少子高齢化が進行する中、ご高齢者の自立支援や介護者の負担軽減に役立つ介護ロボットへの期待はますます高まっています。今回は、介護の現場で活躍する介護ロボットの種類や、国が推進する介護ロボット関連の施策などについてお伝えします。
介護ロボットとは

ロボットの定義は、以下の3つの要素技術(センサー、知能・制御系、駆動系)を有する、知能化した機械システムとされています。
○情報を感知する(センサー系)
○判断する(知能・制御系)
○動作する(駆動系)
このうち、ロボット技術が応用され、利用者の自立支援や介護者の負担軽減に役立つ介護機器を総称して「介護ロボット」といいます。
介護ロボットの種類

移乗・移動支援 |
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装着型パワーアシスト・非装着型の移乗アシスト介護ロボット・離床アシストロボット・歩行アシストカートなど |
排泄支援 |
排泄予測デバイス・排便姿勢保持機器・自動排せつ処理装置など |
認知症の方の見守り |
見守りセンサー・非接触型徘徊見守りシステム・離床センサー・体動検知マットセンサーなど |
コミュニケーション支援・認知症セラピー支援 |
コミュニケーションロボット(赤ちゃん型・人型など)・メンタルコミットロボットなど |
機能訓練支援 |
歩行訓練支援機器・リハビリテーショントレーニングツールなど |
その他 |
ネットワーク型お薬カレンダー(服薬支援)・体位変換支援ベッド(寝返り支援)など |
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介護ロボットに関する主な施策

「ロボット技術の介護利用における重点分野」の策定・改訂
厚生労働省と経済産業省は、2012年(平成24年)に「ロボット技術の介護利用における重点分野」を策定し、その開発や導入などを支援しています。
「ロボット技術の介護利用における重点分野」は、2014年(平成26年)に改訂され、さらに2017年(平成29年)10月には1分野5項目(下表の太字項目)が追加されました。
ロボット技術の介護利用における重点分野(6分野13項目)
①移乗介助 |
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○ロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行う装着型の機器 ○ロボット技術を用いて介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器 |
②移動支援 |
○高齢者等の外出をサポートし、荷物等を安全に運搬できるロボット技術を用いた歩行支援機器 ○高齢者等の屋内移動や立ち座りをサポートし、特にトイレへの往復やトイレ内での姿勢保持を支援するロボット技術を用いた歩行支援機器 ●高齢者等の外出等をサポートし、転倒予防や歩行等を補助するロボット技術を用いた装着型の移動支援機器 |
③排泄支援 |
○排泄物の処理にロボット技術を用いた設置位置の調整可能なトイレ ●ロボット技術を用いて排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器 ●ロボット技術を用いてトイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作を支援する機器 |
④見守り・コミュニケーション |
○介護施設において使用する、センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム ○在宅介護において使用する、転倒検知センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム ●高齢者等とのコミュニケーションにロボット技術を用いた生活支援機器 |
⑤入浴支援 |
○ロボット技術を用いて浴槽に出入りする際の一連の動作を支援する機器 |
⑥介護業務支援 |
●ロボット技術を用いて、見守り、移動支援、排泄支援をはじめとする介護業務に伴う情報を収集・蓄積し、それを基に、高齢者等の必要な支援に活用することを可能とする機器 |
介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォーム事業
地域における開発から活用までの相談窓口(全国 14 か所)や、介護ロボット製品化にあたっての評価・効果検証を実施するリビングラボが設置されています。
介護報酬での評価
2021年度の介護報酬改定では、テクノロジーの活用により介護サービスの質の向上および業務効率化を推進していく観点から、見守り機器を導入した特別養護老人ホームなどの夜勤について人員配置基準の緩和等が行われました。
介護ロボット導入支援事業(地域医療介護総合確保基金)
介護ロボットを活用した介護事業所の生産性向上の取り組みを通じて、ケアの質の維持・向上や職員の負担軽減等を図るため、介護ロボットの導入費用の一部を助成しています。実施主体は都道府県です。
補助額(2022年度)
介護ロボット (1機器あたり) |
・移乗支援(装着型・非装着型) ・入浴支援 |
上限100万円 |
・上記以外 | 上限30万円 | |
見守りセンサーの導入に伴う通信環境整備(Wi-Fi、インカム等) (1事業所あたり) |
上限750万円 |
▼関連リンク:
厚生労働省「介護ロボットの開発・普及の促進」
幅広い分野で活用されているロボット技術。介護分野では「介護は人の手により提供される」という基本概念を維持しつつ、ロボット介護機器の活用により、業務の効率化や省人力化、介護者の負担軽減などを目指す取り組みが進められています。
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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