バリアフリーとは違う?すべての人のための「ユニバーサルデザイン」

「ユニバーサルデザイン」という言葉は、すでに耳慣れたものとなりました。同じような意味で使われる言葉に「バリアフリー」がありますが、両者はどのように違うのでしょうか。今回は、混同しがちな「ユニバーサルデザイン」と「バリアフリー」についてそれぞれ解説します。

「バリアフリー」とは

「バリアフリー」とは

バリアフリー(barrier free)は「障がいのある方が社会生活をしていく上でバリア(障壁)となるものを除去する」という意味で、もともとは住宅建築用語でした。
道路や住宅などの段差の除去を指すことが多いですが、現在は、段差などの物理的なバリアだけでなく、社会的、制度的、心理的なすべてのバリアを除去するという意味でも用いられています。

近年、商業施設などの建築物や公共交通機関などにおいてバリアフリー化が進められてきましたが、バリアフリー対策は施設ごとに行われており、さまざまな課題がありました。
そこで、2006年(平成18年)12月20日に「バリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)」が施行されました。
「バリアフリー新法」とは、従来の「ハートビル法(公共性の高い建築物を対象としたバリアフリー対策)」と「交通バリアフリー法(公共交通機関等を対象としたバリアフリー対策)」を一体化させたものです。
2018年(平成30年)11月には「バリアフリー新法」の一部が改正され、政府はさらなるバリアフリー化を推進しています。

バリアフリー新法

「ユニバーサルデザイン」とは

「ユニバーサルデザイン」とは

ユニバーサルデザイン(universal design)とは、建物や製品、生活環境、サービスなどを、すべての人が使いやすいようにデザインすることです。略して「UD(ユーディー)」と表記されることもあります。

ユニバーサルデザインの考え方は、1980年代に、アメリカ・ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス氏(ロン・メイス氏)が提唱しました。
メイス氏らは、デザイナーへの指針として「ユニバーサルデザインの7原則」をまとめています。
この原則は、ユニバーサルデザインを考えるときに参考になる重要な視点ですが、すべてに当てはまることが要件というわけではありません。1つ当てはまるものもあれば、いくつか当てはまるものもあります。

ユニバーサルデザインの「7つの原則」と事例
① 公平性
誰でも公平に使いこなせる
・自動ドア
・エレベーター、エスカレーター、階段が併設された駅
② 自由度
柔軟性があり、使い方を選べる
・2段の手すり
・両きき用ハサミ
③ 簡単さ
単純で直感的にわかりやすい
・凹凸の印をつけたシャンプー容器
・持つ側に凹を付けたプリペイドカード
④ 明確さ
必要な情報がすぐに理解できる
・音声付きの信号機
・イラスト等で表示された案内サイン(ピクトグラム)
⑤ 安全性
安全・安心で、誤使用しても危険が少ない
・使用中に扉を開けると止まる電子レンジ
・網目の細かいグレーチング(側溝などのふた)
⑥ 持続性
楽に使用できて体への負担が少ない
・センサー感知式の蛇口や照明
・片手でも開閉できる容器
⑦ 空間生
使いやすい大きさと広さがある
・大きくて押しやすいワイドスイッチ
・広いスペースが確保された自動改札口

改めて見直してみると、身近なところにユニバーサルデザインの施設や環境、日用品などがあることに気づきます。たとえば、駅や公共施設などで見かける多目的トイレ(多機能トイレ・だれでもトイレ・みんなのトイレ)も、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れています。
多目的トイレには、車いすやベビーカーをお使いの方、オストメイト(人工肛門・人工膀胱保有者)の方なども利用できる設備があり、十分な空間が確保されています。

また、エレベーターは、車いすをお使いの方や子どもなどが困らないよう、押しボタンが通常の位置に加えて低い位置にも設置されているものがあります。高さの違う公衆電話や水飲み器、洗面台なども自由度が高くて便利です。

「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」の違い

「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」の違い

「バリアフリー」は、主に障がいのある方やご高齢者を対象として、バリア(障壁)を後から取り除くという考え方です。
それに対して「ユニバーサルデザイン」の考え方は、年齢や性別、身体状況、言語などにかかわらず、多様な人を対象として、はじめからバリア(障壁)をつくらないことを目指しています。

バリアフリーもユニバーサルデザインも、「すべての人が快適で暮らしやすい社会を目指す」という目標は同じです。一般的に「ユニバーサルデザイン」は、「バリアフリー」をさらに推し進めた考え方といわれており、「ユニバーサルデザイン」のなかに「バリアフリー」が含まれる場合もあります。

政府は、2020年に開催されるパラリンピック競技大会を契機として、2017年に「ユニバーサルデザイン2020行動計画」を策定しました。そして、この行動計画をもとに、公共交通機関のバリアフリー化などの「ユニバーサルデザインの街づくり」や国民全体の「心のバリアフリー」を進めています。



ユニバーサルデザインというと「建物や製品の整備」といったイメージになりがちですが、誰もが暮らしやすい環境づくりには、さりげない配慮や思いやりも欠かせません。みんなのためのユニバーサルデザインの取り組みは、自分のためでもあると意識することが大切だといえるでしょう。

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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