「認知症バリアフリー」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。認知症の方とご家族が安心して暮らし続けるためには、互いに支え合う地域づくりを進める必要があります。今回は、認知症になっても尊厳と希望をもって生活できる社会をめざす「認知症バリアフリー」についてお伝えします。
「認知症バリアフリー」とは

認知症は、誰でもかかる可能性のある身近な病気です。
2025年には65歳以上のご高齢者の約5人に1人が認知症になると推計されています。また、働き盛りの年代でも「若年性認知症」になることがあります。
認知症の方の多くは、不安や困難を抱えながら暮らしています。
それまでできたことができなくなったり、コミュニケーションが難しくなったりするため、外出や交流を控えてしまう方もいらっしゃいます。
しかし、認知症になったからといって何もできなくなるわけではありませんし、「その人らしさ」が失われるわけでもありません。
周囲の理解や配慮、ちょっとした手助けがあれば、自分らしい生活を続けることが可能になります。
そこで求められるのが、認知症の方を含めた「共生」の社会づくりです。
認知症であってもなくても尊厳と希望をもって共に生きていける社会の実現を目指して、「日本認知症官民協議会」は、生活のあらゆる場面で障壁(バリア)を減らしていく「認知症バリアフリー」の取り組みを進めています。
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「日本認知症官民協議会」とは
行政だけでなく、経済団体、医療・福祉団体、学会などから約100団体が参画し、2019(平成31)年4月に「日本認知症官民協議会」が設立されました。
認知症バリアフリーを推進するために、認知症の方と接する機会の多い業種における接遇の手引きの作成・周知や、「認知症バリアフリー宣言」制度の運用を行っています。
「認知症バリアフリー宣言」とは

出典:厚生労働省ホームページ
「認知症バリアフリー宣言」は、認知症の方とご家族に安心して店舗やサービス・商品を利用してもらうための社会活動です。 日本認知症官民協議会が進める「認知症バリアフリー」の取り組みのひとつとして、2022(令和4)年から始まりました。
企業や団体等は、申請・登録により、自らWEB上で「認知症バリアフリー宣言企業」として宣言を行うことができます。
対象となる組織
企業・団体など
職種や規模は問われず、全社一括でも拠点(店舗、支社・支部など)だけでも申請・登録が可能です。
登録すると「認知症バリアフリー宣言」のロゴマークが付与され、参加企業・団体であることを表示できます。
宣言基準
申請には4項目の宣言基準が求められます。
① 社内の「人材育成」 ② 行政、他業種などとの「地域連携」 ③ 認知症をサポートする「社内制度」 ④ お客さまが利用しやすい「環境整備」 |
認知症バリアフリーの取り組み

認知症の方やご家族の暮らしを社会全体で支えていけるよう、多くの企業や団体が「認知症バリアフリー宣言」に取り組んでいます。ここからは業種別の取り組み事例をいくつかご紹介します。
小売業
株式会社イトーヨーカ堂では、認知症サポーターの養成、地域の見守りネットワークへの参画、従業員向け介護セミナーの実施などに取り組んでいます。また、店舗では「お買い物介助サービス」を提供し、ゆっくりお会計できる「おもいやり優先レジ」も設置しています。
金融業
株式会社三井住友銀行では、認知症の基本症状や応対のポイント等をまとめた手引きの作成、従業員とそのご家族が介護について相談できる「介護相談デスク」の設置などに取り組んでいます。店舗では、認知症の方も利用しやすい環境づくり、ユニバーサルデザイン対応などを進めています。
医療/福祉
社会福祉法人敬愛園 介護老人福祉施設アットホーム福岡では、「認知症リーダー研修」や「実践者研修」の受講を積極的に進めています。
また、地域の方が認知症に関する困りごとを専門職に相談できる窓口「認知症かけこみ110番」を設置したり、福岡市が取り組む「福岡オレンジパートナーズ」に参加したりしています。
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家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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