
近年、緊急性が低い症状で救急車を呼ぶ人の増加が問題になっていますが、緊急性が高い場合は迷わず救急車を呼ぶ必要があります。特に高齢の方は自覚症状が出にくいことが多く、重大な病気が隠れている可能性があるため注意しなければいけません。
また、救急疾患によって持病が悪化したり、合併症を起こしたりすることがあるのも特徴です。今回は、ためらわずに救急車を呼んでほしいご高齢者の症状や、救急車の呼び方についてお伝えします。
ためらわずに救急車を呼んでほしいご高齢者の症状

高齢の方に多い救急疾患は、脳血管障害・心疾患・呼吸器疾患・消化器疾患などです。また、転倒・転落等の事故によるケガで救急搬送される方も増えています。
高齢の方に下記のような症状がみられたら、ためらわずに救急(119番)通報してください。
頭
・突然の激しい頭痛
・突然の高熱
・急にふらつき、立っていられない
顔(目や口元)
・顔半分が動きにくい、しびれる
・笑うと口や顔の片方がゆがむ
・「ろれつ」がまわりにくい
・見える範囲が狭くなる
・周りが二重に見える
胸・背中
・突然の激痛胸痛・背部痛
・急な息切れ、呼吸困難
・旅行などの後に痛み出した
・痛む場所が移動する
手・足
・突然のしびれ
・突然、片方の腕や足に力が入らなくなる
お腹
・突然の激しい腹痛
・血を吐く
その他
・意識がない(返事がない)またはおかしい(もうろうとしている)
・けいれんが止まらない
・冷や汗を伴うような強い吐き気
・物をのどにつまらせた
・大量の出血を伴うけが
・広範囲のやけど
・交通事故や転落、転倒で強い衝撃を受けた
◎ 救急車の利用について詳しくは総務省消防庁のホームページを参考にしてください。
「救急車利用リーフレット(高齢者版)」「救急車を上手に使いましょう」
救急車を呼ぶべきか迷ったときは
その他の症状で、救急車を呼ぶべきか迷ったときは、お近くの救急相談窓口(#7119など)やかかりつけ医に相談してみましょう。
「♯7119」に電話する
救急安心センター事業「#7119」(自治体によって名称が異なります)は、急な病気やケガで困ったときに用いる電話相談窓口です。
「救急車を呼んだ方がよいか」「すぐ病院に行った方がよいか」「どこの病院に行ったらいいか」など、判断に迷ったときに、「♯7119(または地域ごとに定められた電話番号)」に電話すると、救急電話相談を受けることができます。
相談料は無料(通話料は利用者負担)です。
救急電話相談には、医師や看護師、トレーニングを受けた相談員などが対応します。
緊急性が高い場合は迅速な救急出動につなぎ、緊急性が高くない場合は受診可能な医療機関を案内してくれます。
※「#7119」を設置していない地域では、かかりつけの病院や最寄りの病院、「♯7119」以外の番号で救急電話相談等を行っている場合があります。
受診できる医療機関は、お住まいの都道府県の「医療情報ネット(ナビイ)」で検索することができます。
関連リンク
消防庁「救急安心センター事業(#7119)関連情報」全国版救急受診アプリ「Q助(きゅーすけ)」
「Q助(きゅーすけ)」は、病気やケガをしたときに、症状の緊急度を素早く判断するためのアプリです。
消防庁が「スマホ版」と「ウェブ版」を無料で提供しています。
当てはまる症状を画面上で選択していくと、緊急度に応じた必要な対応が表示されます。
緊急度が高い場合は、アプリから119番に電話できます。受診できる医療機関の検索、受診手段の検索(タクシーなど)も可能です。
救急車(119番)の呼び方

救急車を呼ぶときの電話番号は「119番」です。携帯電話やスマートフォンからかける場合も同じく「119番」へ通報します。
一般的な救急通報の流れ
①「119番」にダイヤルします。
②「火事ですか?救急ですか?」と尋ねられたら「救急です」と告げます。
③来てほしい「住所」を市町村名から伝えます。
④ご高齢者の「症状」「年齢」「性別」などを伝えます。
⑤あなた(通報者)の「名前」と連絡可能な「電話番号」を伝えます。
※ 上記のほかにも詳しい状況を聞かれることがあります。分かる範囲で答えましょう。
また、電話で消防本部から応急手当を指示される場合もあります。いざというときに慌てないために、お近くの消防本部・消防署で行われている応急手当の講習会に参加して技術を身につけておくとよいでしょう。
消防庁は、e-ラーニングで応急手当の基本知識が学べる「応急手当WEB講習」も用意しています。
AEDの設置場所は、全国AEDマップ(一般財団法人日本救急医療財団)で確認できます。
救急車を待つ間に用意するもの
・マイナンバーカード
・保険証や診察券
・お金
・(ご高齢者の)靴
・飲んでいる薬(おくすり手帳)
・携帯電話など
救急車が来たら救急隊員に伝えること
・事故や体調が悪くなった状況
・救急隊が到着するまでの様子やその変化
・行った応急手当の内容
・ご高齢者の情報(持病・飲んでいる薬・かかりつけの医療機関・かかりつけ医の指示など)
※ 救急車に同乗して留守にする場合は、火の元の確認と戸締りも忘れないようにしましょう。
救急通報時に気をつけたいこと
通報中に「いいから早く来て!」とパニックになってしまう方が多いそうです。緊急性が高い場合は、会話中でも場所等が分かった時点で救急車は出動します。緊急時は誰でも慌ててしまうものですが、そんなときこそ落ち着いて指令員の質問にゆっくり答えましょう。焦って一方的に話すと正確に伝わらず、かえって時間がかかってしまいます。
必要事項(住所・電話番号など)を書いたものを電話の近くに置いておくとスムーズです。ご高齢者の情報(持病など)は、あらかじめメモにまとめておくとよいでしょう。人手がある場合は、外へ出て救急車を誘導すると到着が早くなります。
また、「近所迷惑になるから」などの理由で「サイレンを鳴らさずに来て」という通報も多いそうです。しかし、救急車等の緊急自動車は道路交通法でサイレンと赤色灯が義務付けられています。
携帯電話・スマートフォンから119番通報し、管轄外の消防本部につながった場合は、管轄の消防本部に転送されることがあります。通報が転送されるときは、電話を切らずに待ちましょう。
また、消防本部から携帯電話等に確認の連絡が入ることがあります。通報後も電源を切らず、すぐに出られるようにしておくことが重要です。
なお、GPS機能がついている携帯電話・スマートフォンの場合は、通報前にGPS機能を有効にする必要があります。ただし電波の受信状態などにより位置情報を確認できないこともあるため、住所や目印となる目標物(大きな建物・交差点など)を口頭でも伝えるようにしましょう。
最近は、地域や民間でご高齢者を見守るサービスが増えてきています。また、一人暮らしやご高齢者のみの世帯、日中一人になるご高齢者などのために「緊急通報システム」等を導入している自治体もあります。自治体のサービスについては、市区町村の窓口や地域包括支援センター、ケアマネジャーなどに問い合わせてみましょう。
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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