援助関係における相互作用

「バイステックの7原則」は、利用者(クライエント)が求める7つの基本的ニードを重視する考えから生まれた原則です。
すべての人は共通の基本的ニードをもっており、困難を抱えて援助を求める利用者は、そのニードをよりいっそう強くもつと考えられます。
そのため、援助者(ワーカー)が利用者のニードを強く意識することで、利用者との間に態度と感情をともなった相互作用をつくり出すことができます。
援助者(ワーカー)と利用者(クライエント)との間に生まれる力動的な相互作用は、3つの方向性をもっています。
各原則の名称 | 第1の方向: クライエントのニード |
第2の方向: ワーカーの反応 |
第3の方向: クライエントの気づき |
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クライエントを個人としてとらえる | 一人の個人として迎えられたい | ワーカーはクライエントのニードを感知し、理解してそれらに適切に反応する | クライエントはワーカーの感受性を理解し、ワーカーの反応に少しずつ気づきはじめる |
クライエントの感情表現を大切にする | 感情を表現して解放されたい | ||
援助者は自分の感情を自覚して吟味する | 共感的な反応を得たい | ||
受けとめる | 価値ある人間として受けとめられたい | ||
クライエントを一方的に非難しない | 一方的に非難されたくない | ||
クライエントの自己決定を促して尊重する | 問題解決を自分で選択し、決定したい | ||
秘密を保持して信頼感を醸成する | 自分の秘密をきちんと守りたい |
<引用>F・P・バイステック『ケースワークの原則-援助関係を形成する技法 新訳版』誠信書房,1996.1.27p
第1の方向:クライエントのニード |
---|
利用者(クライエント)から援助者(ワーカー)に向けられる相互作用です。 利用者は、自分が抱えている問題や弱さを援助者に伝えるとき、「個人として尊重されないのではないか」「非難されるだろうか」「秘密を他人に漏らすのではないか」などの不安をもっています。 |
第2の方向:ワーカーの反応 |
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援助者(ワーカー)から利用者(クライエント)に向けられる相互作用です。 援助者は、利用者のニードを感じとり、感情を理解します。そして、利用者の権利を尊重し、一人の個人として受けとめる用意があることを示すことで、利用者の不安を和らげます。 |
第3の方向:クライエントの気づき |
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再び利用者(クライエント)から援助者(ワーカー)に向けられる相互作用です。 利用者は援助者の示した態度に気づきはじめ、その気づきを何らかの方法で伝え返そうとします。 |
この3つの相互作用の方向は「援助過程全体を通して、互いに響き合うように関連しながら進む」と表現されています。
このような相互作用は、言葉によって伝えられることは少ないはずです。介護の現場などで活用するときは、非言語的な要素を意識すると、より良好なコミュニケーションをとることができるでしょう。
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<参考文献>
F・P・バイステック『ケースワークの原則-援助関係を形成する技法 新訳版』誠信書房,1996.1
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ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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