介護人材の確保・サービスの質の向上に向けた「介護職員の処遇改善」について

深刻な人材不足が続く介護の現場。国は介護に携わる人材を確保し、質の高い介護サービスを安定的に提供するために総合的な対策に取り組んでいます。今回はその中のひとつ「介護職員の処遇改善」について解説します。

介護職員処遇改善の目的

介護職員処遇改善の目的

介護職員処遇改善の大きな目的のひとつは、深刻な人材不足の解消です。
第8期介護保険事業計画(市町村が策定する介護保険制度運営の基本となる計画のこと)に基づく介護職員の必要数によると、2025年度には約243万人、2040年度には約280万人の介護職員が必要となると見込まれています。

介護人材の処遇改善について

出典:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」


増大・多様化する介護ニーズに対応できる人材を確保するために、国は「介護職員の処遇改善」のほかにも「多様な人材の確保・育成」「離職防止・定着促進・生産性向上」「介護職の魅力向上」「外国人材の受入環境整備」などに取り組んでいます。
しかし、介護の現場で人手不足に悩む職員の方は依然として少なくないようです。
2021(令和3)年度「介護労働実態調査(公益財団法人 介護労働安定センター)」の結果をみても、労働条件・仕事の負担に関する悩み等において「人手が足りない」が 52.3%と最も高くなっています。

しかし、介護の現場で人手不足に悩む職員の方は依然として少なくないようです。 2021(令和3)年度「介護労働実態調査(公益財団法人 介護労働安定センター)」の結果をみても、労働条件・仕事の負担に関する悩み等において「人手が足りない」が 52.3%と最も高くなっています。


介護職員の処遇改善について

これまでの処遇改善の取り組み

2009年
(平成21年)
補正予算において「介護職員処遇改善交付金」を創設
介護職員の処遇改善に取り組む介護サービス事業者に対し、介護職員(常勤換算)1人当たり月額平均1.5万円を交付【2011年度(平成23年度)末まで】
2012年
(平成24年)
介護報酬改定において「介護職員処遇改善加算」を創設
「介護職員処遇改善交付金」による改善効果を継続する観点から、交付金と同じ仕組みでスタート
2015年
(平成27年)
介護報酬改定において「上乗せ評価を行う区分」を創設
さらなる介護職員の資質向上、雇用管理の改善、労働環境の改善に取り組む介護サービス事業者に対し、月額1.2万円相当の加算の拡充
2017年
(平成29年)
介護報酬改定において「さらなる上乗せ評価を行う区分」を創設
介護職員の技能・経験等に応じた昇給の仕組みを構築した事業者に対し、月額平均1万円相当の加算の拡充
2019年
(令和元年)
「介護職員処遇改善加算」に加えて「介護職員等特定処遇改善加算」を創設
2022年
(令和4年)
「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」の交付

介護職員の処遇改善に関する加算

介護職員処遇改善加算

出典:厚生労働省「処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)」


「介護職員処遇改善加算」とは

介護職員の安定的確保や資質向上の観点から、介護現場で働く介護職員の賃金改善を行うために創設された加算です。介護職員のみが対象となります。


加算(Ⅰ) 加算(Ⅱ) 加算(Ⅲ)
キャリアパス要件のうち、
①+②+③を満たす
かつ
職場環境等要件を満たす
キャリアパス要件のうち、
①+②を満たす
かつ
職場環境等要件を満たす
キャリアパス要件のうち、
①or②を満たす
かつ
職場環境等要件を満たす

【算定要件】

以下の【キャリアパス要件】および【職場環境等要件】を満たすこと

  • 【キャリアパス要件】
  • ①職位・職責・職務内容等に応じた任⽤要件と賃⾦体系を整備すること
  • ②資質向上のための計画を策定して研修の実施⼜は研修の機会を確保すること
  • ③経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること

  • 【職場環境等要件】
  • 賃金改善を除く、職場環境等の改善


キャリアパス要件①②③および職場環境等要件をすべて満たして「加算Ⅰ」を取得した事業所は、介護職員1人当たり月額3万7千円相当の加算を受け取ることができます。事業所は、介護職員の研修機会の確保や雇用管理の改善などとともに、加算相当額の賃金改善を行うことが必要です。



「介護職員等特定処遇改善加算」とは

「介護職員処遇改善加算」に加えて、経験・技能のある介護職員の更なる処遇改善を図るために創設された加算です。対象となる「①経験・技能のある介護職員」「②その他の介護職員」「③その他の職種」に配分されます。


【算定要件】

以下の要件をすべて満たすこと

  • ① 処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを取得していること
  • ② 処遇改善加算の職場環境等要件に関し、複数の取り組みを行っていること
  • ③ 処遇改善加算に基づく取り組みについて、ホームページ掲載等を通じた見える化を行っていること

関連記事:
2019年新たに創設された「介護職員等特定処遇改善加算」とは



「介護職員等ベースアップ等支援加算」とは

福祉・介護職員の処遇改善を目的として、収入を3 %程度(月額9,000円相当)引き上げるために創設された加算です。対象となるのは介護職員ですが、事業所の判断で他の職員の処遇改善に補助金を充てることもできます。


【算定要件】

以下の要件をすべて満たすこと

  • ① 処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを取得していること
  • ② 加算額の2/3は介護職員等のベースアップ等(「基本給」または「決まって毎月支払われる手当」の引上げ)に使用すること

関連記事:
2022年2月からスタートした「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」とは

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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