ご高齢者は注意が必要!インフルエンザを予防しましょう

2018/10/31

毎年11月下旬~3月頃にかけて流行する季節性インフルエンザ。ご高齢の方や慢性疾患をお持ちの方がインフルエンザにかかると、重症になる危険性が高くなるため注意が必要です。今回は、ご高齢者のインフルエンザ予防のポイントや、重症化を防ぐためのワクチン接種についてお伝えします。

ご高齢者のインフルエンザの危険性

ご高齢者のインフルエンザの危険性

インフルエンザとは

インフルエンザは、人から人へとうつる呼吸器感染症です。日本では、毎年およそ1,000万人(約10人に1人)が感染しています。
インフルエンザの感染経路には、「飛沫(ひまつ)感染」と「接触感染」の2種類があります。


飛沫感染
感染した人の咳やくしゃみなどの飛沫(小さな水滴)によって放出したウイルスを、別の人が口や鼻から吸い込んで感染します。


接触感染
飛沫が付着した物やウイルスがついた手で触れた物(ドアノブ・スイッチなど)を別の人が触り、その手で粘膜(目・口・鼻)に触れることで感染します。


インフルエンザウイルスの型にはA型・B型・C型の3つがありますが、流行が広がるのは感染力が強いA型とB型です。A型またはB型のウイルスは感染してから発症するまでに、1~3日ほどの潜伏期間があります。そのため、潜伏期間中に検査を受けたことで、陽性反応が出なかったとしても、実は感染していて他人にうつしてしまうことがあります。

ご高齢者のインフルエンザ


インフルエンザは一般の風邪に比べて全身症状が強く出やすく、免疫力の弱い65歳以上の方は重症になるリスクが高くなります。ご高齢者は肺炎を併発する率も高く、呼吸器や心臓、腎臓などに持病のある方は命に関わるほど重症化することも珍しくありません。また、肺炎を合併しなくても、全身症状により食欲が低下して栄養状態が悪くなったり、寝たきりになったりすることがあります。大切な人を守るために、ご高齢者のいるご家庭や高齢者介護施設では、周囲の方と協力してインフルエンザを予防することが重要です。

インフルエンザ予防のポイント

インフルエンザ予防のポイント

流行するインフルエンザウイルスの型はその年によって異なりますが、A型とB型の予防対策は同じです。
インフルエンザから身を守るために、普段からバランスのとれた食事や十分な睡眠をとって身体の免疫力を高めておきましょう。また、インフルエンザの流行シーズンは、なるべく人混みを避けることも大切です。さらに以下のことを心がけて、インフルエンザを予防しましょう。

手洗いと手指の消毒をする

インフルエンザなど感染症の予防対策の基本は、流水と石けんによる手洗いです。手を洗う前に爪を短く切り、時計や指輪は外します。手のひらや甲だけではなく、指先・爪の間・指の間・手首も洗いましょう。石けんで念入りに洗った後は、十分に水で流し、清潔なペーパータオルなどで拭き取ってよく乾かします。また、アルコール製剤による手指の消毒も効果的です。

正しくマスクを着用する

インフルエンザは、主に「飛沫感染」によって人から人へとうつります。咳やくしゃみが出るときは、できるだけマスクを着用しましょう。マスクがないときは、他の人に顔を向けず、ティッシュや腕の内側などで口と鼻を覆うようにします。使用後のティッシュやマスクは、すぐにごみ箱へ捨てましょう。もし手のひらで咳やくしゃみを受け止めた場合は、すぐに手を洗うことが重要です。

正しいマスク装着方法

正しいマスク装着方法
① 鼻と口の両方を確実に覆います。
② ゴムひもを耳にかけます。
③ フィットするように調節します。
※ 鼻の部分に隙間があったり、あごが大きく出ていたりすると効果が減少します。

お口のケア(口腔ケア)を行う

口腔ケアでお口の中を清潔に保つことも、インフルエンザの感染や重症化の予防につながるといわれています。
お口の中の細菌が増えると、細菌が出す酵素(プロテアーゼなど)により、インフルエンザ等のウイルスが粘膜にくっついて体内に入り込みやすくなります。口腔機能が低下しているご高齢者のお口は汚れがたまりやすいため、念入りなケアを行うことが大切です。また、唾液の量が少ない方は、お口の乾燥にも注意しましょう。

お口のケア(口腔ケア)

ブラッシングのポイント

・歯ブラシは軽い力で持ち、歯と歯肉の境目に当てるようにします。
・歯ブラシを左右に小刻みに動かしながら磨きましょう。
・前歯の裏側や歯並びの悪いところは、歯ブラシを立てて細かく上下に動かし、1本ずつ磨きます。
・磨きにくい奥歯は歯ブラシを斜めに入れて、丁寧に磨きます。
・磨き残しの多い部分(歯の間・歯と歯肉の間・奥歯のかみ合わせ・抜けた歯の周囲など)をチェックします。
・毛先が広がった歯ブラシは交換しましょう。

◎ お口とお身体の状況に合わせて、スポンジブラシやモアブラシ、ガーゼ、舌ブラシ、口腔保湿剤などを使用します。
◎ ほかにもさまざまな方法があります。適切なケアについては歯科医師や歯科衛生士に相談してください。

あいうべ体操

口呼吸になりがちな方は、鼻呼吸に変えるためのお顔の体操「あいうべ体操」を試してみましょう。

①「あー」と口を大きく開きます。
②「いー」と口を横に開きます。
③「うー」と唇を前に突き出します。
④「べー」とベロ(舌)を下に伸ばします。

◎ 声は出しても出さなくてもかまいません。①~④(4~5秒)を1セットとして、1分間に約10回が目安です。

「口腔ケア」に関する記事はこちらからご覧いただけます。

お口の中から健康に!介護予防にも役立つご高齢者の口腔ケア

安全においしく!介護初心者のための「口腔ケア」と「食事介助」

適切な湿度を保つ

空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下してしまいます。室内では、加湿器等を使って適切な湿度(50%~60%)を保ちましょう。

流行前にワクチン接種を受ける

ワクチン接種は発症する可能性を減らし、もし感染しても重症化を防ぐ効果があります。感染や発症を完全に防ぐことはできませんが、ご高齢者がワクチン接種をすると、接種しなかった場合に比べて死亡の危険を1/5に、入院の危険を約1/3~1/2にまで減少させることが期待できるとされています。推奨されているのは、ご高齢者などハイリスクの方のほか、ご家族や介護・医療従事者などです。

高齢者介護施設での感染対策については、こちらの動画もご参照ください。(厚生労働省・YouTube動画)

ご高齢者のインフルエンザワクチン接種

ご高齢者のインフルエンザワクチン接種

季節性インフルエンザの流行期

日本で季節性インフルエンザの流行が始まるのは、11月下旬~12月上旬頃です。流行のピークの時期は年によって違いますが、翌年の1~3月頃に患者数が増加し、4~5月頃に減少する傾向にあります。お住まいの地域のインフルエンザ流行状況は、自治体のホームページなどで確認できます。

ワクチン接種を受けるタイミング

ご高齢者の場合、インフルエンザの予防接種は1年に1回です。ワクチン接種による効果が出るまでに2週間ほどかかるため、12月中旬までにワクチン接種を済ませることが望ましいと考えられています。

ワクチンの効果が持続する期間は、一般的に5か月ほどです。また、流行するウイルスの型が年ごとに変わることから、ワクチン接種は毎年受けることが望まれます

65歳以上の方は、自治体で予防接種費用の一部助成を行っています。自治体によって実施期間や費用が異なりますので、詳細はお住まいの市区町村にお問い合わせください。助成の対象となる方は以下の通りです。

予防接種法に基づく定期のインフルエンザ予防接種の対象
・65歳以上の方
・60~64歳で、心臓や腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される方
・60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方

ワクチン接種の注意点

予防接種は、体調の良い日に行うことが原則です。明らかな発熱があるときや、重い急性疾患にかかっているときなどは、予防接種を受けることができません。慢性の病気やアレルギーをお持ちの方、健康状態に不安がある方は、必ず事前にかかりつけ医に相談しましょう。

また、インフルエンザワクチン接種により、接種部位の赤みや腫れ、痛み等の副反応が起こることがあります。通常は2~3日で症状がなくなりますが、まれに重い副反応の報告があります。定期の予防接種による副反応のために健康被害が生じた場合は、法律に定められた健康被害救済制度があります。詳しくは、厚生労働省のホームページでご確認ください。

感染力がとても強いインフルエンザは、十分な対策を行っていても感染してしまうことがあります。38℃以上の高熱とともに、筋肉や関節の痛み、全身のだるさ、咳、のどの痛みなどの症状があらわれた場合はインフルエンザの可能性があります。もしインフルエンザが疑われる症状が出たら、早めに医療機関を受診しましょう。

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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