めない状態のことを「嚥下(えんげ)障害」といいます。
嚥下障害の要因のひとつが「加齢による筋力の低下」です。加齢とともに飲み込む力は弱くなるため、ご高齢者には嚥下障害が多くみられます。
嚥下障害になると、食べ物や唾液が誤って気管に入る「誤嚥(ごえん)」を起こしやすくなります。そして、誤嚥による肺炎(誤嚥性肺炎)を発症するリスクが高まります。
誤嚥性肺炎の予防方法には、口腔ケアや食形態の工夫、食事環境の調整などがありますが、食べる機能を高めるお口の体操も効果的といわれています。
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食べる機能を高めるお口の体操
嚥下(えんげ)体操
誤嚥を防ぐために、食前に行うと効果的です。リラックスして無理のない範囲で行いましょう。
深呼吸 |
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①いすに座り、両足を床にしっかりとつけ、背もたれにもたれずに背筋を伸ばします。 ②お腹に両手を当て、お腹が膨らむように、大きく鼻から息を吸います。 ③お腹をいっぱいまで膨らませたら、口をすぼめて、ゆっくり吐き出します。 ④「吸う→吐く」をワンセットとして、2~3回を目安に行います。 ※鼻から吸って、口から吐くのがポイントです。 |
首の体操 |
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①いすに座り、両足を床にしっかりとつけ、背もたれにもたれずに背筋を伸ばします。 ②首をゆっくり左右に倒します。 ③首をゆっくり前後に倒します。 ④振り返るように首をゆっくり左右に回します。 ⑤首を右回り、左回りにぐるっとゆっくり回します。 ※3~5回を目安に行いましょう。肩・首の痛みや疾患がある方は、医師に相談してから行ってください。 |
肩の体操 |
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①鼻から息を吸いながら、肩をゆっくり上げて、ストンと下ろします。 「肩を上げる→肩を下ろす」をワンセットとして、5回を目安に行いましょう。 ②ひじを円を描くように動かし、ゆっくり肩を回します。5回を目安に行いましょう。 ※力が抜けるタイミングで息を吐き出すようにします。 |
舌の体操 |
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①大きく口を開いて、舌を前に「ベー」と出します。 ②舌先で左右の口角(口の両端)に触れます。 ③舌先で円を描くように唇をぐるりとなめます。 ※それぞれ3回を目安に行いましょう。 |
発声練習(パタカラ)
「パ」「タ」「カ」「ラ」の4つを発音することで唇や舌を動かし、飲み込む機能の向上を目指します。
ホワイトボードなどに「パ」「タ」「カ」「ラ」と大きく書いておくとよいでしょう。
パカタラ体操 |
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①唇をしっかり閉じてから開いて「パパパ...」と発音します。 ②舌先でお口の天井(上前歯の裏側)をはじいて「タタタ...」と発音します。 ③舌の付け根をのどの奥に引くようにして「カカカ...」と発音します。 ④舌先を上に上げて「ラララ...」と発音します。 ※それぞれ10~20回を目安に、できるだけ大きな声ではっきりと発声しましょう。 楽しくおしゃべりすることも飲み込みの訓練になります。本や新聞などを声に出して読むことも効果的です。 |
のどの体操
お食事前や空き時間に、座ったままで気軽にできます。5~10回を目安に行いましょう。
嚥下おでこ体操(男性向け) |
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①おへそをのぞき込むように下を向きます。 ②おでこに手のひらの下部(手根部)を当てます。 ③おでこと手で押し合いっこをします。(のど仏がぐっと上がるようにしましょう) ④押し合った状態で、5秒間キープします。 |
あご持ち上げ体操(女性向け) |
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①下を向いて、力いっぱいあごを引きます。 ②下あごに両手の親指を当てます。 ③あごと親指で押し合いっこをします。(のど仏がぐっと上がるようにしましょう) ④押し合った状態で、5秒間キープします。 |
お口の体操のメリット
・お口の中やお口周りの筋肉を動かすことで唾液が出る
・誤嚥(ごえん)やむせ、せき込み、食べこぼしなどを防ぐ
・筋肉の緊張がほぐれ、リラックスできる
・舌や唇、あごが早く動き、滑舌(かつぜつ)が改善する
・発音や発声機能、呼吸機能が向上する
・食べ物がおいしくなり、食事が楽しくなる
・入れ歯が使いやすくなる など
飲み込む力は40代、50代から徐々に低下するといわれています。「食事中にむせたり咳き込んだりすることが多くなった」「大きめの錠剤を飲み込みにくくなった」などのサインに気づいたら、気軽にできるお口の体操で飲み込む力を鍛えましょう。
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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