「トイレが近い」「トイレに間に合わない」などの排尿トラブルを抱える方は、年齢が高くなるにつれて増えています。トイレの悩みは、日常生活に大きな影響を与えることも少なくありません。
今回は、ご高齢者に多い排尿トラブルと予防対策についてお伝えします。
ご高齢者に多い排尿トラブル
尿がもれる(尿失禁)
尿をしようとしていないときに、尿がもれてしまうことを「尿失禁」といいます。
ご高齢者にみられる「尿失禁」は、以下の4つのタイプに分けられます。
腹圧性尿失禁 | 急にお腹に圧力がかかったときに、尿意とは関係なく尿がもれてしまうことです。 女性に多く、「咳やくしゃみ、大笑いをしたとき」「立ち上がったとき」「重い物を持ち上げたとき」などに尿もれが起こります。 |
切迫性尿失禁 | 膀胱(ぼうこう)が勝手に収縮し、強い尿意が急に起こり、トイレに間に合わずに尿がもれてしまうことです。 |
機能性尿失禁 | 膀胱の機能とは関係なく、「トイレの場所がわからない」「トイレへの移動に時間がかかる」などの理由でもれてしまうことです。 認知症やADL(日常生活動作)の低下などによって起こりやすくなります。 |
いつ流性尿失禁 | 尿が出にくく、膀胱内にたまった尿が尿道からあふれて、常に少しずつもれてしまうことです。 |
尿の出る回数が多い(頻尿)
排尿回数は人によってさまざまですが、一日(朝起きてから夜寝るまで)の排尿回数が8回以上の場合を、一般的に「頻尿(ひんにょう)」といいます。
夜寝ているときに何度もトイレに起きなければならない「夜間頻尿」は、慢性的な睡眠不足や転倒などの事故を引き起こすこともあります。
尿が出にくい(排尿困難)
尿意を感じてトイレに行くものの、尿が出にくく、尿の勢いが弱くて時間がかかったり、お腹に力をいれる必要があったりします。また、排尿した後も膀胱に尿が残っているような「残尿感」を感じることもあります。
排尿トラブルの原因
尿失禁
骨盤底筋のゆるみ
骨盤底筋(こつばんていきん)は、骨盤内にある膀胱や尿道などを下から支える筋肉で、排尿をコントロールする役割も果たしています。
40歳以上の女性の多くが悩む「腹圧性尿失禁」の原因のひとつが、この骨盤底筋のゆるみです。骨盤底筋が、妊娠・出産、肥満、便秘などによってゆるんでしまうと、お腹に圧力がかかったときに尿がもれやすくなります。
下半身の冷え
薄着や冷たい飲み物のとりすぎなどで下半身を冷やすと、急に尿意をもよおし、トイレに間に合わず尿がもれてしまうことがあります。
加齢や病気
加齢による泌尿器の機能低下や病気(過活動膀胱・膀胱炎・前立腺肥大症など)によって尿もれが起こることがあります。
尿もれを心配して水分を控えたり、排尿を長時間我慢したりすることは、尿路感染症などにつながることがあります。
頻尿
利尿作用のある飲み物
カフェインを含むコーヒーや緑茶などには利尿作用があるため、とりすぎるとトイレが近くなります。
精神的ストレス
緊張やストレスなどが引き金となり、トイレの回数が増えることもあります。また、トイレの失敗体験があると、強い不安を感じて頻尿になってしまうことがあります。
加齢や病気
加齢によって膀胱の弾力性が低下したり、夜間の尿量を減らす「抗利尿ホルモン」の分泌量が減ったりすることで、夜中にトイレに起きる回数が増えます。
膀胱炎や過活動膀胱、前立腺肥大症、子宮筋腫、子宮脱、糖尿病などの病気が頻尿を引き起こすこともあります。
排尿困難
病気・薬の影響
ご高齢の方は服用しているお薬の副作用によって、排尿困難が起こる場合があります。
加齢や病気(尿道狭窄症や尿路結石、子宮筋腫、前立腺肥大症など)が原因になることもあります。
骨盤底筋のゆるみ
骨盤底筋がゆるむことで、尿の勢いが弱くなったり、残尿感を感じたりすることがあります。
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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