新たな在留資格「特定技能」とは?外国人の介護人材を受け入れる制度

依然として深刻な人材不足が続いている介護分野。政府は、総合的な介護人材確保のための対策に取り組んでおり、介護分野への外国人の受け入れ拡大も図っています。
今回は、介護に従事する外国人を受け入れる制度についてお伝えします。

外国人介護人材の受け入れ制度

外国人介護人材の受け入れ制度

外国人の介護人材を受け入れる制度には「EPA(経済連携協定)」「在留資格(介護)」「技能実習」「特定技能1号」の4つがあります。

外国人介護人材の受け入れの仕組み

出典:厚生労働省「外国人介護人材受入れの仕組み」


EPA(経済連携協定)
二国間の経済活動の連携強化を目的とした特例的な受け入れです。
現在は、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3ヵ国と協定が結ばれています。
2017(平成29)年4月から、更なる活躍の促進のため、EPA介護福祉士の就労範囲に「訪問系サービス」が追加されました。

在留資格「介護」の創設
「日本の介護福祉士養成施設を卒業して介護福祉士資格を取得した者」を対象とする在留資格「介護」が創設され、2017(平成29)年9月1日から施行されました。
これにより、在留資格「留学」による留学生が、留学中に介護福祉士国家資格を取得し介護業務に従事することで、日本に長期間滞在できることになりました。

技能実習制度への介護職種の追加
技能実習制度は、国際貢献のために日本から相手国へ技能を移転する制度です。
2017(平成29)年9月29日に、サービスの質の担保など介護サービスの特性に基づく要請に対応できるよう、介護職種に固有の要件を定める告示が公布されています。
2017(平成29)年11月1日には「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習の保護に関する法律」が施行され、同時に対象職種に「介護」が追加されました。

在留資格「特定技能」
2019年(平成31年・令和元年)年4月1日に、新たな外国人材受け入れのための在留資格「特定技能」が施行されました。
「特定技能」とは、人材確保が困難な124分野(介護・建設・農業など)において、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れる制度です。

EPA
(経済連携協定)
在留資格
(介護)
技能実習 特定技能1号
送出し国 インドネシア・フィリピン・ベトナム 制限なし 制限なし 制限なし
在留期間 介護福祉士資格取得前:原則4年
(一定の条件を満たせば5年)
介護福祉士資格取得後:制限なしで更新可能
制限なしで更新可能 最長5年
技能実習1号:最長1年
技能実習2号:最長2年
技能実習3号:最長2年
最長5年
家族(配偶者・子)の帯同 介護福祉士資格取得後:可能 可能 不可 不可
介護福祉士国家試験の受験義務 必須 必須 なし(任意)
※資格取得で在留資格「介護」に変更可能
なし(任意)
※資格取得で在留資格「介護」に変更可能
勤務できるサービス 介護保険3施設・認知症グループホーム・特定施設・通所介護・通所リハ・認知症デイ・ショートステイ
介護福祉士資格取得後は、一定条件を満たした事業所の訪問系サービスも可能
制限なし 訪問系サービス以外 訪問系サービス以外
夜勤の可否 介護福祉士資格取得前:
雇用し6か月経過、もしくは日本語能力試験 N1またはN2合格であれば可能
介護福祉士資格取得後:可能
可能 条件付きで可能 可能
同一法人内の異動の可否 介護福祉士資格取得前:原則不可
介護福祉士資格取得後:可能
可能 可能
(技能実習計画上、技能等を修得するのに、その異動が必要と認められた場合に限る)
可能
介護職種での転職の可否 介護福祉士資格取得前:原則不可
介護福祉士資格取得後:可能
(在留資格変更の許可が必要)
可能 原則不可 可能

在留資格「特定技能」とは

新たな在留資格「特定技能」とは

「特定技能」とは、生産性向上や国内人材の確保のための取り組みを行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野(特定産業分野)において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れる制度です。


特定産業分野(12分野)
①介護 ②ビルクリーニング ③素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業 ④建設 ⑤造船・舶用工業 ⑥自動車整備 ⑦航空 ⑧宿泊 ⑨農業 ⑩漁業 ⑪飲食料品製造業 ⑫外食業

「特定技能」の在留資格には「特定技能1号」と「特定技能2号」があります。
介護業は「特定技能1号」に追加されたため、ここでは「特定技能1号」について解説します。

特定技能1号

「特定技能1号」は、特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
「特定技能1号」で在留する外国人(1号特定技能外国人)は、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力を有することを基本とし、特定産業分野ごとに業務上必要な日本語能力水準が求められます。
対象となる外国人は、技能水準と日本語能力水準を試験等で確認された上で入国します。

在留できる期間は最長5年で、家族(配偶者および子)の在留資格は基本的に付与されません。
5年後には帰国することになりますが、介護福祉士の国家資格を取得すれば、在留資格「介護」に変更して永続的に働くことが可能です。



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ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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