2024年1月1日に施行された認知症基本法(共生社会の実現を推進するための認知症基本法)とは

認知症の方は年々増えており、2025(令和7)年には約700万人(65歳以上の高齢者の約5人に1人)が認知症となると予測されています。今回は2024(令和6)年1月1日に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」についてお伝えします。

「認知症基本法」とは

「認知症基本法」とは

2023(令和5)年6月に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法(通称:認知症基本法)」が成立し、2024(令和6)年1月1日に施行されました。

認知症基本法は、法律の目的や基本理念、認知症施策推進基本計画、基本的施策、認知症施策推進本部の設置などについて定めています。さらに、国や地方公共団体、事業者、国民の責務を規定しています。

この法律では、共生社会を「認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会」と定義しています。
また、認知症とは「アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態として政令で定める状態」をいいます。


認知症基本法の目的

「認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、認知症施策を総合的かつ計画的に推進」することが認知症基本法の目的です。

7つの基本理念

ご本人・ご家族の意向尊重
国民の理解による共生社会の実現
社会参加できる機会の確保
切れ目のない保健医療サービス・福祉サービスの提供
ご本人・ご家族などへの支援
予防・リハビリテーション等の研究開発の推進
各関連分野の総合的な取り組み

国・地方公共団体などの責務

国・地方公共団体 基本理念にのっとって、認知症施策を策定・実施する責務があります。
内閣総理大臣を本部長とする認知症施策推進本部を設置し、認知症の方やご家族などで構成される関係者会議の意見を聴いたうえで、認知症施策推進基本計画を策定することが政府に義務づけられています。
都道府県・市町村 認知症の方やご家族などの意見を聴き、それぞれ認知症施策推進計画を策定することが努力義務となっています。
サービス提供者 保健医療サービス・福祉サービスの提供者は、良質で適切な保健医療サービス・福祉サービスを提供するよう努める必要があります。
事業者 公共交通事業者や金融機関、小売業者などは、事業に支障のない範囲で、認知症の方に必要かつ合理的な配慮をするよう努めることになっています。
国民 認知症や認知症の方に関する正しい知識を深めるよう努めることになっています。

「認知症基本法」の基本的施策

「認知症基本法」の基本的施策

認知症の人に関する国民の理解の増進等

国民が、共生社会の実現を進めるために必要な認知症の正しい知識、認知症の人に対する正しい理解を深められるようにする施策

認知症の人の生活におけるバリアフリー化の推進

・認知症の人が自立し、他の人々とともに暮らすことのできる安心・安全な地域づくりを進める施策 ・認知症の人が自立した生活を営むことができるようにする施策

認知症の人の社会参加の機会の確保等

・認知症の人が生きがいや希望を持って暮らすことができるようにする施策 ・若年性認知症の人、その他の認知症の人の意欲や能力に応じた雇用の継続、円滑な就職等ができるようにする施策

認知症の人の意思決定の支援・権利利益の保護

認知症の人の意思決定の適切な支援、権利利益の保護を図るための施策

保健医療サービス・福祉サービスの提供体制の整備等

・認知症の人がどこに住んでいても適切な医療を受けることができるようにする施策 ・認知症の人に良質で適切な保健医療・福祉サービスを適時に切れ目なく提供できるようにする施策 ・個々の認知症の人の状況に応じた、良質で適切な保健医療・福祉サービスが提供されるようにする施策

相談体制の整備等

・認知症の人や家族などからのさまざまな相談に対して、それぞれの状況に配慮しつつ総合的に応じるために必要な体制の整備 ・認知症の人や家族などが孤立することがないようにするための施策

研究等の推進等

・認知症の本態解明、予防、診断、治療、リハビリテーション、介護方法等の基礎研究や臨床研究、成果の普及など ・認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすための社会参加のあり方、他の人々と支え合いながら共生できる社会環境の整備等の調査研究、成果の活用など

認知症の予防等

・希望する人が科学的知見に基づく予防に取り組むことができるようにするための施策 ・早期発見、早期診断、早期対応の推進のための施策

上記のほか「認知症施策の策定に必要な調査の実施」「多様な主体の連携」「地方公共団体に対する支援」「国際協力」があります。


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ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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