介護の現場でも活用できるケースワークの基本姿勢「バイステックの7原則」

介護福祉の分野でも、利用者と信頼関係を築くための基本原則としてよく知られている「バイステックの7原則」。今回は、対人援助に関わる方だけでなく、人間関係の悩みを抱える方も知っておくと役立つ「バイステックの7原則」をご紹介します。

「バイステックの7原則」とは

「バイステックの7原則」とは

「バイステックの7原則」は、アメリカの社会福祉学者バイステック(バイスティックとも)氏が定義したケースワークの基本姿勢です。
バイステック氏は1957年に「The Casework Relationship」を出版し、日本では1965年に「ケースワークの原則」の邦題で翻訳出版されています。
ケースワーク(casework)とは、ソーシャルケースワーク(social casework)の略で、日本語では「個別援助技術」などと訳されています。

バイステックの7原則(Biestek.F.P.)
① 個別化(クライエントを個人としてとらえる)
② 意図的な感情表現(クライエントの感情表現を大切にする)
③ 統制された情緒的関与(援助者は自分の感情を自覚して調整する)
④ 受容(クライエントをありのままに受けとめ批判をしない)
⑤ 非審判的態度(クライエントを一方的に非難しない)
⑥ 利用者の自己決定(クライエントの意思に基づく自己決定を促して尊重する)
⑦ 秘密保持(秘密を保持して信頼感を醸成する)

クライエント(クライアントともいう)という言葉にはさまざまな意味がありますが、福祉分野では、福祉サービスや援助を受ける「利用者」のことをいいます。
この7つの原則は介護の仕事に携わる上でも欠かせない基本姿勢で、介護福祉士の国家試験などでも頻出するキーワードです。

バイステックの7原則

バイステックの7原則

①個別化の原則

一人ひとりの利用者を、他の誰でもない個人としてとらえることです。
利用者は、ひとつのケース(事例)や典型例、カテゴリーに属する人として対応されるのではなく「一人の個人として対応されたい」というニードをもっています。
バイステックは、個人としてとらえられることは「利用者の権利でありニードである」と表現しています。

②意図的な感情表現の原則

利用者は「肯定的な感情も否定的な感情も自由に表現したい」というニードをもっていることを認識します。
援助者は、その感情表現に「援助」という目的を持って耳を傾け、大切に受けとめます。利用者が安心して感情を表に出せるような雰囲気を作ることも重要です。

③統制された情緒的関与の原則

利用者は「自分の気持ちに共感してほしい」というニードをもっていることを認識し、理解します。
援助者は感受性を働かせて利用者に共感しますが、「援助」という目的を意識しながら、自分の感情をコントロールして冷静に対応します。

④受容の原則

利用者は「ありのままの自分を受けとめてほしい」というニードをもっています。
援助者は、偏見や先入観をもたず、利用者をあるがままの姿でとらえることが必要になります。
ただしそれは、利用者の逸脱した行為や行動を許容・容認することではありません。

⑤非審判的態度の原則

利用者は「一方的に非難されたくない」というニードをもっています。
援助者は、自分の役割が「援助」であるときちんと自覚し、善悪を判断すべきではないということです。
ただし、利用者の態度や価値判断の基準、行動などについて多面的に評価する必要はあります。

⑥利用者の自己決定の原則

利用者は「自分の問題解決は自分で選んで決めたい」というニードをもっています。
援助者は利用者が自己決定できるよう、情報の提供などの援助を行います。

⑦秘密保持の原則

利用者の秘密を守ることは、対人援助職の倫理的な義務です。
「社会福祉士及び介護福祉士法」には秘密保持義務が定められており、「正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。」とあります。


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ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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