人口減少と高齢化が進行する日本では、生産年齢(15歳~64歳)の介護人材不足が課題となっています。また、今後ますます多様化する介護ニーズにも対応していかなければなりません。今回は、介護の質の維持・向上、介護現場の負担軽減などが期待できる介護テクノロジー(介護ロボットやICT等のテクノロジー)や導入支援事業、活用事例について解説します。
介護テクノロジーとは
「介護テクノロジー」とは、介護サービスの質の向上、職員の負担軽減、高齢者の自立支援を推進するための介護ロボットやICT等のテクノロジーです。
厚生労働省と経済産業省は「ロボット技術の介護利用における重点分野」を定め、介護テクノロジーの活用で介護現場の課題を解決するために、介護ロボット等の開発や導入を支援してきました。
2024(令和6)年6月には「ロボット技術の介護利用における重点分野」の改訂が行われ、名称も「介護テクノロジー利用の重点分野」に変更されました。
介護テクノロジー利用の重点分野
出典: 厚生労働省「介護テクノロジー利用の重点分野の全体図と普及率」
介護テクノロジー利用の重点分野として、新たに3分野(緑枠線)が追加され、合計9分野16項目となりました。
また、既存の分野・項目の定義文についても必要な見直しが行われています。
追加された3分野
| 機能訓練支援 | 介護職等が行う身体機能や生活機能の訓練における各業務(アセスメント・計画作成・訓練実施)を支援する機器・システム |
|---|---|
| 食事・栄養管理支援 | 高齢者等の食事・栄養管理に関する周辺業務を支援する機器・システム |
| 認知症生活支援・認知症ケア支援 | 認知機能が低下した高齢者等の自立した日常生活または個別ケアを支援する機器・システム |
定義文の見直しが行われた分野・項目
| 移乗支援(装着) | 介助者のパワーアシストを行う装着型の機器 |
|---|---|
| 移乗支援(非装着) | 介助者による移乗動作のアシストを行う非装着型の機器 |
| 排泄支援(排泄予測・検知) | 排泄を予測又は検知し、排泄タイミングの把握やトイレへの誘導を支援する機器 |
| 見守り・コミュニケーション(施設) | 介護施設において使用する、各種センサー等や外部通信機能を備えた機器システム、プラットフォーム |
| 見守り・コミュニケーション(在宅) | 在宅において使用する、各種センサー等や外部通信機能を備えた機器システム、プラットフォーム |
| 見守り・コミュニケーション(コミュニケーション) | 高齢者等のコミュニケーションを支援する機器 |
| 入浴支援 | 入浴におけるケアや動作を支援する機器 |
| 介護業務支援 | 介護業務に伴う情報を収集・蓄積し、それを基に、高齢者等への介護サービス提供に関わる業務に活用することを可能とする機器・システム |
介護テクノロジー導入支援事業
「介護テクノロジー導入支援事業」は、職場環境の改善などに取り組む介護事業者が「介護テクノロジー」を導入する際の経費を補助する事業です。2025(令和7)年度からは養護老人ホーム等も対象に追加されました。この事業の実施主体は都道府県です。
補助対象
| 介護ロボット | 「介護テクノロジー利用における重点分野」(令和7年度改定)に該当する介護ロボット (カタログ方式を導入) |
|---|---|
| ICT | 介護ソフト、タブレット端末、インカム、クラウドサービス 業務効率化に資するバックオフィスソフト(転記等の業務が発生しない環境が実現できている場合に限る)など |
| パッケージ型導入 | 見守り機器など、複数のテクノロジーを連動することで導入する場合に必要な経費 |
| その他 | 第三者による業務改善支援等にかかる経費 |
補助要件
介護現場での活用事例
| 主な効果 | 介護テクノロジー |
|---|---|
| 【導入目的】職員の排泄支援の効率化/ご利用者様の自立排泄 | |
| ご利用者様の排泄タイミングの把握 ・排泄タイミング(膀胱の蓄尿量の見える化)を職員が把握することで、適切な声かけができる ・不要な排泄支援、失禁などがなくなる トイレでの排泄回数の増加 ご利用者様のトイレでの自立排泄の回数が増える |
・DFree ・Helppad ・トイレDIARY |
| 【導入目的】アセスメント支援/ご利用者様の状況の可視化 | |
| アセスメントの質の向上 ・AIによる身体機能分析で、個別機能訓練計画などの目標設定を支援する ・動画や音声でご利用者様の身体状況が可視化されることにより、ご本人の機能訓練・リハビリテーションへの意欲や満足度が向上する |
・トルト |
| 【導入目的】夜間の見守り業務の効率化 | |
| 定時巡回の削減・負担軽減 ・夜勤職員の定時巡回を減らし、休憩時間などを確保できる ・必要な方への対応を行うことで負担軽減できる 利用者を待たせることなくケアができる インカムと組み合わせることで、同時発報時などに他の職員とスムーズな連携ができる |
・安診ネット ・眠りSCAN ・Neos+Care |
| 【導入目的】職員の記録業務の効率化 | |
| 記録内容の標準化 スマートフォン・タブレットを持ち歩くことで随時記録できる ご利用者様への直接ケア時間の増加 音声入力を活用することで、ケアを中断せず記録業務を行える |
・ハナスト ・CareMaker ・楽くすり ・ファーストケア |
| 【導入目的】スケジュール作成の効率化 | |
| 職員の負担軽減 スケジュール作成の時間を軽減し、職員の間接業務時間を減らせる 直接介護や職員指導などの時間増加 AIを用いて、条件やキャンセル等に合わせたスケジュール作成ができる |
・ZEST SCHEDULE ・DRIVEBOSS |
国は現在、「介護テクノロジー導入支援事業」のほか、ICT化の進歩や「LIFE」を活用した科学的介護の推進に向けた取り組みを進めています。介護テクノロジーやICTを活用することで、人材確保が難しい介護現場の負担軽減や生産性の向上、ご利用者様の自立支援によるQOL(生活の質)の維持・向上などが期待できます。
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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