人生の後半をより充実させるための活動「終活(しゅうかつ)」とは

平均寿命が男女ともに80歳を超え、「人生100年時代」という言葉が聞かれるようになった今、老後の過ごし方への関心が更に高まっています。「終活」という言葉も定着しつつありますが、実際に取り組んでいる方はまだまだ少ないようです。
今回は、人生の後半をより楽しく豊かなものにするための「終活」やエンディングノートの活用法、サポート体制などについて解説します。

終活(しゅうかつ)とは

終活(しゅうかつ)とは

「終活」とは、「人生のエンディングについて考えて準備を整えること」といわれています。
かつて日本では、死について考えることが「縁起が悪い」とタブー視される傾向にありました。しかし最近は、「これまでの人生を見つめ直し、これからの人生をより充実したものにするための活動」として前向きにとらえる方が増えてきています。その背景には、少子高齢化のほかにも、核家族化や価値観の多様化、医療技術の進歩などがあるでしょう。

近年、オリジナルのエンディングノート(終活ノート)を作成するなどして「終活」 を支援する自治体も多くなっています。

エンディングノートとは

エンディングノートは、もしものときに備えて、自分の情報や意思などをまとめておくノートです。
遺言書とは異なり法的な効力はありませんが、ご自身の情報を整理したり、ご家族に大切なことを伝えたりするのに役立ちます。

エンディングノートには「不安が安心に変わる」「自分と向き合うことで本当に必要なものが明確になる」「人生の後半を楽しめるようになる」などのメリットがあります。
また、エンディングノートは「ご家族の負担をできるだけ軽くする」という思いやりのかたちでもあります。ご自身が望む医療・介護、告知や延命処置、最期の迎え方などを書いておくことで、ご家族が判断に迷ったときの助けになるでしょう。
万が一のときだけでなく、緊急な治療や入院が必要になったとき、お財布を落としてしまったとき、認知症等で判断能力が不十分になったときなどに役立てることもできます。

現在は、さまざまなタイプのエンディングノートが書店や文具店に並ぶようになりました。また、自治体のホームページ等でダウンロードできるものもあります。
エンディングノートに記入する内容や使い方はもちろん千差万別です。「何を書けばいいかわからない」という方は、一般的な項目(医療・介護・葬儀・お墓・相続・連絡先など)があらかじめ設けられているものを手にとってみるとよいかもしれません。
エンディングノートは一度書いたら終わりではなく、考えが変わったら何度でも修正できます。ご家族やまわりの方と話しながら、少しずつ考えていくとよいでしょう。

人生のエンディングに備えて

人生のエンディングに備えて

医療

2015年(平成27年)に、厚生労働省は「終末期医療」という表記を「人生の最終段階における医療・ケア」に変更しました。これは、「最期まで尊厳を尊重した人間の生き方に着目した医療を目指すことが重要」との考え方によるものです。

もしものときに、自分の思いや希望を医療や介護のあり方に反映するためには、事前の備えが大切だといわれています。「もしも」に備え、医療やケアについて自ら考えたり、信頼する人たちと話し合ったりすることをACP(アドバンス・ケア・プランニング)と呼びます。

  • ACP(アドバンス・ケア・プランニング)とは
  • 自らが望む人生の最終段階における医療・ケアについて、前もって考え、医療・ケアチーム等と繰り返し話し合い、共有する取り組みのことです。2018年11月30日には、ACPの愛称が「人生会議」に決まりました。

介護

介護が必要になったときに備えて、どのような制度や介護サービスがあるのか知っておくことが重要です。
もし住み慣れたご自宅での介護を希望する場合は、訪問介護や通所介護などの在宅サービスを上手に利用することで、ご家族の心身の負担を軽くすることができます。

また、居住型の介護施設でも、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)と同じように、QOD(クオリティ・オブ・デス)の向上が重要視されるようになってきました。「死」をタブー視するのではなく、ご本人やご家族とのコミュニケーションを密にして共に考えながら、悔いのない最期を迎えられるよう支援するというものです。
介護報酬では、看取り介護加算(介護老人保健施設はターミナルケア加算)が設けられており、看取りケアに取り組む施設も増えてきています。

身の回りの整理

元気なうちに身の回りの品を整理しておくことも、ご家族の負担軽減につながるでしょう。
大切なもの・必要なもの・譲りたいものを残し、不要なものを減らしていくと、部屋も気持ちもすっきりしてご自身が暮らしやすくなることがあります。ただし、後で「捨てなければよかった」と後悔しないために、ゆっくりと時間をかけて丁寧に進めていきましょう。また、人に任せずご自身の手で処分することもポイントです。

財産・相続

財産・相続

財産に関すること(預貯金・不動産・年金・保険・ローン・クレジットカードなどの情報)もエンディングノートに書くことができます。
ただし、暗証番号等はご家族に口頭で伝えておき、ノートにはヒントだけを書くなどしたほうが防犯面で安全です。また、お金に関することを書いたノートは、鍵のかかる場所での保管が望ましいでしょう。

なお、遺産相続などの重要な内容について書く場合は、エンディングノートとは別に遺言書も作成する必要があります。遺言書はエンディングノートとは異なり、法的効力があるためです。

葬儀・お墓

葬儀・お墓

一般的なエンディングノートには、葬儀やお墓について書く欄も設けられています。
希望する葬儀のかたち(宗教・花・写真など)や、知らせてほしい人の連絡先などがある場合は、まとめて記入しておくとよいでしょう。もし生前に契約をする場合は、エンディングノートに生前予約の有無や連絡先なども書いておきましょう。

メッセージ

大切な人へのメッセージや思い出、気がかりなことなどを自由に書けることもエンディングノートのメリットです。
仕事のこと、ペットのお世話、写真や日記、プライベートなもの、パソコン・携帯電話・SNSのアカウントなどについても書いておくとよいでしょう。



終活をはじめる時期は決まっておらず、何歳からはじめても早すぎるということはありません。終活には、今までの歩みをじっくり振り返ったり、これからどう生きたいかを考えたりする時間が必要です。また、気力や体力、判断力などを要するため、元気なうちから取り組み、ご家族とも話し合っておくほうがよいでしょう。

「ミライ資産Leo-PRESS(レオプレス)」の関連記事もご覧ください。

生前整理をやるべき意味と理由!最初に始めるべきこととは

<参考・引用>
厚生労働省
自らが望む人生の最終段階における医療・ケア

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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